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年内取りまとめに向け、介護報酬改定審議報告案が示される――第235回介護給付費分科会(2023年12月11日)

厚生労働省は12月11日、第235回社会保障審議会介護給付費分科会を開催。
令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が示され、議論した。

審議報告案は、10月11日の第227回分科会での「基本的な視点」と第228回から第234回までの論点・対応案や委員の意見をもとに整理したもの。

上記分科会については第233回を除き、過去の記事で紹介している。

メインとなる「令和6年度介護報酬改定の対応」の基本的視点は次の4つ。

【1】地域包括ケアシステムの深化・推進
【2】自立支援・重度化防止に向けた対応
【3】良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
【4】制度の安定性・持続可能性の確保

これに【5】その他を加えた5つに分類され、対象となるサービスを明記し整理された。

なお、「今後の課題」については次回の取りまとめとし、現在は空欄となっている。

今回は、この審議報告(案)の内容について紹介する。

参考:「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」


【1】医療・介護の連携や看取り・認知症への対応などを推進

【1】地域包括ケアシステムの深化・推進には、「医療と介護の連携の推進」のほか、「看取りへの対応強化」や「高齢者虐待防止等、安全性の確保等の取り組みの推進」、「認知症の対応力向上」などが並ぶ。

「医療と介護の連携の推進」では、介護保険施設に協力医療機関の設定を義務付けることや(経過措置あり)、医療機関へ退所した場合の情報提供の評価などが記載されている。

「看取りへの対応強化」については、訪問介護や訪問入浴介護・短期入所生活介護でも、新たに評価されることとなる。

「高齢者虐待防止等、安全性の確保等の取り組みの推進」では、運営基準における高齢者虐待防止措置が取られていない場合に、一部のサービスを除き基本報酬を減算する。

さらに短期入所サービス・多機能系サービスに対しては、身体的拘束等適正化のための措置を義務づけるとともに、記録や措置が行われていない場合は基本報酬を減算する(1年の経過措置)。

訪問・通所系サービス等についても、身体的拘束等の原則禁止や記録に関する規定を運営基準に設けられる。

「認知症の対応力向上」では、訪問系サービスの「認知症専門ケア加算」・通所介護等の「認知症加算」の要件が緩和されるほか、介護保険施設や認知症対応型共同生活介護では、認知症の行動心理症状(BPSD)発現を未然に防ぐ・早期に対応するチームケアへの評価が新設される内容となっている。

【2】リハ・口腔・栄養の一体的取り組みを評価、LIFEも見直しを

【2】自立支援・重度化防止に向けた対応では、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組」や「LIFEを活用した質の高い介護」などが挙げられた。

「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組」では、訪問・通所リハビリテーションや介護保険施設において一体的な取り組みを評価する。

具体的には、訪問・通所リハビリテーションではリハビリテーションマネジメント加算で、介護保険施設では介護老人福祉施設の個別機能訓練加算(Ⅱ)・介護老人保健施設のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算・介護医療院の理学療法等(特別診療費)による評価となる。

「LIFEを活用した質の高い介護」では、科学的介護推進体制加算や自立支援促進加算について、複数の加算での重複入力を求めない・データ提出頻度を少なくとも3月に1回に統一するなど入力負担の軽減等が図られる。

また、ADL維持等加算・排せつ支援加算、褥瘡マネジメント加算ではアウトカム評価の充実のための見直しが行われる。

【3】管理者の兼務範囲を明確化、ケアプラン取扱件数の緩和なども実施

【3】良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくりでは、①「介護職員の処遇改善」、②「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」、③「効率的なサービス提供の推進」が挙げられた。

①②は第233回分科会で議論された内容であり、別の記事による紹介を予定している。

③のうち、管理者の責務及び兼務範囲の明確化等と、いわゆるローカルルールについてなども、第233回分科会において対応案が挙げられたものとなっている。

全サービスにおける管理者について、その責務を、「利用者へのサービス提供の場面等で生じる事業を適時かつ適切に把握しながら、職員・業務の一元的な管理や指揮命令を行う」ことと明確化。

そのうえで、責務を果たせる場合には同一敷地内における他の事業所・施設等でなくても、兼務をして差し支えないものと明示する。

また、管理者に関しては、これまで兼務制限があった(看護)小規模多機能型居宅介護について、兼務可能なサービス類型を限定しないこととなる。

ローカルルールについては、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合にはルールの必要性を説明できるようにすること等が、都道府県・市町村に求められる見込みとなっている。

第233回介護給付費分科会資料より

このほか、居宅介護支援においては介護支援専門員1人あたりの取扱件数について、報酬・基準の双方から見直しが図られる。

【4】同一建物居住者への評価を見直し、多床室の室料負担は政府による検討へ

【4】制度の安定性・持続可能性の確保では、「評価の適正化・重点化」と「報酬の整理・簡素化」が項目として挙げられた。

また、【5】その他では第223回分科会で取り上げた、「書面掲示」規制の見直しや地域区分などが並ぶ。

「評価の適正化・重点化」では、訪問介護や居宅介護支援における同一建物等居住者へのサービス提供が見直される。

一方、多床室の室料負担や、【5】その他の基準費用額(居住費)の見直しについては明確な方向性は記述されず、「これまでの分科会での意見等を踏まえ、予算編成過程において検討する」との記述にとどまった。

【5】その他の「書面掲示」規制の見直しは、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう見直しを図るもの。

従来の「書面掲示」に加え、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人ホームページまたは情報公表システム)に掲載・公表することを義務づける。

地域区分では、現行の級地を基本としつつ、特例を設け、自治体の意向調査の結果を踏まえて級地に反映する。

従来の特例と新たに加わる特例については、次のとおり。

第233回介護給付費分科会資料より
第233回介護給付費分科会資料より

このほか、平成27年度介護報酬改定時に設けられた経過措置については、令和8年度末まで延長する。

なお、こうした地域区分について、第223回分科会では次のような適用地域案が示されている。

第233回介護給付費分科会資料より

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