高額療養費制度の見直しで方向性 自己負担限度額引き上げと所得区分の細分化(2024年11月21日)
厚労省は11月21日、社会保障審議会医療保険部会に高額療養費制度の見直し案を提示した。自己負担限度額の引き上げるとともに所得区分を細分化する。委員から特段の反対意見はなく、一定の方向性が示された。
厚労省は、高齢化の進展や医療の高度化によって、高額療養費が全医療費の6~7%を占めるまでに総額が増加していることを紹介。一方で、自己負担限度額は実質的に維持されてきたことから、医療保険制度の実効給付率が上昇している現状を説明した(下図)。
また、前回見直しを行った平成27年以降、世帯主収入や世帯収入が増加していること、特に現役世代を中心に保険料負担軽減を求める声が多いことも触れた。
これらを踏まえ、厚労省は以下の見直し案を提案した。
自己負担限度額の一定程度の引き上げ
所得区分の細分化
これにより、全世代の被保険者が負担能力に応じた負担を行える仕組みを構築し、保険料負担の軽減を目指す考えだ。施行時期については、国民への周知や保険者・自治体のシステム改修を考慮しつつ、可能な限り早期に実施する方針が示された。
委員「見直しやむを得ない」
健保連の佐野雅宏委員は、「全世代型社会保障の構築に向け、年齢ではなく負担能力に応じた負担が求められる。高額療養費制度の見直しは時期を得ている」とコメントした。
日本病院会の島弘志委員は「医療保険財政を圧迫する高額医薬品の増加に対応するため、見直しはやむを得ない」と述べた。
日本医師会の城守国斗委員は「高額療養費制度は医療のセーフティネットとしての重要な役割を果たしている。その意義を踏まえ、すべての人が必要な医療を受けられる仕組みを維持するため、十分な議論が必要」と強調した。
今回の制度見直しには政令改正が必要となる見通し。