通所介護・入浴介助加算に研修要件を追加、療養通所介護では短期利用を新設か――第229回介護給付費分科会(2023年10月26日)<その1>
厚生労働省は10月26日、第229回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
令和6年度介護報酬改定に向けた検討として、厚生労働省からは前回同様、ここまでの議論等を踏まえた具体的な「論点」と「対応案」が示された。
今回対象となったサービスは、通所サービスおよび短期入所サービス。 具体的には、次の分類に基づき対応案などについて議論された。
本記事では【1】【2】の通所介護に関連した内容について掲載する。
【1】個別機能訓練加算について人員配置を柔軟化し評価を適正化、基本報酬の特例は存置
通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護といった通所介護に関するサービスにおいては、4つの論点・対応案が示された。
具体的には、①入浴介助加算の見直し、②個別機能訓練加算の適正化、③通所系サービスにおける3%加算・規模区分特例、④豪雪地帯等に対する通所介護等の取扱いの明確化に関する内容だ。
≪論点①≫入浴介助加算の見直し
入浴介助加算(Ⅰ)の算定率は事業所ベースで通所介護91.4%等となっているが、医師等による居宅訪問・評価、入浴計画の策定等を要件とする(Ⅱ)については、同算定率12.2%などにとどまっている。
(Ⅱ)の詳細要件は留意事項通知やQ&Aで示しているものの、算定できない理由を見ると十分に浸透しているとは言えない状況にある。
さらに、算定する意向がない理由として、「利用者の居宅を訪問し評価・助言等を行う医師等の確保・連携が困難である」と回答した事業所の割合が最も多かった。
こうした論点を踏まえ、次のような対応案が示された。
なお、(Ⅰ)の対応案に示されている入浴介助技術の研修については「移乗介助の技術」や「リスク管理について」は95%近くの事業所が実施している現状となっている。
≪論点②≫個別機能訓練加算の適正化
個別機能訓練加算については、令和3年度改定において従来の(Ⅰ)と(Ⅱ)を統合したが、激変緩和のために、サービス提供時間帯を通じて専従1名以上の機能訓練指導員等を配置した場合を要件とする(Ⅰ)ロが設けられた経緯がある。
(Ⅰ)イに加えて配置された場合に算定でき、(Ⅰ)イとの併算定はできない。
こうした個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの「提供時間を通じて専従1名以上の配置」について、配置時間と1日あたりの個別機能訓練の平均実施時間を踏まえ、さらなる機能訓練の有効な活用等に向けた対応が論点となった。
なお、実施日1日あたりの個別機能訓練に係る平均実施時間は、「10分以上20分未満」の割合が高くなっている。
具体的には、配置時間の定めをなくし、配置時間以外を別の職務に配置することを可能とするイメージが示されている。
≪論点③≫通所系サービスにおける3%加算・規模区分特例
通所介護等では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和3年度改定時に「3%加算・規模区分の特例」等を実施した。
これは、感染症や災害を理由とする利用者数の減少が一定以上生じている場合に、基本報酬に3%の加算を行うか、より小さい事業所規模の報酬区分を適用する対応であり、対象となる感染症や災害が発生した場合には事務連絡により周知される取り扱いとなっている。
今後、国民生活に重大な影響を与える新たな感染症の発生や大規模な災害時等において、通所介護等ではどのような対応が考えられるかが論点となった。
≪論点④≫豪雪地帯等に対する通所介護等の取扱いの明確化
豪雪地帯等の通所系サービスの取り扱いにあたっては、「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」の対象となっているほか、地域医療介護総合確保基金において介護人材確保に向けた支援等を実施している。
令和4年の経営概況調査では、豪雪地帯とその他地域の通所系の送迎に係る支出(車輛費等)に関して、通所系サービスが高いという結果は得られていない。
こうした点を踏まえ、豪雪地帯等に対する通所介護等の取扱いについて、積雪等のやむを得ない事情の中でもサービス提供を行う観点から、どのような対応が考えられるかが論点となった。
対応案①のうち、入浴介助加算(Ⅰ)の研修要件の追加については、質の確保の観点から賛同する意見がある一方、研修を受ける職員のオーバーワークを懸念する声も挙げられた。
また、対応案④の豪雪地帯の取り扱いに関しては、その論点として挙げられた「送迎に係る支出(車輛費等)」の内容について、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之委員が確認。厚生労働省からはタイヤや燃料費等が含まれているとの返答を受けた。
これを踏まえ、日本慢性期医療協会の田中志子委員は、実際に負担になっているのは「雪かきのための施設内人件費や除雪業者への支払い」であるとして、改めて豪雪地帯に関する調査を要望した。
【2】療養通所介護では手厚い配置・要介護度の高い利用者割合のほか、地域での取り組みをさらに評価
続いて療養通所介護について、個別に論点・対応が示された。
療養通所介護は地域密着型通所介護の一区分であり、難病等を有する中重度者や末期の悪性腫瘍の利用者に対しサービスを提供する。
具体的な論点・対応は、①短期利用の評価、②重度者のケア体制の評価、③地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組の3つとなっている。
≪論点①≫短期利用の評価
療養通所介護の利用者には、脳血管疾患、神経難病等の常時対応が必要な疾患を有する医療ニーズの高い利用者が、他サービスより多い。
こうした利用者に対し、状態やニーズに合わせた柔軟なサービス提供を図る観点から、令和3年度改定により月単位の包括報酬となった。
一方、包括報酬となったことにより、登録者以外の利用者・新たに利用する際の判断が難しいとの声も挙がっている。いわゆるお試し利用ができず、利用に繋がらなくなるなどの影響だ。
こうした状況を踏まえ、必要に応じて利用しやすくなる方策が論点となった。
≪論点②≫重度者のケア体制の評価
療養通所介護はその利用者像により、要介護度の高い利用者の割合が多い。
具体的には、要介護5が6割、要介護4は2割、要介護3は1割となっており、平均要介護度は4.3、要介護度3以上の利用者が91.2%にも及ぶ。
こうした利用者像と、月当たりの包括報酬という特性を踏まえ、安定的に重度者へサービス提供するための体制構築が論点となった。
≪論点③≫地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組
療養通所介護は児童発達支援や放課後等デイサービス等の障害福祉サービスを併設している事業所が4割程度あり、併設する医療的なニーズの高い重症心身障害児・者が利用する生活介護等の管理者等は兼任することができることから、職員は兼務している割合が多い。
また、生活介護等と併設している場合は利用者1人あたりの職員数も多く、一体的かつ効率的に運用されている。
地域とのかかわりを見ていくと、地域ケア会議等への参加や住民の相談窓口等が実施されており、地域の多様な主体と適切に連携するための体制構築に取り組んでいる。
こうした状況を踏まえ、障害福祉サービス等報酬改定の状況を考慮しつつ、多少なサービスを包括的に提供し、地域包括ケアを構築する取組を推進する方策が論点となった。
なお、前回第228回の分科会では小規模多機能型介護などでも、同様の論点が示されている。
日本看護協会の田母神裕美委員は、こうした3つの対応案について、利用者ニーズの視点なども踏まえて賛成の意見を表明した。
その上で、療養通所介護における特定行為研修修了者等の専門看護師のかかわりについて言及。
褥瘡への看護やがん患者に対する疼痛緩和・脱水への対応などに「手順書の範囲で判断力を高めていくことが非常に有用であり、利用者の負担のかからないケアのあり方」であると訴えた。
【3】通所リハビリテーション、【4】短期入所生活介護、【5】短期入所療養介護における議論については、別の記事で紹介する。