日医・松本会長が財務省の提案に反論(2024年11月20日)
日本医師会の松本吉郎会長は11月20日の会見で、11月13日に財政制度等審議会財政制度分科会で示した社会保障改革案について見解を示し、地域別単価の導入など財務省の医師偏在対策に反論した。
医療機関「見える化」は慎重運用を
財務省が提案した医療機関の経営情報の「見える化」に対して、松本会長は慎重な運営を求めた。現在、医療機関が特定されない形で「経営情報データベース」が導入されており、職員の職種別給与や人数の提出は任意となっている。このデータベースは令和8年5月までに研究者に提供される制度が施行される予定だが、松本会長は「個別の経営状況や給与が公開されたり漏洩したりすることがないよう、慎重に運営すべき」と述べた。
地域ごと診療報酬は問題が多い
診療所の偏在是正を目的とした地域別単価の導入については強い懸念を示した。松本会長は「国民皆保険制度の下、診療報酬は被保険者間の公平性を保つため、全国一律の公定価格として設定されている。地域ごとに診療報酬を調整する仕組みは、人口分布の偏りを医療側に責任転嫁するものであり、極めて問題が多い」と述べた。都市部の医療機関の単価を下げる提案は「典型的な机上の空論」と批判した。
特定の地域で医療サービスが過剰と判断された場合に「特定過剰サービス」として減算措置を導入する提案についても、「『特定過剰サービス』という発想自体が容認できない」と批判した。
過度なセルフメディケーション推進に反対
財務省がセルフメディケーション推進を提案し、市販薬(OTC)や医療用医薬品の自己負担のあり方を見直すべきと主張したことについても、「医療費適正化だけを目的としてセルフメディケーションを過度に進めることには断固反対する」との立場を示した。
OTC類似薬の保険給付の見直しについては、「国民皆保険制度の理念を形骸化させるもの。容認する余地はみじんもない」。
中間年改定で生じた薬価差は技術料に還元を
令和7年度の中間年薬価改定について、すべての医薬品を対象とするべきだとする財務省提案についても、松本会長は反論。「仮に中間改定を行うのであれば、対象品目をできる限り絞るべき。それによって生じた薬価差は技術料に還元するべきだという従来からの日医としての主張に変わりはない」と述べた。