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電子カルテ情報共有サービスにおける健診結果報告書や患者サマリー等の運用を整理――医療等情報利活用WG(2023年11月6日)

厚生労働省は11月6日、健康・医療・介護情報利活用検討会「医療等情報利活用ワーキンググループ」(WG)に対して、「電子カルテ情報共有サービス」の詳細を示した。同サービスにおける①健診結果報告書、②患者サマリー、③診療情報提供書の運用等について細部を整理した。また、これまで仮称とされてきた「電子カルテ情報共有サービス」を正式名称とする方針を固めた。同サービスは2024年度運用開始予定。


➀-1:健診結果報告書、電子カルテ情報共有サービス経由は保険者が必要に応じてダウンロード 

電子カルテ情報共有サービスの稼働当初において、対象となる健診は、❶特定健診、❷後期高齢者健診、❸事業者健診(40歳未満含む)、❹人間ドックとなる予定。
対象となる健診実施機関は、医療機関や医療機関に併設される健診機関で、かつ、オンライン資格確認等システムネットワークにより健診結果報告書を登録するため、オンライン資格確認を導入した医療機関等であることが必要となる。オンライン資格確認等システムネットワークに接続されておらず、情報登録に必要な端末を有しない健診実施機関は含まれない。

健診結果については現在、後期高齢者医療確保法や健康保険法等に基づく特定健診・事業者健診が、健診実施機関から保険者に提出されている。これに加えて、新たに電子カルテ情報共有サービスを経由して、健診実施機関から保険者に健診結果報告書が提供されることとなる。

この場合において、「両者の健診結果報告書について、エラーチェックの方法等が異なれば内容に差異が出てしまうのではないか」「内容に差異がある場合、受け取った保険者において混乱が生じないか」といった懸念が指摘されていた。その対応として、健診実施機関から電子カルテ情報共有サービスに登録する健診結果については、健診実施機関および電子カルテ情報共有サービス側の両方でシステム上のバリデーションチェックを行う。また、そのチェック内容については、現在、特定健診の結果を健診実施機関が保険者に提出する際に行われているエラーチェックと同等のものとする方針が示された。
 
また、保険者システムでは、上図の既存フローと新規フローのそれぞれで登録される健診結果について、区別して管理することを促していく。なお、電子カルテ情報共有サービス経由では、保険者に自動的に健診結果データが登録されるのではなく、保険者がオンライン資格確認等システム(オン資システム)上の健診DBに登録された健診結果データを閲覧し、必要に応じてダウンロードして保存する仕組みとする方針。

➀-2:健診結果報告書、マイナポ上では直近にオン資システムに登録された結果を表示

健診結果は今後、❶保険者がオン資システムに登録した健診結果と、❷電子カルテ情報共有サービス経由で健診実施機関からオン資システムに登録された健診結果―の2種類が存在することとなる。そのため、マイナポータル上でそれぞれを表示した場合、混乱する懸念があった。

そのため、直近にオン資システムに登録された健診結果を表示することとする。ただし、❶と❷ではオン資システムに登録される健診項目に差がある場合があるため、その場合は、より多くの健診結果の項目を閲覧できるように表示することとする。

具体的には、多くの場合は❶よりも❷が先にオン資システムに登録されるため、まず❷がマイナポータル上に表示される。その後、❶がオン資システムに登録されれば、❶をマイナポータル上に表示し、❷は表示しない。ただし、❶と❷の健診項目を比較した場合、❷のほうが健診項目が多い場合があるため、❷にしかない健診項目は、❷のものを表示することとする。

②:患者サマリーの「外来の記録」には、「主傷病+副傷病」「療養上の計画・アドバイス」を記載

患者サマリー(Patient summary)は、医師がこれまで紙などで患者に情報共有していた治療上のアドバイスを電子的に共有するものであるが、他の医療機関とは共有しないで、患者がマイナポータル上で閲覧するものとする。ただし、患者が自らの判断でマイナポータル画面等を他の医師に見せることは可能とする。

患者サマリーは、氏名等の基本情報やアレルギー情報等のプロファイル情報等に加えて、「外来の記録」から成る。この「外来の記録」の記載内容として、傷病名(主傷病+副傷病)と「療養上の計画・アドバイス」が以下のように示されている。 

また、入力負担軽減のため、電子カルテの機能の中でテンプレート入力や自動反映を支援することが想定されている。また、患者状態が変化しアドバイスが古くなる可能性があることを踏まえ、6か月が経過した場合はマイナポータルでの閲覧は行えないものとする方針。

➂:診療情報提供書への電子署名は当分不要

9月11日の同ワーキンググループに提出された技術解説書(案)では、電子カルテ情報共有サービスで診療情報提供書を登録する際には、記載した医師の電子署名を付すこととしていた。しかし、今回のWGでは、医師の負担軽減の観点等から、「当面の間、電子カルテ情報共有サービスにおいては医療機関の判断で電子署名を行わなくても共有可能としてはどうか(電子署名を用いることも可能)。その上で、電子カルテ情報共有サービスの普及状況・今後のHPKIを含めた電子署名の状況等を見て、再度、取扱いを検討してはどうか」との対応案が示された。

また、電子署名を用いない運用において、セキュリティ事案が発生した場合には、医療機関には調査や患者に対しての説明が求められることがある点について、周知が必要であること、オンライン資格確認等システムネットワークに関しては「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」に準拠したセキュリティ要件を担保することで安全性を確保することなども示された。

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