特区内での救急救命士によるエコー検査の実証について議論(2024年3月7日)
厚労省の「救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会ワーキンググループ」(児玉聡座長)は3月7日、救急救命士のエコー検査の実証について議論した。前回に引き続き、岡山県吉備中央町と岡山大学病院が特区内での実証実施について承認を求めたが、委員は安全性への懸念や実証の意義に対する疑義を示すと共に、実証計画のさらなる検討を求めた。年度内に一定の議論のとりまとめを行うこととなっている。
前回の議論を受け、吉備中央町と岡山大学病院はエコー検査の対象を腹痛が主訴の傷病者や事故等により外傷が生じている負傷者に限定し、医師の責任の下で救急救命士がエコー検査を実施し、肝破裂や脾破裂等による腹腔内液貯留による出血や病変の有無を確認するものとした。エコー実施が困難な場合には、通常の救急搬送時のプロトコールに従って対応するとした。
これに対し、多くの委員から安全性を懸念する意見があがった。
チーム医療推進協議会の深澤恵治委員は、救急救命士のエコー検査の安全性に強い懸念を示し、実証実施について強く反対した。日本医療法人協会の加納繁照委員は「通常の救急医療では、二次救急で対応が難しい場合に三次救急に搬送する。あくまでもトリアージをいかに速やかにするかというのが最終的な目標であるならば、三次救急に迅速に運んだほうがよいのではないか」との認識を示した。
日本救急医学会の本多英喜委員は、「『なぜエコーをしないと搬送先が決められないのか』という点を明確化すべき。根本的な問題として、一次診療、二次診療を含めて重軽傷者を受け入れる救急医療体制を整備すべきであり、そのほうが効率的ではないか」と主張した。