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LIFEへの提出頻度を最低3月に1回へ統一、高齢者虐待防止未実施は基本報酬を減算――第232回介護給付費分科会(2023年11月27日)〈後編〉

【1】認知症への対応力強化、【2】感染症への対応力強化、【3】業務継続に向けた取組の強化等、【4】LIFE、【5】口腔・栄養、【6】その他(高齢者虐待の防止、送迎)の6つが議題となった11月27日に第232回介護給付費分科会について、第234回介護給付費分科会(12月4日)の記事からさかのぼり、2回に分けて紹介。

この記事では後編として【4】から【6】を掲載する。


【4】LIFEフィードバックを充実、訪問系サービス等への関連加算対象拡大は見送る

【4】LIFEでは、「入力項目の見直し及びフィードバックの充実」「自立支援・重度化防止を重視した適切な評価」「LIFE関連加算の対象となるサービスの範囲」が論点として挙げられた。

「入力項目の見直し及びフィードバックの充実」のうち入力項目の見直しとしては、項目の定義の明確化や複数の加算での重複入力を求めないようにするなど、システムの利便性向上に取り組むことが示された。

一方、フィードバックを充実させる観点から、新たな項目を盛り込むことも検討する。

また、加算ごとに規定されていたLIFEへのデータ提出頻度を、少なくとも3月に1回に統一する。

さらに複数の加算を算定する場合は、一定の条件の下で初回のデータ提出に猶予期間を設けることも提案された。

加算のデータ提出のタイミングを統一できるようにする観点からだ。

さらに、自事業所と平均要介護度が同じ事業所との比較や、同じ要介護度の利用者との比較、地域別等による詳細な層別化や複数項目のクロス集計することなど、フィードバックに関する見直しを行う。

「自立支援・重度化防止を重視した適切な評価」では、褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算、ADL維持等加算・自立支援促進加算の4つの加算の見直しが挙げられた。

褥瘡マネジメント加算では、サービス利用開始時点で褥瘡がある利用者に関し、褥瘡が治療したことについても新たなアウトカムとして評価する。

排せつ支援加算では、尿道カテーテル使用の有無を、新たなアウトカムとして評価することが提案された。

ADL維持等加算では、Ⅱの要件であるADL利得のカットオフ値について見直しを行うとともに、ADL利得値に影響を与えない範囲で要件の簡素化を図る。

自立支援促進加算では、個別ケアを重視した支援計画の立案に、より資する評価項目へ見直すことが対応案として示された。

「LIFE関連加算の対象となるサービスの範囲」では、訪問系サービスなどの現在対象外のサービスに関しては、今回改定では拡大しないことが提案された。

各サービスをどのように評価すべきか等については、引き続き検討される。

日本医師会の江澤和彦委員はこのうちADL維持等加算に関し、改定検証ではバーセルインデックスの改善が見られず生活リハビリテーションのアウトカム評価としてはなじまないとし、「抜本的に見直す必要がある」との認識を示した。

【5】訪問・短期入所の口腔アセスメント等を評価、施設の口腔確認は運営基準に位置づけ

【5】口腔・栄養では、在宅療養者に歯科治療が行われていない割合が高いことなどから、利用者ごとの口腔アセスメントの実施と歯科医療機関・介護支援専門員への情報提供を評価する案が示された。

対象サービスは、訪問サービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護)および短期入所サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)となっており、介護職員等の実施可能な口腔アセスメント指標に基づき、歯科医療機関・介護事業所の連携のもと実施する。

一方介護保険施設では、入所者ごとの口腔状態の確認を運営基準の「口腔衛生の管理」に位置づける。特定施設および認知症対応型共同生活介護等においては、口腔・栄養スクリーニング加算の要件とする。

なお、特定施設入居者生活介護においては、介護職員に対する口腔ケアへの指導等を評価した口腔衛生管理体制加算を廃止し、この要件を一定緩和した上で基本サービス費の要件とする案が示された。

入居者の状態に応じた口腔衛生管理を、さらに充実させる観点からだ。

また介護保険施設では、栄養管理に関する医療と介護の情報連携の新たな評価が提案された。

施設の管理栄養士が、入所者の栄養管理に関する情報について、他の介護保険施設や医療機関等の医師か管理栄養士に、そして介護支援専門員に文書等で提供した場合に評価される(下記図中論点⑤)。

さらに栄養管理を必要とする利用者に切れ目なくサービスを提供する観点から、再入所時栄養連携加算の対象に「療養食を提供する必要性がある入所者等」を加える対応案も示された(下記図中論点⑥)。

このほか、歯科衛生士等が行う居宅療養管理指導に関しては、終末期がん患者等の利用者に実施する場合に、算定回数上限を緩和する案などが示されている。

【6】送迎に他事業所の利用者等も同乗可、身体拘束防止には転倒への「国民的な理解」を

【6】その他では、「高齢者虐待の防止」「送迎」に関する改定の方向性が示された。

「高齢者虐待の防止」ではそれを推進する対応案として、運営基準における高齢者虐待防止措置が取られていない場合は、基本報酬を減算する。

ただし、福祉用具貸与・特定福祉用具販売については、令和8年度末までの期間については減算の対象としない。また、居宅療養管理指導に関しては事業所のほとんどがみなし指定であること等を踏まえ、BCP策定等に関する規定と同様、経過措置期間を令和8年度末まで延長する。

このほか、身体的拘束等の適正化の推進として、短期入所サービス・多機能系サービスに対して、身体的拘束等適正化のための措置を義務づけるとともに、記録や措置が行われていない場合は基本報酬を減算する。これらについては1年の経過措置が設けられる見込みだ。

さらに、訪問・通所系サービス等についても、身体的拘束等の原則禁止や記録に関する規定を運営基準に設ける。

これらは「身体的拘束等の原則禁止や記録に関する規定」や「身体的拘束等の適正化のための措置に関する規定」の有無が、各サービスの現状より一段ずつ繰り上がるようなイメージとなっている。

通所系サービスに係る「送迎」については、生活実態の多様化に伴い送迎範囲の疑義が増加していること、「送迎車の運転専任職」の採用に苦労している実態があることなどから、次のとおり取り扱いを明確化する。

  • 運営上支障がなく、利用者の居住実態(近隣の親戚の家など)がある場所に限り、当該場所への送迎を可能とすることを明確化(事業所のサービス提供範囲に限る)

  • 他事業所の従業員が自事業所と雇用契約を結び、自事業所の従業員として送迎を行う場合や、委託契約において送迎業務を委託している場合(共同での委託を含む)には、責任の所在等を明確にした上で、他事業所の利用者との同乗を可能とすることを明確化

  • 利用者の利便性を損なわない範囲内(同一敷地内や併設・隣接など)の障害福祉サービス事業所が、介護事業所と雇用契約や委託契約(共同での委託を含む)を結んだ場合には、責任の所在等を明確にした上で、障害福祉サービス事業所の利用者も同乗することを可能とする

産業医科大学の松田晋哉委員は身体拘束が起こる原因として、施設内での転倒があると言及。

転倒を非難するのではなく、確率的に必ず起こってしまうものだという「国民的な理解」がなければ身体拘束の予防は進まないだろうとの認識を示し、保険者が住民に周知するなどの必要性を訴えた

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