被用者保険の適用拡大を議論 国保代表は制度存立を危惧 医療保険部会(2024年7月3日)
社会保障審議会医療保険部会は3日、同省の「働き方改革の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」(以下、懇談会)の議論のとりまとめについて報告を受け、議論した。懇談会のとりまとめに対し、被用者保険代表は評価する一方、国保代表は制度存立を危惧した。
懇談会は、今年2月から8回にわたり、①短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方②個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方③多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方―の3点を主なテーマとして議論した。
7月1日の第8回会合で概ね了承し、同3日に厚労省が議論のとりまとめを公表。とりまとめでは、基本的な視点として、①被用者にふさわしい保障の実現②働き方に中立的な制度の構築③事業所への配慮等―の3点を掲げた。
担い手増が重要
健保連の佐野雅宏委員は「今後の本格的な人口減少に伴い、就業者の減少も懸念されるなかで、社会保障制度の維持の観点からも担い手を増やし、働き方の中立的な制度の構築に向けた観点からも適用拡大は大変重要」だと強調した。「とりまとめ」がその方向性に沿った見直し内容となっていることを評価しつつ、「その上で、企業規模要件の撤廃、常時5人以上を使用する個人事業所における非適用業種の解消にあたっては、やはり短時間労働者の割合の高い業種、具体的には卸売・小売業、宿泊・飲食・サービス業など健保組合も含めて大変大きな影響を受けることが想定される。保険者の財政や運営に留意して、必要な配慮策や支援策をぜひお願いしたい。引続きの検討課題とされたフリーランス等は現行の医療保険制度との整合性との観点からも慎重な議論をお願いしたい」と述べた。
国保制度の基盤に大きな影響
国保中央会の原勝則委員は「年金保障の充実から適用拡大をすることは大事だと思うが、一方で医療保険に与える影響がある。具体的な対応として何をするのかはまだ出ていないが、昨年12月に閣議決定された『全世代型社会保障構築を目指す改革への道筋(改革工程)』を見ると、被用者保険の適用拡大は今回に限らず今後も検討が続けられていくこととなっている。適用拡大がこのまま進められた場合、人口減少で国保の被保険者が減っているなかで、さらに被用者保険に移行すると、地域の連帯感を踏まえた国保の保険者機能の発揮が困難になる」と述べた。また、ひいては国民皆保険体制の基盤となっている国保制度の存立に大きな影響を与えることを危惧していることを表明した。さらに、「少なくとも年金制度とは別に医療保険制度においては一定の歯止めを設けることも将来は考える必要があるのではないか。この問題は、今後医療保険部会で議論することになると聞いているで、改めて厚労省の説明を聞いた上で意見を申し上げたい。また、具体案の議論にあたっては地方団体や国保組合といった国保関係者の意見を聞いて、理解と納得を得ながら対応を進めてほしい」と述べた。