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医師偏在是正プランを策定し診療報酬で支援――新地域医療構想検討会で方針(2024年11月20日)

厚労省は11月20日の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤久夫)で、医師偏在対策の具体案を示した。全国で100か所程度を「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」に指定し、「医師偏在是正プラン(仮称)」を策定。経済的インセンティブを含む支援を進める方針を明らかにした。財源については診療報酬の活用を基本とし、患者負担の増加が懸念される場合には保険者からの協力も求める考えだ。

重点支援区域の選定基準を提示

厚労省は「重点医師偏在対策支援区域」の選定基準として、以下の要素を挙げた。

  • 医師偏在指標

  • 可住地面積当たりの医師数

  • 医療機関への住民のアクセス状況

  • 診療所医師の高齢化率

  • 今後の人口動態

これらに加えて地域医療対策協議会や保険者協議会の意見を踏まえ、都道府県が具体的な区域を決定すべきとの方針だ。

また、厚労省が提示する「候補区域」を参考にしつつ、二次医療圏単位や市区町村単位、さらに地区単位など柔軟に設定する方向性を示した。隣接県と協力が必要な区域の設定も可能になる見通しだ。

全国で100程度の二次医療圏が対象に

厚労省が想定する「候補区域」は以下の条件に該当する区域としている。

  • 各都道府県で医師偏在指標が最も低い二次医療圏

  • 医師少数県の医師少数区域

  • 医師少数区域で、かつ可住地面積当たりの医師数が全国下位4分の1の二次医療圏

これらを基に、全国で100程度の二次医療圏が対象になる見込みだ。

2026年度に「医師偏在是正プラン」策定へ

「重点医師偏在対策支援区域」を対象とする「医師偏在是正プラン」は令和8(2026)年度に策定する予定だ(下図)。

【重点医師偏在対策支援区域】
○ 早急に医師確保を要する地域については、今後も一定の定住人口が見込まれるものの、必要な医師が確保できず、人口減
少よりも医療機関の減少のスピードの方が早い地域など、へき地でなくても、人口規模、地理的条件、今後の人口動態等か
ら、医療機関の維持が困難な地域もあり、まず早急に取り組む地域の対策として、優先的かつ重点的に対策を進める区域を
「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」として定めることとしてはどうか。
・ 「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」の設定に当たっては、都道府県において、厚生労働省が提示した候補区域を参考
としつつ、地域の実情に応じて、医師偏在指標、可住地面積あたり医師数、住民の医療機関へのアクセス、診療所医師の
高齢化率、今後の人口動態等を考慮して、地域医療対策協議会及び保険者協議会で協議して、「重点医師偏在対策支援区域
(仮称)」を選定することとしてはどうか。
※ 都道府県において、地域の実情に応じて、二次医療圏単位、市区町村単位、地区単位などで設定
【医師偏在是正プラン】
○ 都道府県において、医師確保計画の中でより実効性のある医師偏在対策の取組を進めるため、「重点医師偏在対策支援区
域(仮称)」を対象とした「医師偏在是正プラン(仮称)」を策定することとしてはどうか。
・ 「医師偏在是正プラン(仮称)」においては、「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」、支援対象医療機関、必要医師数、
医師偏在是正に向けた取組等を定めることとし、策定に当たり、地域医療対策協議会及び保険者協議会で協議することと
してはどうか。
・ また、「医師偏在是正プラン(仮称)」は、国の定めるガイドラインを踏まえ、緊急的な取組を要する事項から先行して
策定していき、令和8年度に全体を策定することとしてはどうか。
※ 「医療計画(へき地の医療体制)」に基づくへき地の医療対策は引き続き取り組む。
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【厚生労働省が提示する候補区域(案)】
① 各都道府県の医師偏在指標が最も低い二次医療圏
② 医師少数県の医師少数区域
③ 医師少数区域かつ可住地面積当たりの医師数が少ない二次医療圏(全国下位1/4)
のいずれかに該当する区域
→ 全国で100程度の二次医療圏を想定
面積は全国の約43%、人口は全国の約15%、医師数は全国の約10%
新たな地域医療構想等に関する検討会(令和6年11月20日)資料1:医師偏在是正対策について

具体的な支援内容として以下の例が挙げられた。

  • 承継・開業する診療所への支援

  • 一定の医療機関に対する派遣医師らへの手当増額支援

  • 土日の代替医師確保等による勤務・生活環境改善の支援

  • 中核病院等からの医師派遣により医師を確保するための派遣元医療機関に対する支援

厚労省の提案は医師偏在の是正に向けた具体的な取り組みとなる。今後、候補区域選定や財源確保の具体策、特に診療報酬の活用や保険者のから協力が議論の焦点となる見通しだ。

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