令和6年度の年金額改定は新規裁定・既裁定者ともに+2.7%
厚生労働省は1月19日、令和6年度の年金額について、新規裁定者(昭和32年4月2日以後生まれ)・既裁定者(昭和32年4月1日以前生まれ)ともに、前年度から2.7%のプラス改定になると公表した。
改定率の算定にあたって指標とされる物価変動率は+3.2%、名目手取り賃金変動率は+3.1%、マクロ経済スライド調整率は▲0.4%となり、令和6年度は物価変動率が賃金変動率を上回るため、新規裁定・既裁定者ともに賃金変動率(3.1%)をもとに改定され、▲0.4%分を調整して+2.7%とされた。
+2.7%は平成4年度(+3.3%)に次ぐ32年ぶりの高い引き上げ幅。また、マクロ経済スライドは平成27年度、令和元年度、令和2年度、令和5年度に続く5回目の発動となった。令和6年4月分(6月支払い)の年金から改定する。
このほか、名目賃金の変動に応じて改定される在職老齢年金の支給停止調整額は、前年度の48万円から50万円に引き上がる。物価変動に応じて改定される老齢年金生活者支援給付金は、前年度の月額5,140円から5,310円となる。
令和5年度年金額改定の影響
令和5年度の年金額改定では、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回ったため、新規裁定者(昭和31年4月2日以後生まれ)は賃金変動率に基づき2.2%の引き上げ、既裁定者(昭和31年4月1日以前生まれ)は物価変動率に基づき1.9%の引き上げとなり、昭和31年4月1日生まれを境に年金額の改定率に差が生じた。
そのため、令和6年度の年金額についても、昭和31年4月1日以前生まれの者(令和6年度で69歳以上)の老齢基礎年金の満額(月額67,808円)は、昭和31年4月2日以後生まれの者の満額(68,000円)より低く推移している。
なお、厚生労働省によると、今後も新規裁定者と既裁定者で改定率が異なる場合、その境目の世代(新たに68歳に達する世代)から異なる年金額で推移していくことになるという。
令和6年度予算案は+2.9%と見込んでいた
他方、昨年12月末に閣議決定された令和6年度予算案では、改定率の指標となる物価変動率が令和5年11月末時点で+3.4%、名目手取り賃金変動率が+3.3%と推計されていたことから、令和6年度の年金額改定を+2.9%と見込み、年金スライド分として3,518億円を確保していた。
だが、物価が12月に下振れしたため、この日総務省から公表された令和5年平均の物価変動率は+3.2%となり、名目手取り賃金変動率(実質賃金変動率▲0.1%+物価変動率+3.2%+可処分所得割合変化率0.0%)も+3.3%から、+3.1%になった。