支払基金、改正法の成立に伴いシステム改修や定款を変更(2023年5月30日)
社会保険診療報酬支払基金の加瀬勝執行役は5月30日の会見で、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の成立に伴う支払基金に関連する改正事項への対応について発表した。出産育児一時金処理システムや高齢者システムの改修、支払基金定款の一部変更などを行う。
支払基金に関連する改正事項は、
①出産育児一時金の引上げと出産費用の見える化
②出産育児支援金等の新設
③前期高齢者納付金の算定方法の変更
④医療費適正化に資する業務の追加
⑤退職者医療制度の廃止
⑥介護情報の収集・提供等の事業の創設
―の6項目。
①出産育児一時金の引上げと出産費用の見える化については、「出産育児一時金等代理申請・受取請求書」様式の改定など出産育児一時金処理システムの必要な改修を行う。
出産費用の見える化は、厚労省が有識者で公表項目などの詳細を今年夏までに検討し、医療保険部会に報告の上、来年4月を目途に実施する。
この結果を踏まえて、支払基金は今年8月以降、システム改修を行う。
10月から設計に入り、来年3月のシステムリリースを目指す。
②出産育児支援金等の新設では、後期高齢者医療制度が出産育児一時金の費用の一部を支援する仕組み(出産育児支援金)が導入されることに伴う高齢者システムの改修を行う。
支払基金は、後期高齢者医療広域連合への後期高齢者交付金から出産育児支援金を相殺した額を交付し、保険者からは後期高齢者支援金から出産育児交付金を相殺した額を徴収する。
6月から設計に入り、来年2月末のリリースを目指す。来年4月1日の法律施行時に支払基金の定款を変更する。
③前期高齢者納付金の算定方法は、前期高齢者給付費の調整において現行の「加入者数に応じた調整」に加え、このうちの被用者保険分について部分的(導入の範囲は3分の1)に「報酬水準に応じた調整」(報酬調整)が導入されることに伴い、納付金の算出方法が変更となるため、高齢者システムの改修を行う。
6月から設計に入り、来年2月末のリリースを目指す。
支払基金法に「医療費適正化に資する診療報酬請求情報の分析」が明記
④医療費適正化に資する業務の追加では、医療費適正化計画について「計画に記載すべき事項を充実させるとともに、都道府県ごとに保険者協議会を必置として計画の策定・評価に関与する仕組みを導入する」とされた。
これらの取組みに資するよう、支払基金の目的・業務等に「医療費適正化に資する診療報酬請求情報等の分析等」が支払基金法に明記された。
支払基金はレセプト分析を通じた医療費適正化のエビデンスの収集等に関して、必要な協力を行う。支払基金法改正に伴い、支払基金定款でも同様の変更を行う。
⑤退職者医療制度については、退職者医療制度の対象者の減少や保険者等の負担を踏まえ、来年4月に廃止される。
退職者医療制度の廃止に伴い、支払基金の業務は令和6年度に令和4年度の概算療養給付費 等拠出金及び療養給付費等交付金を確定及び精算し終了となる。
退職者医療特別会計の権利や義務は、令和7年4月1日に前期高齢者特別会計に承継する。来年4月1日施行時に支払基金の定款を変更する。
⑥介護情報の収集・提供等の事業の創設では、被保険者や介護事業者その他の関係者が当該被保険者の介護情報等を共有・活用することを促進する事業を地域支援事業と位置付け、市町村は当該事業を医療保険者等と共同して支払基金・国保連合会に委託することができることとされた。
共有する情報の具体的な範囲や共有先、情報連携基盤については厚生労働省において検討中で、支払基金と国保中央会が共同運営するオンライン資格確認等システムにより介護保険の資格情報を管理することが想定されている。法律施行時(時期未定)に支払基金の定款を変更する。