医師偏在対策パッケージ「保険者等からの協力」について意見分かれる 医療保険部会(2024年9月19日)
厚労省の社会保障審議会医療保険部会は9月19日、「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の骨子案について議論した。骨子案の論点に示された「経済的なインセンティブによる偏在是正を進めるにあたっては保険者等からの協力を得る」という方針に対し、健保連などからは慎重な対応を求める意見があがった。
厚労省の医師偏在対策本部が9月5日に公表した「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の骨子案の主な論点では、医師偏在対策の実施に向けては、「規制的手法はもとより、経済的インセンティブとして、どのような対応が必要か」「経済的インセンティブによる偏在是正を進めるにあたっては、国や地方のほか、保険者等からの協力を得るなど、あらゆる方策を検討すべき」をあげている(下図)。
これに対し、国保中央会の池田参考人は「保険あってサービスなしといった地域は存在しないようにしなくてはならない。医師の地域偏在や診療科偏在を是正し、医療提供体制を整えることは国や地方だけでなく、医療保険者の責務でもあり、関係者が協力して取組んでいくものだと考えている」と述べた。また、「国保保険者は国保法に基づき、国保直営診療施設を設置するなど住民の医療の確保に取り組んでいる。しかし、人口減少や少子高齢化、過疎化の進行によって医療関係者の確保が一層難しくなっている。加えて、一般の開業医が減ることで国保直診に過度な負担が生じている」ことに触れた。そのうえで、「こうした厳しい状況を踏まえると、従来の対策にとどまらない思い切った取組みが必要で、総合的な対策をぜひ進めてほしい」と理解を示した。
「被保険者や事業主に説明が付かない」
一方、健保連の佐野雅宏委員は、「医師偏在対策を進める上では規制的手法だけでなく、何らかの経済的インセンティブが必要なことはもちろん理解する」と示す一方で「『保険者等からの協力を得る』という文言に大変引っ掛かりを覚える。仮に保険料を保険給付以外に使うことになった場合、被保険者や事業主に説明が付かない。その点で現時点では到底賛成できない」と反対を表明した。
「既存の医療介護総合確保基金を活用すべき」
経団連の井上参考人は「保険料を払っている企業の立場から職域保険の趣旨を踏まえると、もしこちらのほうにまで拡大されて保険料を取ると言うのであれば極めて強い違和感を持つ。経済的インセンティブが必要であれば既存の医療介護総合確保基金を活用すべきだ」との考えを示した。また、「実効的な医師偏在対策をするためには経済的インセンティブよりも社会的責務を認識をして貢献してもらうことが一番重要。それでも足りないのであればある程度の規制的手法も重要になってくる」と述べた。
「規制的手法でしっかり対応してほしい」
連合の村上委員は「規制的手法」について、「私どもはかねてから医師の偏在や診療科の偏在是正に向けて、医師数の目安を超える地域では保険医の登録を行わないこと等を求めている。論点では具体的に書かれていないが、実効性のある対応を検討してほしい」と述べた。また、「経済的インセンティブについては効果や内容が不明であり、医療提供体制の確保の責任を患者や被保険者に求めることはなかなか説明できない」と指摘。「給付と負担の関係性に基づく、社会保険の原則からしても到底納得いくものではない。規制的手法でしっかり対応してほしい」と要望した。