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マイナ保険証利用実績が著しく低い医療機関には個別に事情確認等の働きかけを実施――カードリーダー増設支援等の補助金は11月まで再延長(2024年8月30日)

厚労省の社保審・医療保険部会は8月30日、マイナ保険証の利用促進策について議論した。今後、マイナ保険証の「利用実績が著しく低い医療機関・薬局」を対象に利用促進に関する支援を行い、地方厚生局が個別に事情を確認するなどの働きかけを実施することが報告された。対象となる医療機関・薬局にはメールなどで事前に周知される予定だ。また、令和6年10月から医療DX推進体制整備加算の最低利用率が適用されることを踏まえ、厚労省は窓口での声かけなど利用促進の取り組みを、改めて医療機関等に呼びかける。

8月30日の医療保険部会で厚労省が示した説明資料(下図)では、個別アプローチの実施に関して、マイナ保険証の利用実績が著しく低い医療機関・薬局の中には「患者がマイナ保険証を使う機会を奪っている」ものも考えられると指摘。その場合には「療養担当規則違反となるおそれがある」と説明した。

この説明について渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「利用実績が著しく低い施設」としてどのような施設が該当するか、具体的な基準があるかを尋ねた。
これに対して厚労省担当官は「療養担当規則違反となるおそれがあるのかどうか」や「患者がマイナ保険証を使おうとしたときに全く使えないといった状況になっていないかどうか」を確認する観点から、「実態としてマイナ保険証が使えない状態にある施設」や「マイナ保険証を使わせていない施設」に対し、そのような状態になっている事情を知る必要があるとした。また、「マイナ保険証の利用促進に当たり困っている場合」の実態を確認し、そうした施設の支援に生かすと説明した。ただし、呼びかけの対象となる施設の具体的な基準はまだ詰められていないとした。

城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、医療機関からみるとやや威圧的な書きぶり・表現にも見え、かえって反発を招くということも考えられると指摘した。地域的な背景等も勘案しながら、国として強制的な対応ではなく、さらに丁寧な支援・慎重な対応をお願いしたいと要望した。

大杉和司委員(日本歯科医師会常務理事)からも同様に、「療養担当規則違反となるおそれ」との表現は現場感覚としてやや威圧的であるとの意見を述べた。

マイナ保険証利用実績の伸び率上位は、能登半島地震の被害を受けた北陸3県など

また、8月30日の医療保険部会では、マイナ保険証の利用率が令和6年7月分で11.13%になったことが報告された。さらに、都道府県別のマイナ保険証利用実績の伸び率(令和6年4月~7月)および令和6年7月の都道府県別のマイナ保険証利用率も示された。それによると、第1位は富山県で、上位5県に石川県、福井県が入り、令和6年1月の能登半島地震での被災県が上位を占めた。

顔認証付きカードリーダー増設支援を令和6年11月まで再延長

顔認証付きカードリーダーの増設支援については、令和5年10月から令和6年7月までのいずれかの月のマイナ保険証の「月間利用件数総数500件以上」の施設に、カードリーダー1台の増設に要した費用の一部を補助することとされていた(病院は条件に応じ、最大3台までの費用の一部補助)。

8月9日の「医療機関・薬局向けマイナ保険証利用促進セミナー」では、上記の対象期間を1か月延長し、令和6年8月までとすると説明していた。今回、さらにその対象期間を再延長し、現行の保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証を原則とした受診体制に移行する12月の前月(令和6年11月)までとすることが報告された。

デジ庁のマイナ診察券に係る補助金要件も同様

8月9日の上記セミナーではデジタル庁からの補助金についても説明された。診察券とマイナンバーカードの一体化(マイナ診察券)の実施に当たって、レセコン・再来受付機の改修等が補助対象となる。補助金は、病院で再来受付機等の改修を含む場合は、補助要件の別により、「120万円を上限に1/2を補助(上限60.0万円)」または「120万円を上限に1/3を補助(上限40.0万円)」のどちらかとなる。

8月30日の医療保険部会では、上記の「120万円を上限に1/2を補助(上限60.0万円)」の要件として設けられた、マイナ保険証の月間利用件数総数500件以上の対象期間を再延長し、顔認証付きカードリーダーの増設支援と同様に、令和6年11月までとすることも報告された。

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