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数理の目レトロスペクティブ|#10 定額給付と報酬比例給付

坂本 純一(さかもと・じゅんいち)/(公財)年金シニアプラン総合研究機構特別招聘研究員

 わが国の被用者は、高齢になったときには定額の老齢基礎年金と報酬比例の老齢厚生年金を受給する。ここで定額の給付とは、現役時の報酬に関係なく保険料拠出期間にのみ比例して支給される給付のことであり、報酬比例の給付とは、現役時の報酬と保険料拠出期間の双方に比例して支給される給付のことである。

 被用者に対する公的年金給付はこのように定額給付と報酬比例給付を組み合わせることにより、現役時に報酬が比較的低かった人にも、ある程度の水準の給付を行うこととしている。一種の所得再分配であり、最低生活の保障のための給付という側面と、現役時の出捐(負担)に応じた給付という両面を備えた給付設計となっている。

 この定額給付と報酬比例給付を組み合わせた給付算定式は、1954年の厚生年金保険法の改正で導入された。それ以前の厚生年金の給付算定式は、報酬比例給付のみであった。戦後の混乱を経て、厚生年金を再建する議論が行われているときに、1949年に創設された総理府社会保障制度審議会が、防貧のために行われる公的年金の給付は最低生活を保障するものでなければならないとする立場から、生計費を基礎とする定額制を強く勧告した。日経連も定額給付とすべきと主張した。こうした意見を総合的に勘案し、それまでの報酬比例のみの給付算定式を、定額部分と報酬比例部分からなる算定式に改めたのである。

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