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長期収載品の保険給付のあり方の見直し 社保審の医療保険部会が案を了承(2023年12月8日)

社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は12月8日、長期収載品の保険給付のあり方の見直し案について概ね了承した。選定療養による負担の範囲は、長期収載品と後発医薬品の価格差の2分の1以下とする方針を示している。詳細は今後、中医協で詰める。【社会保険旬報編集部】

見直し案では、保険給付と選定療養の適用については、①医師が後発品への変更不可とする銘柄名処方など医療上の必要性があると認められる場合は選定療養とはせず、引き続き、保険給付の対象とする②銘柄名処方の場合でも患者の希望で長期収載品を処方した場合や、一般名処方の場合は選定療養とする③薬局に後発医薬品の在庫がないなど後発品を提供することが困難な場合は保険給付の対象とする――と提案した。

選定療養の対象品目の範囲については、長期収載品の薬価ルールにおいて後発品上市後5年から段階的に薬価を引き下げることとしているため、①後発品上市後5年を経過した長期収載品を対象とする②後発品上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合には選定療養の対象とする――とした。

後発品との薬価差の2分の1以下を患者負担に

保険給付と選定療養の負担の範囲では、長期収載品の薬価と選定療養の場合における保険給付範囲の水準差は、長期収載品と後発品の価格差の少なくとも2分の1以下とする方向とし、例えば、当該価格差の2分の1、3分の1、4分の1といった定め方を検討する方針を示した。

厚労省は選定療養の負担について影響額のイメージを例示。

患者負担に与える影響(イメージ)
社会保障審議会医療保険部会(2023年12月8日)資料1

長期収載品の薬価が500円、後発品の薬価が250円の場合、3割負担で長期収載品を利用した場合の自己負担額は150円。これに対し、選定療養による負担として価格差の「2分の1」を導入すると自己負担は250円、「3分の1」は217円、「4分の1」は200円の負担となる。

健保連の佐野雅宏委員は、医療上の必要性があると認められる場合は選定療養としないことについて「具体的な理由をレセプトに明記するなど処方・調剤の段階で明確になる仕組みの整備が必要」と提案。負担の範囲を価格差の2分の1以下とする方針には「妥当な範囲だ」と述べた。

日本医師会の猪口雄二委員は、患者が長期収載品を希望した場合や一般名処方の場合に選定療養とすることに賛同した上で、「しかし、患者の希望でも使用感や効き目の違いなど患者自身が感じている医療上の必要性が理由となっている場合がある。患者とコミュニケーションをとって判断する必要がある」と述べた。
薬局に後発品の在庫がない場合は保険給付とすることには「やむを得ない」とした。

日本慢性期医療協会の池端幸彦委員は、負担の範囲について「不安に思う人も出てくるため、最初の価格差はなるべく小さくしてほしい」と要望した。

1食当たり30円引上げ

一方、部会では入院時食事療養費について1食当たり30円引き上げることを了承した。

現在の入院時食事療養費は1食当たり640円(自己負担460円、保険給付180円)。昨今の食材費等の高騰を踏まえた対応で、患者負担分が引き上げとなる。見直しの施行日は令和6年度予算編成過程を経て決定される。

日医の猪口委員は、次期診療報酬改定の実施時期の来年6月からの適用を要望した。日慢協の池端委員は「特に低所得者にとって食事は本当に重要だ。救済と丁寧な制度設計を同時に考えていかなければいけない」と述べた。


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