こども・子育て支援加速化プランを公表
政府は3月31日、「次元の異なる少子化対策」の実現を目指す「こども・子育て政策の強化について(試案)」を公表した。試案では、今後3年間を集中期間とする「こども・子育て支援加速化プラン」に取り組む方針を示した。今後、試案をベースに国民的に議論を進め、「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針2023」(骨太の方針2023)の6月の閣議決定までに、将来的なこども関係予算の倍増に向けた大枠を提示する予定だ。
試案について議論する場として、こども未来戦略会議が設置され、4月7日に初会合を開催した。
こども家庭庁ホームページ▶こども・子育て政策の強化について(試案)
内閣官房ホームページ▶こども未来戦略会議(第1回)
8年前倒しで出生数が80万人割れの見込み
2019年の年金制度の財政検証における人口の前提として活用された、2017年の「日本の将来推計人口」の中位推計では、出生数が80万人を割り込むのは2030年と予測していた。しかし2022年の出生数(速報値)は79万9,728人と、80万人割れが8年前倒しになる見込みが示された。さらに2030年代に入ると、若年人口は急減する見通しだ。
こうした状況を踏まえ試案では、「2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向に反転できるかどうかのラストチャンスであり、少子化対策は待ったなし」と強調。「こども・子育て加速化プラン」を打ち出した。
男性の育休取得率の目標を引上げ
こども・子育て加速化プランでは、基本的な考え方として、①現金給付政策の強化②子育て支援の量的拡大から質の向上への移行③全年齢層への切れ目のない支援の実現④社会的擁護や障害児支援など多様な支援ニーズへの支援基盤の拡充⑤男性の育休取得の推進⑥社会全体でこども・子育てを応援するための意識改革の推進──の6つを提示した。①現金給付政策の強化は、日本の家族関係社会支出で現金給付が、OECD平均の半分程度であることが背景にある。
その上で、具体的な取組について、大きく⑴共働き・共育ての推進、⑵経済的支援の強化、⑶全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充──の3点に分けて示した。
まず、⑴共働き・共育ての推進では、男性の育休取得率について、現行の目標(2025年までに30%)を引き上げ、2025年には公務員で85%(1週間以上の取得率)、民間で50%とすることなどを掲げた。給付面の対応として、産後8週間以内に4週間(28日)を限度に2回に分けて取得できる休業である「産後パパ育休」の間における出生時育児休業給付金の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から8割程度(同10割相当)まで引き上げる。さらに男性の育休取得の増加に対応できるよう育児休業給付を支える財政基盤を強化する。
多様な働き方と子育ての両立支援の一環として、現在、雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者も失業手当や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向けた検討も進める。また自営業・フリーランス等の国民年金第1号被保険者について、育児期間に係る保険料免除措置の創設に向けた検討を進める。
児童手当の拡充や出産費用の保険適用を検討
⑵経済的支援の強化では、▶児童手当の拡充▶出産費用の保険適用▶「授業料後払い制度」の創設──などを示した。このうち「児童手当の拡充」について、対象や見直しの具体的な内容は今後、財源の議論と併せて検討し、骨太の方針2023までに結論を得る。「出産費用の保険適用」は、これまでの出産育児一時金の引上げの効果や出産費用の状況の把握などを踏まえ、令和8年度の診療報酬改定に向けて検討を進める予定だ。「授業料後払い制度」は、令和6年度から大学院修士の学生を対象に導入した上で、更なる拡充について検討する。
⑶サービスの拡充では、既存の取組みの拡充に加えて、保育所等の職員配置基準の改善や「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設などを示した。職員配置基準については、具体的に1歳児および4・5歳時の配置基準を改善する。1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は30対1から25対1に手厚くする。職員を加配した場合に加算する方向だ。さらに、民間給与の動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する。
「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設とは、全ての子育て家庭への支援を強化するため、現行の幼児教育・保育給付に加え、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付を導入するもの。
こうした個別の施策の具体的な内容は、それぞれの施策を受け持つ、こども家庭庁をはじめ、厚労省、文科省などの審議会等で検討を深めていく。
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