令和6年度診療報酬改定の基本方針を了承 社保審の医療保険部会と医療部会(2023年12月8日)
社会保障審議会の医療保険部会と医療部会は12月8日、令和6年度診療報酬改定の基本方針案を概ね了承した。【社会保険旬報編集部】
他産業に後れない待遇改善 高齢者の救急医療を追記
8日の医療部会では、処遇改善への言及が目立った。看護の賃金アップを求める声があがるなか、日本赤十字社医療センターの木戸道子委員は、「特定の職種に限らず、全職種で他産業に後れを取らないような待遇改善を行う必要がある」と総括した。
「具体的方向性」を掘り下げた「骨子」で、「高齢者の救急医療の充実及び適切な救急搬送の促進」と追記したことを歓迎する声もあがった。
日本医療法人協会の加納繁照委員は「高齢者救急は生死にかかわる可能性が高く、トリアージを含めた判断が重要。対応が必要と認識していただいたのでお願いしたい」と口火を切り、神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「適切な搬送は、救急搬送時と『下り』と呼ばれる救急処置が終わった後の他の機能との役割分担と関係している。そのあたりが『適切な』に込められていると思う」と続いた。
医療DXの費用負担について日本病院会の泉並木委員は「病院の経営の圧迫にならないようにしてほしい」と要望。加納委員も「診療報酬上の対応をはっきりしていただきたい」と申し入れた。
リハビリの評価について、骨子では、「早期から」としていたものを「より早期から」と追記したことに対し、神野委員は「『より早期』にやるとすればそれなりの人員も必要。入院初日からのリハビリに、より高い評価をいただかなければいけない」と期待感を示した。
「将来を見据えた課題」のなかで、「国や地方自治体の補助金等の予算措置などにより社会保障が支えられていることを踏まえ、総合的な政策を構築していくことが求められる」と記載されたことに対し、岐阜県飛騨市長の都竹淳也委員は、「自治体は、苦労に苦労を重ねて財源をねん出している。当たり前に思わないでほしい」と理解を求めた。
神野委員は、公立病院に対する総務省からの約8000億円の繰入金に言及。過疎地などの政策医療への支出ならば問題ないとしつつ、運営費交付金的に支払われているのであれば、イコールフッティングの観点から検討の余地があると指摘。その上で、「民間でも歯を食いしばって(地域で公的病院と同じ医療に)取組んでいるが繰入金はもらえない。もし財源として8000億円がこちらの方の診療報酬に入ってきたら、きちんと適正に分けていただきたい」と、果たしている役割に着目すべきとの考えを示した。
働き方改革の現状の理解を ヘルスリテラシー向上が重要
一方、同じく8日に開かれた医療保険部会で日本医師会の猪口雄二委員は「今後、中医協において基本方針、特に基本認識や重点課題を踏まえて国民の安心できる医療提供を実現できるような議論を進めていただきたい」と要請した。
日本慢性期医療協会の池端幸彦委員は、重点課題とされた働き方改革について「50代60代の医師は病院に24時間いるのが当たり前で、それを大きく方向転換する。特に大病院は困っており、今までの長時間労働を短くするための人を配置するお金も必要になる。しかし実際にはお金は出ずに、IT化と効率化、タスクシェア・タスクシフトが求められている。かなり厳しい運営のなかで改革をしなければならない現状をご理解いただきたい」と述べた。
協会けんぽの北川博康委員は、将来を見据えた課題にヘルスリテラシーの向上が明記されたことについて「全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築を通じて、制度を将来の世代に引き継いでいくためには、国民のヘルスリテラシーの向上こそが最大の原動力となる。幅広い主体の連携とともに、さらなる周知啓発に取り組むことが極めて重要であると認識している。今後とも積極的に取り組んでいきたい」と述べた。