3文書6情報の提供を法律で規定 電子カルテ情報共有サービスの位置づけを医療保険部会が検討(2024年9月30日)
厚労省の社会保障審議会医療保険部会は9月30日、令和7年度中の本格運用を目指している電子カルテ情報共有サービスの法律上の位置づけについて議論した。地域医療支援病院・特定機能病院・二次救急病院においては、3文書・6情報の共有に関する体制整備を努力義務として規定するという提案が出された。今後さらに議論を進め、年内の意見とりまとめを目指す。
電子カルテ情報共有サービスについては、令和7年度中の本格運用を前に、令和7年1月以降、10地域でモデル事業が順次開始予定となっている。9月12日に開催された「健康・医療・介護情報利活用検討会」で示されていた9地域に、宮崎県での宮崎大学医学部附属病院を中心とした地域が追加された。
また、石川県では、加賀市医療センターと金沢大学附属病院を中心として、うわだな小児科医院、加賀たちばな元気クリニック、近隣医療機関が参画予定となっている。北海道では、函館医療センター、高橋病院を中心として森町国民健康保険病院、近隣医療機関が参画予定となっていることも新たに示された。
現在開発中の電子カルテ情報共有サービスには、❶診療情報提供書を電子で共有できる「診療情報提供書送付サービス」、❷各種の健診結果を医療保険者、全国の医療機関等および患者本人等が閲覧できる「健診結果報告書閲覧サービス」、❸患者の傷病名や薬剤アレルギー等の6情報を全国の医療機関等や患者本人等が閲覧できる「6情報閲覧サービス」、❹医師のアドバイス等を含む患者サマリーを患者本人等が閲覧できる「患者サマリー閲覧サービス」がある。それぞれの文書等は、標準規格であるFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)形式に変換され、6情報などは電子カルテ情報共有サービスを経由して、オンライン資格確認等システムに連携され、全国の医療機関等やマイナポータルを介して患者が閲覧可能となる仕組みだ。
電子カルテ情報共有サービスを導入することで、日常診療のみならず、救急時や災害時を含めて、全国の医療機関等で患者の医療情報を踏まえた、より質の高い安全な医療を受けることが可能となる。また、全国の医療機関等で3文書・6情報が共有されることで、より効率的な医療提供体制となる利点がある。
3文書6情報の提供は法律で規定、2次救急病院等には電子カルテ情報共有サービス導入を努力義務とすべきか
3文書6情報については、医師・歯科医師等が、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)等に対して、電子的に提供することができる旨を法律に位置づけることが提起されている。また、法令に根拠を設けることで個人情報保護法の第三者提供に係る本人同意取得の例外として、3文書6情報を提供する都度の患者の同意取得を不要とすることも検討されている。ただし、他の医療機関が、登録された3文書6情報を閲覧する際には、患者の同意が必要となる。
なお、支払基金等に提供された3文書6情報について、支払基金等は電子カルテ情報共有サービスによる医療機関等への共有以外の目的では使用してはいけない旨を規定する予定だ。
地域医療支援病院や特定機能病院、2次救急病院等の救急・災害時における医療提供を担う病院については、その役割・機能に鑑みて、病院管理者に対して、3文書・6情報の共有に関する体制整備の努力義務を規定するかどうかが論点の1つとなっている。
さらに、電子カルテ情報共有サービスの運用費用の負担についてどうすべきかも重要な論点となっている。電子カルテ情報共有サービスのシステム開発の費用については、国の全額補助で行い、医療機関の電子カルテシステムの改修について、病院には国から1/2の補助が、未導入の診療所には標準型電子カルテを普及させることがすでに示されている。
運用費用としては、医療機関の電子カルテシステムの保守費用や3文書6情報の提供に係る費用、支払基金のシステムに係るものが発生することとなる。これらの運用費用の負担の在り方については、関係者のメリット等を踏まえ考えることが必要であり、受益者負担の考え方が共通認識となる一方で、運用が開始されてない段階では、各ステークホルダーにどれくらいのメリットがあるのかが不透明である。委員の意見として、受益者負担が明確になるまでのランニングコストは全額国が負担すべきだとの意見もある。
今後、さらに議論を進め、年内には意見をとりまとめ、令和7年の通常国会に法案を提出する予定だ。