外来・往診・訪問診療の患者に注射を行った場合、長期収載品に係る選定療養の対象外(2024年9月25日)
厚労省は9月25日、10月から始まる「長期収載品の選定療養」について、外来・在宅患者に対する処方等の取扱いを示した。入院患者以外の患者に対して医療機関が注射を行った場合、長期収載品の選定療養の対象とならない。また、添付文書で禁忌とされている患者には、使用した上で判断する必要なく「医療上の必要性」に該当する。医療課事務連絡「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その3)」(Q&Aその3)で周知した。
令和6年10月1日から始まった「長期収載品の選定療養」制度において、❶入院患者、❷長期収載品を処方等または調剤することに「医療上必要があると認められる」場合、❸医療機関・薬局において後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合――については、対象から除外される。
今回発出された事務連絡において、入院中の患者以外の患者(往診または訪問診療を行った患者も含む)に対して医療機関が注射を行った場合は、長期収載品の選定療養の対象とはならない旨が疑義解釈で明確化された(Q&Aその3・問1)。
疑義解釈の背景として、今年3月に改正された厚労省の通知において、保険外併用療養費の支給額について示した次の規定がある。
上記の①③⑤にある通り、在宅医療または注射に使用した薬剤について、長期収載品を使用した場合に選定療養の対象となりうることから、疑義が発生していた。Q&Aその3はこれに答えたもの。
在宅自己注の薬剤は対象
一方で、在宅自己注射を「処方」した場合は本制度の「対象」となる。
また、「退院時処方」については、診療報酬の点数表留意事項通知で、「退院時の投薬については、服用の日の如何にかかわらず入院患者に対する投薬として扱う」とされているため、入院と同様に取り扱うこととされ、対象から除外される。
それぞれ「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」(Q&Aその1)の問8・問9において示されている。
添付文書で禁忌とされている患者には、使用した上で判断する必要なく「医療上の必要性」に該当
上記❷の医療上必要があると認められる場合の具体例として、次の4類型が7月にすでに示されている(Q&Aその1・問1)。
長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師が判断する場合
当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合
学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
後発品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合(単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない)
9月25日に発出された事務連絡では、上記の類型「2」で「当該患者が後発医薬品を使用した際に」とあるが、後発医薬品の添付文書において禁忌とされている患者に対しては、その後発医薬品を使用したうえで判断する必要はなく、この場合は類型「2」に該当するとみなして差し支えないとした(Q&Aその3・問2)。
また、複数の医薬品を混合する際、後発医薬品を用いると配合変化により薬剤が分離する場合に、長期収載品を用いることにより配合変化が回避できるときは、上記の類型「4」に該当し、「医療上の必要性があると認められる」ため、「長期収載品の選定療養」からは除外される(Q&Aその3・問3)。