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被用者保険の適用拡大で国保の加入者は110万人減(2024年12月12日)

社会保障審議会医療保険部会は12月12日、被用者保険の適用拡大について議論を行った。厚労省は「賃金要件の撤廃」「企業規模要件の撤廃」「非適用業種の解消」を実施した場合の医療保険財政への影響試算を公表した。試算によれば、協会けんぽ以外の保険者は収支がプラスとなる。

試算によると、適用拡大が与える財政影響は次の通り。

  • 協会けんぽ:▲510億円

  • 健保組合:+190億円

  • 共済組合:+280億円

  • 市町村国保:+170億円

適用拡大で国保の加入者は110万人減

加入者数の変動については、協会けんぽが+125万人と大幅に増加するのに対し、市町村国保は▲110万人と大幅に減少する見通し。

上記試算による市町村国保の財政収支+170億円の内訳は以下の通り。

  • 賃金要件の撤廃:+170億円

  • 企業規模要件の撤廃:+130億円

  • 非適用業種の解消:▲120億円

比較的所得の低い人々が市町村国保から被用者保険に移行することで、市町村国保の財政収支はプラスになるとされる。

これらに対し、国保中央会の原勝則委員は、「財政収支は改善されたものの、市町村国保が抱える構造的課題は解決していない」と指摘。「国民皆保険の堅持を念頭に、将来を見据えた国保の基盤強化を検討すべきだ」と求めた。

年収の壁対応へ保険料負担割合の変更を提案

同日の部会ではまた、いわゆる「年収の壁」に対応するため、就業調整に対応した保険料負担割合を任意で変更できる特例が厚労省から提案された。この特例は、健保組合のみに認められている保険料の労使折半原則を被保険者の利益になる形で変更できる措置を、協会けんぽにも時限的に導入する内容だ。

これに対して日本商工会議所の藤井隆太委員は、「中小企業の経営難に直結する問題だ」と反対の姿勢を示した。

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