電子処方箋管理サービスの令和7年度以降の機能追加を議論――トレーシングレポート様式等のパターン分類も示す(2024年9月24日)
厚労省の電子処方箋等検討ワーキンググループ(電子処方箋WG)は9月24日、今後開発が予定されている機能について議論した。令和7年度以降に拡張・追加する「電子処方箋管理サービス」の機能として「❶電子処方箋管理サービスにおけるチェック機能の拡充」「❷処方箋事前送付の合理化・利便性向上」「❸医療機関・薬局間の情報の共有・標準化等」を挙げている。
注目される追加機能として、令和7年1月以降に予定されている「院内処方情報の登録」がある。同年1月に実施される運用検証を経たのち、運用が開始される。この機能により、他の医療機関や薬局において、院内処方の薬剤情報閲覧や薬剤の重複投薬等チェックが利用可能となる。また、院内処方等に係る法令上の対応についても今後行われる。
「併用注意」チェック、傷病名・検査値等チェックは約9割の施設が「実装したい」
上記❶の「電子処方箋管理サービスにおけるチェック機能の拡充」において検討する内容としては、次のものが示されている。
⑴「併用注意」についても、重複投薬等チェックでアラートが表示されるよう、電子処方箋管理サービスを改修
⑵傷病名やアレルギーなどの「電子カルテ情報共有サービス由来情報」ともチェックがかかるように、電子処方箋管理サービスを改修
上記❷の「処方箋事前送付の合理化・利便性向上」については、「現在、医療機関からの電子処方箋発行後、引換番号等により薬局が事前に電子処方箋を取得できる状態としているが、より利便性の高い方法を実現できないか」といった視点での開発における検討が必要としている。
なお、新機能についての検討は進めつつ、実装に当たっては電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等の医療DXの普及状況を踏まえ、五月雨式の機能リリースによりその都度対応を迫られることがないよう、スケジュールを検討する。また、追加機能等の開発対象については、希望する施設のみの対応とするかも含めて検討課題となる。
9月24日の電子処方箋WGでは、前回WGにおいてニーズ調査を実施して欲しい旨の意見があったことも踏まえ、医療機関・薬局のニーズ調査結果が示された。医療機関等向け総合ポータルサイトにアカウント登録済みの医療機関・薬局を対象に調査を行い(回答数5,159件、うち病院365件、医科診療所2,022件、歯科診療所3件、薬局2,769件)、上記❶の⑴「併用注意」チェックや、⑵傷病名・検査値等とのチェックについては、いずれも約9割の施設が「実装したい」と回答している。
この結果を踏まえ、今後は次のような事項を考慮しつつ、実現性を検討していく予定だ。
ある薬剤に対してアレルギー歴があった場合、どの範囲でアラートを出すか
傷病名とのチェックを行う際、どの疾病名までをアラートの対象にするか
検査値は検査時期によって異なるが、どの期間の検査値をチェック対象とするか
過剰にアラートが出ることで、重要なアラートを見逃してしまう懸念がある 等
上記❷についても、同じ方法・対象でニーズ調査を実施し、回答者の78.7%の施設が「有益である」という結果となった。患者自身が薬局に処方箋を送付する手間が削減でき、満足度向上に繋がるとしている。ただし、他省庁・他部局との調整も含め、運用上の課題や、システム実装上の課題等についても検討する必要がある。
長島公之構成員(日本医師会常任理事)は、追加機能の導入の調査について、このような質問であれば、現場の大抵は「はい」と答えると発言し、メリットと負担のバランスや優先順位を考えるべきと指摘した。
トレーシングレポート様式等をパターン化――薬局から医療機関への共有情報を把握し、電子・標準化を検討
上記❸の「医療機関・薬局間の情報の共有・標準化等」に関しては、「服薬情報提供書」・「化学療法に関する情報提供文書」・「吸入薬指導に係る情報提供文書」等の「トレーシングレポート」等で薬局から医療機関等へ情報共有が行われているものがあり、これらの情報の電子化・標準化が課題となる。
これらの情報共有については、調剤報酬において「服薬管理指導料」や「服用薬剤調整支援料」、「服薬情報等提供料」等において、薬局から医療機関等への情報共有が算定要件に組み込まれているものもある。また、情報共有を行う項目や様式が示されているが、様式についてはこれに準ずるものの使用も容認されているため、完全に標準化されたものとはなっていない。
そこで事務局において、様式等の情報収集を行い、その結果を次の3パターンに分類し、その概要を以下のとおり取りまとめている。
①記載項目を規定せず、汎用的な様式になっているもの
②調剤報酬の「様式1-1」、「様式1-2」、「様式3」に各地域で必要な項目や、目的に応じて専門的な項目を付加したもの
例:CTCAE(有害事象共通用語標準)5.0に基づきグレード評価が可能になっているもの、糖尿病の服薬情報提供書にフォーカスしたもの、オピオイド系鎮痛薬の服薬情報提供書にフォーカスしたもの
③調剤報酬の「様式1-1」、「様式1-2」、「様式3」の項目にとらわれず、各地域や目的に応じて必要な項目を定めたもの
例:吸入薬指導報告書、医師・歯科医師との事前合意による変更調剤報告書、薬学的管理指導計画に基づく報告書
今後、電子的な共有や標準化を進めることで、現状ではトレーシングレポート等を医療機関等の求めに応じ、薬局がFAX等で送付し、医療機関側で電子カルテへ反映している一連の手間が減り、情報を利活用しやすくなるメリットがある。
なお、電子処方箋の普及拡大や、電子カルテ情報共有サービスの構築等も進められている中、情報の受け手である医療機関等の負担や実情も踏まえ、医療機関・薬局間で共有されている情報の標準化や電子的な取扱いについて、引き続き議論を進める必要があるとしている。
関連書籍
オンライン資格確認、電子処方箋、マイナ保険証、医療DX工程表等については、社会保険研究所発行『医療DXの今後に向けて 電子処方箋・オンライン資格確認Q&A(令和5年4月版)』が詳しい。