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新しい資本主義実現会議「医療・介護分野に処遇改善措置を確実に届ける」(2024年10月30日)

政府の「新しい資本主義実現会議」(議長=石破茂首相)は10月30日、新しい資本主義の発展・加速に向けた重点施策をまとめた。令和6年度報酬改定による医療・介護分野で働く人のための処遇改善を図る措置を確実に届けることを明記した。今後、策定する総合経済対策に盛り込む方針だ。

写真:新しい資本主義実現会議で重点施策をまとめる石破首相=2024年10月30日(首相官邸提供)

重点施策の中で、中堅・中小企業の賃上げ環境整備として、介護や障害福祉、医療の現場での生産性向上を支援する施策が挙げられた。具体的には、介護テクノロジーの開発・実証・普及に向けたプラットフォームの見直しと運営強化、事業者における介護ロボットやICT(見守りセンサー等の情報連携ネットワーク)、社会課題解決に寄与するAIなどデジタル技術を活用した機器やサービスの普及促進が含まれている。

また、令和6年度報酬改定によって医療・介護・障害福祉分野従事者の処遇改善を確実に実施するだけでなく、さらなる賃上げを目指し、生産性向上や職場環境の改善支援も行う方針を打ち出した。

後発品安定供給のための企業間連携・再編を支援

成長力を高める国内投資促進による「投資大国」の実現に向け、医薬品産業や医学系研究への支援が掲げられた。医薬品産業については「我が国の創薬力強化のため、アカデミア等とスタートアップとの間の創薬シーズの 橋渡しや各地の創薬クラスターの発展に繋がる設備投資支援等を強化する」とし、さらに後発医薬品の安定供給を確保するため、企業間の連携や協力・再編に役立つ設備投資も支援する方針を示した。

また、医学系研究については、「医学系研究の国際競争力を向上させるため、医学系研究者の研究時間の確保や 他分野・他機関との連携強化を図りながら、先駆的・革新的な研究を支援する」と明記した。

「治療から予防へのシフトを普通調整交付金を財源に進めるべき」

経済同友会代表幹事の新浪剛志委員は、医療について「国民の健康増進を図るため、健診機能の強化を含め、『治療』から『予防』へのシフトを、普通調整交付金を財源に進めるべき」と提案。また、現役世代の負担軽減に向けて「後期高齢者支援金を最大で半減させることを検討し、社会保険料におけるキャピタルゲインの捕捉を含む応能負担の徹底で財源確保を進めるべき」と述べた。

「人員配置基準の緩和はケアの質と安全性の向上に逆行」

連合会長の芳野友子委員は、人手不足が深刻な介護分野について「介護ロボットやICTの活用促進により現場の業務負担軽減が必要。現場で実際に働く労働者への研修充実や、小規模事業所でも導入可能とする経済的支援の拡充が不可欠」と強調。また、2024年度介護報酬改定における介護ロボットやICT活用による人員配置基準の緩和については「ケアの質と安全性の向上に逆行するものであり、行うべきではない」と意見を示した。
さらに、2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス費の同時改定で盛り込まれた処遇改善については「他産業との賃金格差是正や物価動向を踏まえると十分ではない。特に訪問介護分野では人材不足や経営悪化により事業所の閉鎖が増加しており、政府は介護人材確保に向け、さらなる処遇改善策を講じる必要がある」と要望した。

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