2026年度の医学部入学定員の枠組みを大筋で了承 臨時定員の基準を厳格化(2024年10月30日)
厚生労働省の「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」は10月30日、2026(令和8)年度の医学部定員について、地域枠などを活用した「臨時増員」の枠組みを維持する方向性を大枠で了承した。臨時定員の基準を厳格化する方針が示されたことについて、構成員からは「医師偏在対策の議論とセットで進めるべき」とする慎重な意見も出た。遠藤久夫座長は「(新たな地域医療構想など)他の検討状況を確認しながら、内容的な結論は座長預かりにさせていただきたい」と議論を引き取った。
2026年度の医学部定員について厚労省は同日、「2024年度の医学部定員を超えない範囲で設定する」と骨太方針2024に明記されたことを受け、2026年度も「臨時増員」の枠組みを暫定的に維持することを提案した。
その上で、臨時定員を認める際の方針(下図)として次を示した。
国が各都道府県に対し、安定した医師確保のため積極的に恒久定員内への地域枠や地元出身者枠の設置についての大学との調整を促す
国は都道府県に対して、確保すべき医師数を検討した上で、真に必要な地域枠数を検討することを促す
その上で、国において臨時定員全体の必要性に加えて、当該都道府県の医師確保計画の進捗状況や地域枠医師の配置・運用状況、医師養成過程における教育・研修環境の体制、医学部定員の欠員状況等を慎重かつ丁寧に精査する
全日本病院協会の神野正博構成員らは、医師偏在対策が喫緊の課題であるにもかかわらず、臨時定員の厳格化が先行することに危機感を示した。
高度手術集約化と医療機能重点化が医療の質向上につながると指摘
また、外科領域の医師偏在対策をテーマに、日本消化器外科学会と日本脳神経外科学会から意見聴取が行われた。両学会とも、高度な手術の集約化と医療機能の重点化を進めることで、医師の勤務環境改善と医療の質向上を図るべきとする考えを示した。
日本消化器外科学会の調憲理事長は、高度ながん手術に関する集約化・重点化の必要性を強調。そのための外科医養成過程として、次の二段階案を提案した。
低・中難度手術を担う施設で外科専攻医を養成し、ジェネラリストを育成する
高度な消化器手術を実施する施設でスペシャリストを育成する
一方、日本脳神経外科学会の齊藤延人理事長は、脳腫瘍治療の集約化を進めることで医療の質向上と脳神経外科医の勤務環境改善が期待できると指摘。膠芽腫治療の国内外データを引用し、手術症例数が少ない施設では死亡率が有意に高いこと、症例数が増えることでリスクが減少することを示すレビュー論文の存在を紹介した。