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短期生活に看取りの加算を新設、短期療養・総合医学管理加算は要件を拡大へ――第229回介護給付費分科会(2023年10月26日)<その3>

10月26日に開催された第229回社会保障審議会介護給付費分科会において、通所サービスおよび短期入所サービスについて議論された。

具体的には、次の分類に基づき「論点」と「対応案」が示された。

【1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
【2】療養通所介護
【3】通所リハビリテーション
【4】短期入所生活介護
【5】短期入所療養介護

本記事ではショートステイに関する、【4】【5】の内容について掲載する(【1】-【3】は別の記事で紹介)。


【4】看取り加算の算定制限は1週間程度を想定か、長期利用の適正化の詳細は引き続き検討

短期入所生活介護に関しては、次の2つの論点・対応案が挙げられた。

①看取り対応を行った場合の評価
②長期利用の適正化

2つ目の長期利用に関しては、介護予防も含めた内容となっている。

≪論点①≫看取り対応を行った場合の評価

看取り期においてもできる限り在宅生活を継続できる体制づくりは重要であり、令和3年度改定より短期入所療養介護や居宅介護支援のほか、施設系・居住系サービスでは「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みを求めている。

一方、短期入所生活介護においても看取りにニーズがみられており、その対応割合は高まっている。

こうした背景より、サービスの目的を果たしながら看取りへ対応したことを評価する観点から、どのような対応が考えられるかが論点となった。

【対応案①:看取り対応を行った場合の評価
レスパイト機能を果たしつつ、看取り期の利用者に対してサービス提供を行った場合は、新たに看取り期における取組を評価することとしてはどうか。
新たに設立する加算は、看護職員の体制や看取り期における対応方針を作成していることを要件に評価してはどうか。また、相当期間以上のサービス利用が行われる場合は、算定に制限を設けることとしてはどうか。

なお、この対応案は、短期入所生活介護における看取りを推進する観点ではなく、あくまで実態として実施されている内容を評価するとの趣旨であることが、厚生労働省からは説明された。

≪論点②≫長期利用の適正化

短期入所生活介護では、自費での利用を挟んだ場合も含み連続して30日を超えて利用している場合には、30日を超えた日から1日につき30単位を減算している。

しかし、この減算の算定率は事業所ベースで72.1%となっており、多くの事業所で長期利用されている実態にある。

また、介護予防では30日を超える日以降は算定しないという規定はあるものの減算の適用はなく、こちらでも一定数の長期利用者が存在している。

こうした背景から、サービスの趣旨を踏まえ、目的に応じた利用を促す観点からどのような対応が考えられるかが論点となった。

【対応案②:長期利用の適正化
短期入所生活介護、介護予防短期入所生活介護における長期利用について、施設入所と同等の利用形態となっていることから、施設入所の報酬単位との均衡を図ることとしてはどうか。

看取りの評価に関する①については、全国健康保険協会の鳥潟美夏子委員が、新たな看取り評価に関する加算の算定を制限する「相当期間以上のサービス利用が行われる場合」に着目。この「相当期間」が具体的にどの程度の期間を想定しているか確認し、厚生労働省からは「たとえば1週間程度などが考えられる」との回答を受けた。

民間介護事業推進委員会の稲葉雅之委員はこの算定の制限について、日数などで機械的に処理せざるを得ない現状に理解を示しつつも、特養入所の待期期間や利用者・家族の状況など様々な事態が考えられることから、「柔軟性を持った運用」について希望した。

また、長期利用に関する②については、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員が対応案にある「施設入所の報酬単位との均衡を図る」の趣旨ついて確認。

厚生労働省からは詳細は今後の検討としたものの、あくまで長期利用の適正化であり、特養の単位数と並べていくといった考え方をとった場合は単独型・併設型などの調整も考えていく必要があるとの回答を受けた。

【5】総合医学管理加算は上限10日・予定の利用でも算定可能に、支給限度額との関係に懸念も

短期入所療養介護として挙げられた論点・対応案は次の1つであり、介護老人保健施設における、総合医学管理加算に関する内容となっている。

≪論点≫医療ニーズのある利用者の受入促進(総合医学管理加算)

高齢者は一般病棟に入院することにより、急性疾患や安静臥床等の影響によって、ADL等の生活機能や要介護度が悪化することが報告されている。

一方、介護老人保健施設では高齢者の特性を踏まえつつ治療が行われており、医療ニーズのある利用者の受入促進や在宅療養支援機能の推進を図るため、令和3年度改定により総合医学管理加算が創設された。

しかし、算定状況は月40-60件程度にとどまっている。

また、総合医学管理加算は利用が予定されていない場合を評価したものであるが、急性疾患への医療的処置を行った利用者のうち51.0%は予定されていた計画の利用者だった。

さらに、算定日数上限の7日を超えて治療を継続し、治癒した者も一定数いる。

こうしたことから、治療管理を目的とする短期利用に関し、施設における対応能力強化を図るためにどのような対応が考えられるかが論点となった。

【対応案:医療ニーズのある利用者の受入促進(総合医学管理加算)
医療ニーズのある利用者の受け入れを更に促進していくため、元々予定されていた短期入所において治療管理を行った場合についても評価することとしてはどうか。
算定日数は7日を限度としているが、必要な治療管理を評価する観点から、算定日数を10日に延長してはどうか。

この対応案について、日本慢性期医療協会の田中志子委員は歓迎を表明する一方、支給限度額との関係について指摘。総合医学管理加算は現在、区分支給限度基準額の算定対象外の加算としては設定されていことから、今回の見直しにより在宅のサービス提供に関して調整が必要なるケースが発生することを懸念した。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員、日本医師会の江澤和彦委員も同様の懸念を示し、総合医学管理加算を区分支給限度基準額の算定対象から除外する必要性を訴えた。

また、江澤委員は総合医学管理加算の算定が非常に低調であることに関し、地域における介護施設・医療機関の連携体制のなかで介護老人保健施設の医療提供等について共有していくことで、サービスの利用が高まることを期待した。


次回第230回介護給付費分科会は11月6日(月)。
午前中の開催を予定している。

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