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新しい年金時代

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#坂本純一

居酒屋ねんきん談義|#8 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その4

年金を取り巻く、いまの日本の状況をどうとらえるか?権丈:さて、ここで、またまた、大局的な視点でお話を伺いたいのですが、出口さんは、いまの日本が置かれた状況を、どうご覧になっていますか。 出口:歴史的に見たら、この国は、極論すれば存亡の危機に立っていると思うべきです。というのも、この30年間で、PPP(購買力平価)で見たGDP(国内総生産)の世界シェアは9%から4%にまで落ちているのです。スイスのIMD(国際経営開発研究所)による国際競争力では日本は30年前のトップから201

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居酒屋ねんきん談義|#7 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その3

まちがったことを言う人には、きちんと反論しておくことが大切権丈:年金って、ほんっと、実にくだらない話がいろいろとあったわけでして、むかしは債務超過600兆円だとか年金が破綻しているというバカバカしい話をつぶすのに、ぼくたちはずいぶんと時間を費やされました。堀勝洋先生が今年1月に「執筆活動もこの辺で終えるべきときがきた」と書かれてまとめられた最終論文*の最後の文章は「筆者はトンデモ論にかかわり過ぎたことに対し若干の悔いは残る…」でした。堀先生の、この空しく残念なお気持ちを最も理

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居酒屋ねんきん談義|#6 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その2

民主主義だからこそ、市民に政策決定のプロセスを理解してもらうことが大切権丈:坂本さんも実際に2004(平成16)年制度改正をご担当されていたので、お伺いしたいのですが、たとえば、年金局の担当になり改革を進めようとされるとき、これまでどのような方法で改革を実現するための法律の作成まで進めようとされたのでしょうか。おそらく出口さんもそうだと思うのですが、ぼくは政策を動かしていく力と現実の民主主義のあり方ということを意識するんですよね。  いままでは毎回毎回、役人は非公開の場、言わ

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居酒屋ねんきん談義|#5 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その1

知の巨人・出口さんが年金部会の議論に参加して感じた3つのこと編集部:今宵の居酒屋ねんきん談義は、年金部会の「議論の整理」*1がまとまり、部会での議論もひと区切りついたことから、年金制度改正*2の議論を大局的な視点からお話をお伺いしたいという権丈様の強いご希望で、1万冊以上の本を読破され、世界中で1,200都市以上を訪れられている、「知の巨人」と評される出口治明様においでいただきました。 *2:今回の年金部会が議論した2019(令和元)年財政検証結果を踏まえた年金制度改正

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#4 第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」、第5・6回「雇用の変容と年金」の議論を巡って②

第5・6回年金部会「雇用の変容と年金」を巡って 「支給開始年齢」「受給開始可能期間」「受給開始時期」の概念整理で改正議論をブレさせない編集部:年が明けてしまったようですが、「被用者保険の適用拡大」に続きまして、「雇用の変容と年金」をテーマにご談義いただきたいと思います。このテーマにつきましては、年金部会では第5回、第6回で検討しています。 そこで、年金局が部会に提出した資料を見ますと、第5回では、平均寿命が延びてきたことで、高齢期が長くなってきたことが示され、第6回は、その高

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#4 第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」、第5・6回「雇用の変容と年金」の議論を巡って①

第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」を巡って 厚生年金の適用拡大の大切なこと①基礎年金の給付水準を上げる権丈:まずは、「被用者保険の適用拡大」についてです。ここは、10月26日に開催された日本年金学会のシンポジウム*において、厚生年金の適用拡大について研究発表された藤森さんにお願いすることにしましょう。 藤森:厚生年金の適用拡大では、大切なことが2つあります。1つは、あまり知られていませんが、適用拡大によって基礎年金の給付水準が上がっていくことです。これまで公的年金保険制

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#3 第3回年金部会・第6回経済前提専門委員会の議論を巡って③

年金局はいい資料を年金部会に提供している権丈:平成31年の財政検証および経済前提を巡る認識ということでは、状況はかなり改善されてきているという手ごたえを感じています。賦課方式である公的年金保険の機能や役割、そして実質的な運用利回りであるスプレッドの重要性など、これまで、僕もずっといろいろな機会で言い続けてきました(社会保障への不勉強が生み出す「誤報」の正体――名目値で見ても社会保障の将来はわからない『東洋経済オンライン』2018年7月25日)。 第3回年金部会に年金局は、「

