認知症行動心理症状へのチームケアに新加算、BCP未策定は基本報酬の減算へ――第232回介護給付費分科会(2023年11月27日)〈前編〉
11月27日に第232回介護給付費分科会が開催され、【1】認知症への対応力強化、【2】感染症への対応力強化、【3】業務継続に向けた取組の強化等、【4】LIFE、【5】口腔・栄養、【6】その他(高齢者虐待の防止、送迎)の6つの議題について、それぞれの論点・対応案が示された。
すでに公開した第234回介護給付費分科会(12月4日開催)の記事からさかのぼり、2回に分けて内容を紹介。この記事では上記【1】から【3】について掲載する。
【1】認知症加算・認知症専門ケア加算の利用者割合要件を緩和
【1】認知症への対応力強化では、通所介護等の「認知症加算」、訪問系サービスの「認知症専門ケア加算」が論点となった。
「認知症加算」認知症自立度Ⅲ以上の利用者割合20%以上を満たす必要があり、「認知症専門ケア加算」も同Ⅲ以上の利用者割合が1/2以上という要件がある。
こうした要件を満たせないことで加算に繋がらないケースも見られることなどから、利用者の受け入れ割合の要件を利用実態に即して見直すことが提案された。
このほか新たな加算として、介護保険施設や認知症対応型共同生活介護において算定できる、認知症の行動心理症状(BPSD)発現を未然に防ぐ・早期に対応するチームケアへの評価が提案された。
また、老健事業で検討されている認知症の評価尺度については、さらなるエビデンス収集を図り、現場における多様な活用・LIFEにおける活用を検討する方向性が示された。
新加算の提案に対しは基本的に賛成とする意見が寄せられる一方、要件等に関する懸念も複数挙げられた。
全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、加算Ⅱにおいて修了者の配置が要件となっている「日本版BPSDケアプログラム研修等」について、「非常に限られたところでの研修」と言及。負担の少ないeラーニングとオンラインを活用した研修にするべきではないかと質問した。
これに対し厚生労働省は、研修のオンライン化や東京以外の認知症介護研究・研修センター(仙台・大阪)でも実施できるよう検討していく旨を回答した。
日本慢性期医療協会の田中志子委員は、加算の名称に使用されている「BPSD」について、世界的には表現を変えようとする流れがあると指摘。
認知症ケアチーム加算などへの名称変更を提案した。
【2】協定締結医療機関との新興感染症発生時等の対応取り決めを努力義務に
【2】感染症への対応力強化では、「新興感染症発生時等の対応」や「感染症対応力の向上と感染症発生時の備え」に関する対応案が示された。
「新興感染症発生時等の対応」では、高齢者施設(介護保険施設・特定施設・認知症グループホーム)に対し、協定締結医療機関と連携し、新興感染症発生時等における対応を取り決めることを努力義務とする。
さらに、第231回分科会で設定の義務づけが提案された協力医療機関が、協定締結医療機関である場合は、利用者の急変時等の対応の取り決めを行うなかで新興感染症発生時等における対応についても協議することを義務づける。
「感染症対応力の向上と感染症発生時の備え」では、平時からの基本的な感染対策については引き続き厚生労働省の教材等を参考に、各事業所において取り組みを継続することが示された。
そのうえで、診療報酬における外来感染症対策向上加算を参考に、以下について評価する。
協定締結医療機関との連携体制を構築(上記努力義務を要件化)
協力医療機関等と感染症発生時の対応を取り決めるとともに、連携の上で、軽症者等への施設療養を実施
感染症対策にかかる一定の要件を満たす医療機関等や地域の医師会が定期的に主催する感染対策に関する研修に参加し、助言や指導を受ける
また、感染対策にかかる一定の要件を満たす医療機関から、施設内で感染者が発生した場合の感染制御等の実地指導を受けることについても評価する。
なお、こうした施設内療養を行う高齢者施設等への対応として、今後パンデミックが発生した場合などに、必要な体制を確保した上で感染者の療養を行うことを評価する案を提示。
感染症への対応を行う医療機関と連携していることや、適切な感染対策を行っていることなどを要件とし、対象の感染症は必要に応じて指定するしくみが提案された。
【3】BCP未策定減算はサービスに応じた適用除外も設定(令和8年度末まで)
【3】業務継続に向けた取組の強化等では、令和6年度から完全義務化となる業務継続計画(BCP)策定が未策定の場合に、基本報酬を減算する案が示された。
ただし、感染症の予防及びまん延防止のための指針整備と非常災害に関する具体的計画策定を行っている場合は、令和8年度末までに限り減算を適用しない。
また、訪問系サービスや居宅介護支援においては、非常災害対策計画策定が求められていないことなどを踏まえ、令和8年度末まで減算の対象外となる。
さらに、居宅療養管理指導についてはほとんどの事業所がみなし指定であることなどから、経過措置期間を令和8年度末まで延長する。
なお、業務継続計画の策定等に関しては毎年度調査を行い、都道府県等にも策定状況等を共有する案が示された。
日本経済団体連合会の酒向里枝委員はBCPに関し、利用者の立場からこの3年間ですべての対象事業所に策定される期待があったと言及。
より早期に計画策定が進むよう、経過措置の内容の再検討を訴えた。