健保連がシンポジウム「変化する社会と医療保険」開く(2024年3月4日)
健保連(宮永俊一会長)は3月4日、「変化する社会と医療保険~健保組合の新たな挑戦~」と題したシンポジウムを開催した。「医療ニーズの変化、医療費の増加への対応」「多様な働き方の包摂と制度の持続性の確保」「健保組合に求められる役割」をテーマに基調講演とパネルディスカッションが行われた。(写真:基調講演に登壇した森田朗・東京大学名誉教授)
開会挨拶で佐野雅宏副会長は「近年の医療費の伸びや厳しさを増す健保組合の財政状況、進行する少子化など、将来の改革に向けた緊急度は高まりつつあり、従来の想定より前倒しで取り組む必要がある。健保連としては、改革の実現をめざし、秋までに新たな提言を取りまとめていくつもりだ。今回のシンポジウムにおける議論を提言の検討にぜひ役立てていきたい」と述べた。
森田教授「医療DXの推進と改善が必要」
シンポジウム第1部の基調講演でははじめに、健保連の将来構想検討委員会で座長を務めた森田朗・東京大学名誉教授が総論的講演を行った。
森田教授は、医療保険制度を取り巻く社会環境が制度発足時と現在では変化していることから改革が必要と説明した。
改革の方向性については「保険者機能の強化が重要だ。その一つとして、医療費負担の適正化について検討する必要がある。今まで提供していた医療のすべてをこれからも保険で負担し続けることが非常に難しくなってくるだろう。どこまでを保険の適用範囲とするか、自己負担のあり方も考えていく必要がある」と述べた。
また、保険者機能の強化を含む制度改革には基礎となる医療データが必要なことから医療DXの推進を訴えた。一方で、「医療DX推進本部が昨年6月に医療DXの工程表を示した。しかし、パッチワークのような政策だと感じざるを得ない。ヨーロッパでは、EU域内で一元的に医療情報を扱うことが可能な仕組みであるEHDS(European Health Data Space)に関する法案が、おそらく今月に成立する。わが国でもEHDSのような仕組みを導入し、医療DXを改善する必要があるのではないか」と発言した。
進展したデジタル技術を前提とした体制強化を
続いて健保連の松本展哉総合企画室長が将来構想検討委員会報告書の概要を紹介した。
松本室長は2040年に向けて健保組合が求められる役割について、「人口構成とともに加入者像が変化し、デジタル化もいっそう進展する。このような変化に対して、保険者の新たな可能性を見出していくことが求められている。変化する加入者の特性にあわせて情報技術を活用した、個人最適化されたサービスの提供や、かかりつけ医と連携した保険医療や保健サービスの提供などがあげられる」と解説した。
また、「新たな取組みを担うため、業務の標準化・効率化をはじめとした体制強化が求められている」と述べた。
※その他の講演・プレゼンテーション、パネルディスカッションの模様は社会保険旬報本誌でお伝えします。