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#3 第3回年金部会・第6回経済前提専門委員会の議論を巡って②

玉木氏の「給付は負担である」は年金の本質をとらえた画期的な表現権丈:玉木さんから、経済前提専門委員会でのこれまでの議論についての感想をお聞きしました。私が、以前、玉木さんをすごいと思ったのは、初めてお書きになった年金の著書(『年金2008年問題』)の中で、「給付が負担である」と書かれていることですね。つまり、高齢者の生活水準(給付)を支えているのは、勤労世代が生産したものからの分配(負担)であると言っている。今でこそ、ニコラス・バーの「Output is central(生産

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#3 第3回年金部会・第6回経済前提専門委員会の議論を巡って①

日本経済と社会の変化を長年にわたり見てきたことで検討作業班に貢献したい権丈:それでは「居酒屋ねんきん談義」を始めましょう。年金時代も、ようやく企画名を「居酒屋ねんきん談義」と正式に承認したようですね。編集部内には、そんなふざけた名前でよいのかと抵抗があったんでしょうけど、あきらめましたか(笑)。 編集部:年金時代では、「居酒屋ねんきん談義」を連載企画と位置づけ、年金部会の開催や制度改正の動きに合わせて、年金制度改正についてご意見やお考えをお持ちの方々にお集まりいただき、ご

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#21 公務員職域年金の給付設計の行方

 被用者年金制度を一元化する際に課題となるのが、公務員共済年金に存在している職域年金部分の取り扱いである。  昭和60年の年金改正で厚生年金と共済年金の給付額算定方式を揃えたときに、共済年金には厚生年金相当額の2割に相当する額を職域年金部分として上乗せすることとされた。それまでの共済年金は公務員制度の一環としての側面をもつとともに、また民間の企業年金の性格ももっていることからこのような措置が取られたのである。  当時国会に提出された被用者年金一元化法案は、附則において職域年金

#20 公的年金と制度の分立

 公的年金には強制加入という基本原則がある。公的年金の目的は、老齢、死亡、障害による所得の喪失という人生における経済リスクに遭遇した人に給付を行うことによって、この人が困窮化しないようにすることである。また、強制加入の原則は、その給付を社会全体で支えるという考え方に由来している。   このような社会保険の仕組みが各国で導入されているのは、産業革命以来、都市部で発生した個人の責任によらない貧困問題を解決するために行われた試みのうち、自由市場を基本とする経済体制下でビスマルクが

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数理の目レトロスペクティブ|#19 給付の水準と制度分立

 わが国の公的年金制度は、1985年当時、10の制度に分かれ、就く職業により適用される制度が異なっていた。その後、徐々に統合が進んできたが、まだ完全ではなく、制度分立が継続している。そもそもなぜこのように多くの制度が分立し、職業で適用される制度が異なるようになったかという点は、おおむね4つの流れがある。  第1の流れは、明治政府が官吏恩給制度を導入したことである。これは一定年限公務に就いて退職した官吏や軍人に対する国の恩恵的給与という側面を持っていたが、やがて非官吏の公務員

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#18 公的年金制度の一元化

 今回からしばらくは公的年金一元化の課題を取り上げてみよう。  わが国に国民皆年金の枠組みが導入されたのは、国民年金制度が導入された1961年であった。国民皆保険の実現と並んで、社会保険制度が整備されていく大きな一歩であった。  この結果、1960年代には国民は国民年金、厚生年金、船員保険のほか7つの共済組合のいずれかに加入することとなったわけであるが、給付内容や保険料の負担が制度ごとに大きく異なるという問題点があった。  民間被用者に適用される厚生年金と公務員グループに適

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#17 積立金の役割――米国の場合

 公的年金における積立金の話を続けよう。  積立金保有国は、わが国のほかに、アメリカ、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、韓国などがある。それぞれの積立金はその国のGDPに対し相当規模の金額になるので、運用の原則の確立に各国とも努力している。  そうしたなかで極めてユニークな運用原則を採用しているのがアメリカである。他の国々は資本市場で積立金を運用しているのに対し、アメリカだけは資本市場での運用を行わないことを原則としている。公的年金の積立金のような連邦政府の資金が民間の資

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