DMATの派遣要請が長期化 公私病連(2024年1月19日)
全国公私病院連盟は1月19日の会見で、能登半島地震、診療報酬改定、医師の働き方改革について見解を示した。能登半島地震については、DMATの派遣要請が長期化していることが報告された。【社会保険旬報編集部】
邉見会長「病院船が必要」
邉見公雄会長は能登半島地震について、「加盟団体・会員病院から現地の被害状況について報告を受けた。現地では資材・インフラ・人員が逼迫、不足している。加えて、道路が原因で支援が難しい」と述べた。また、災害支援のあり方について「私は阪神淡路大震災のころから病院船の必要性を訴えてきた。日本医師会も賛同し、調査費が計上されたこともあるが建造には至っていない。近い将来に発生が予想される首都直下地震でも三浦半島・房総半島の被害が懸念されている。島国である日本には多くの半島があり、その支援には病院船が必要だ。建造が叶った際には船名に『能登』を提案したい」と発言した。
震災は地域の医療課題を浮き彫りに
浦田士郎副会長は能登半島地震の支援体制について「これまでの熊本地震や東日本大震災と1つ異なる点がある。それはDMATの派遣要請が非常に長期化していることだ。おそらくだが、人員など医療資源が豊かではない状況で通常医療をなんとか行っていたなか、今回の震災に遭ったことが原因ではないだろうか。過去の大震災をみても地域の潜在的な課題が増幅され先鋭化されてきた。日本全体でも通常の医療提供体制には余裕がなく、日本の医療の問題点が被災側も支援側でも先鋭化してしまう」と指摘した。
診療報酬改定、各論については評価が難しい
令和6年度診療報酬改定について邉見会長は「0.88%の引き上げは、ある意味で多くの人が評価する。しかし高齢者救急、処遇改善の分配など、各論についていえば評価が難しいと、本日の実務者会議で報告を受けた」と述べた。
働き方改革の施行による問題噴出を懸念
医師の働き方改革について、難波義夫副会長は「現在の医療体制は、大学病院で安い給与で働いている医師が、夜間あるいは週末に地方の病院に働きにいっている。そうしなければ生活費を稼げないのが常識となっており、その働き方によって地域の医療が成り立っている。この現状を根本的に変えなければ、医師の働き方改革はなかなか上手くいかないのではないか」と指摘した。
また、浦田副会長は、「国際医療福祉大学の島崎謙治教授が、現在の医療体制について『膨大な水を吸収する巨大なスポンジ』と表現している。『膨大な水』とは国民の医療ニーズで、『吸収する巨大なスポンジ』とは医師の長時間労働だ。4月から施行される医師の働き方改革でスポンジは収縮して水は溢れることになる。国の三位一体の改革も上手くいっているとは言えないなか、各地で様々な形で問題が出てくることを非常に懸念している」と述べた。