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ベースアップ評価料の届出様式を簡素化――ベア評価料の算定を促す(2024年9月11日)

厚労省は9月11日、令和6年度診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」の届出様式を改正した。賃金改善計画書の職種グループ別記載項目を削除するなど、記載方法を簡略化した。また、同省の特設ウェブサイトをリニューアルし、説明資料や動画等を追加した。新たに、スタッフ10名以下の無床診療所向けの届出書類の書き方を公開している。


令和6年度診療報酬改定では、物価高に負けない賃上げの実現を目指して、❶病院、診療所、歯科診療所、訪問看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃上げのための特例的対応として+0.61%の改定を行い、医療従事者の賃上げに必要な診療報酬が創設された。また、❷40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する職員の賃上げに資する措置として、+0.28%の改定も行われた。

令和6年度のベースアップ+2.5%、令和7年度のベースアップ+2.0%の実現に向け、①医療機関等の過去の実績、②今回の診療報酬改定による上乗せの活用、③賃上げ税制の活用の三者の組合せにより、達成を目指していくことになる。

賃上げの状況に関しては、毎年、賃上げに係る計画書、賃金引上げの実施状況の報告書を提出するほか、抽出調査などにより実績報告をすることとなる。

上記の❶の看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種については、賃上げを実施していくための評価として「ベースアップ評価料」が導入され、❷の40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者については、賃上げに資する措置として初・再診料、入院基本料等の引上げが行われた。

「ベースアップ評価料」の算定要件としては、「ベースアップ評価料」による収入を原則、全額ベースアップ等に充てることとしている。
そのうえで、さらに今回の診療報酬措置以外の収入や税制措置も活用しつつ、令和6年度のベースアップ+2.5%、令和7年度のベースアップ+2.0%の目標を達成しようとするものである。

2年間の賃上げについては、2パターンあり

医療機関等においては、令和6年度と令和7年度の2年間の賃金引き上げについて計画されている。そのなかでベースアップ評価料(改定率+0.61分)については、対象職種の給与総額の2.3%相当となるように設定されており、令和6年度と令和7年度の2年とも同じ点数設計である。したがって、この点数を算定した場合の賃上げへの配分方法については、以下の2パターンが考えられるが、いずれの場合も算定額をすべて賃金の引き上げに充てることが必要である。

ベースアップ評価料は3種類

ベースアップ評価料(ベア評価料)には、外来医療または在宅医療を実施している医療機関において勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価である「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」、外来医療または在宅医療を実施し、「入院医療を実施していない診療所」であって、賃金のさらなる改善を必要とする医療機関において、賃金の改善を実施している場合の評価である「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」、病院または有床診療所において、賃金の改善を実施している場合の評価である「入院ベースアップ評価料」の3種類がある。

それぞれのベア評価料ごとに詳細な施設基準が定められており、届出様式の記載等も複雑なため、厚労省では周知セミナーを開催するとともに「ベースアップ評価料計算支援ツール」等も公開し、ベア評価料の届出を促してきた。
しかし、診療所に関しては、特に届出が進まない状況であったことも踏まえ、9月11日にベア評価料の届出様式の改定(簡素化)を行うとともに、特設サイト「ベースアップ評価料等について」を大幅にリニューアルし、詳細な資料や動画等も公開した。

届出の簡素化、大きな変更点は3点

今回のベア評価料届出の簡素化における大きな変更点は、以下の3点となっているほか、記載の説明も詳細になりわかりやすくなっている。
また、「届出を行う月」の選択方法を変更したほか、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出ない場合には「対象職員の給与総額」が記載不要となった。

⑴「賃金改善計画書」の職種グループ別記載項目の削除(病院・有床診療所を除く)

対象職員の基本給等に係る事項について、職種グループ別の記載項目を削除し、対象職員(全体)の記載のみになった。ただし、職種グループ別記載項目の削除は、「別添 計画書(無床診療所及びⅡを算定する有床診療所)」と「別添 計画書(歯科診療所及びⅡを算定する有床診療所)」シートのみが対象であり、病院・有床診療所は、引き続き職種グループ別の記載が必要。また、ベースアップ評価料対象外職種についての項目は、すべての医療機関でも引き続き記載が必要となっている。

⑵「賃金改善計画書」の記載負担軽減(病院・有床診療所)

対象職員の基本給等に係る事項について、職種グループ別の記載項目を記載することで、対象職員(全体)が計算されるように数式が設定された。

⑶ベースアップ評価料対象外職種の給与等総額欄の削除

ベースアップ評価料対象外職種について、「給与総額」の記載欄が削除された。

ベア評価料Ⅰ届出後にⅡを届け出る場合、修正した「賃金改善計画書」の提出は必須ではない

ベア評価料の届出様式の簡素化については、9月11日付けで事務連絡「ベースアップ評価料に係る届出様式の改定について」が発出された。同事務連絡の別添2で疑義解釈(Q&A)が示されている。

疑義解釈では、改定前の届出様式を使用しての届出は可能である旨が示されている(Q&A問2)。
また、既に外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、または訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)を届け出ている医療機関や訪問看護ステーションは、翌月以降に(Ⅱ)の届出を行う際、既に賃金改善計画書を提出しているため、修正版の提出は不要とされている。ただし、再提出を希望する場合は地方厚生(支)局長に提出しても問題ない(Q&A問4)。
さらに、ベア評価料算定医療機関や訪問看護ステーションが既に提出した賃金改善計画書の内容に変更があった場合も、上記と同様の取扱いが適用される(Q&A問5)。

届出を取り下げた場合でも、翌年度の8月において賃金改善実績報告書の提出が必要

上記疑義解釈では、ベア評価料算定医療機関または訪問看護ステーションが、届出の取り下げを行った場合についても、翌年度の8月において、ベースアップ評価料を算定していた期間に係る賃金改善実績報告書の提出が必要としている。(Q&A問6)

スタッフ10名以下の無床診療所向けの届出書類の書き方も新規公開

特設サイト「ベースアップ評価料等について」の大幅リニューアルに伴い、スタッフ数10名以下の小規模の無床診療所向けに、新規に「ベースアップ評価料の届出書類の書き方~医科編~」 が公開された。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを算定して、加算分をそのままスタッフの賃上げに充当する場合、簡単に届出書類が作成できるとして、ベア評価料の届出を促している。届出書の記入は3つのステップ(下図)で、簡単に「一人でもできる!」「短時間でできる!」と謳っている。

そのほか、すでに外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)または歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の施設基準届出を行った医療機関(診療所)のうち、(Ⅱ)の施設基準を満たした医療機関が、新たに外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)または歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出る場合の届出方法を説明した「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の追加届出の手引き」 や、すでに(Ⅰ)の施設基準届出を行った医療機関(病院・有床診療所)のうち、入院ベースアップ評価料の施設基準を満たした医療機関が、新たに入院ベースアップ評価料を届け出る場合の届出方法を説明した「入院ベースアップ評価料の追加届出について」 なども掲載されている。

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