【地域密着型】総合マネジメント加算は基本報酬へ、小多機では認知症ケアへの新たな評価を――第228回介護給付費分科会(2023年10月23日)
厚生労働省は10月23日、第228回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
令和6年度介護報酬改定に向けて、地域密着型サービスのうち訪問系サービスや(看護)小規模多機能型居宅介護、認知症グループホームについて議論した。
厚生労働省からは以下のサービスごとに、ここまでの議論等を踏まえた具体的な「論点」と「対応案」が示された。
今回示された対応案については、委員から大きな反対などは挙がらなかった。
今後、各委員から寄せられた意見を踏まえ、介護報酬改定に向けた検討が引き続き進められていく。
【1】「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の報酬設定に「夜間対応型訪問介護」の区分を新設
定期巡回・随時対応型訪問介護看護および夜間対応型訪問介護に関しては、3つの論点・対応案が示された。
具体的には、①定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の一体的な実施のほか、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関しては、②総合マネジメント体制強化加算の見直し、③随時対応サービスの集約化が挙げられた。
定期巡回・随時対応型訪問介護と夜間対応型訪問介護の利用者像が概ね同じであるなど機能・役割は共通しているものの、報酬体系とサービス提供時間帯は異なっている。
しかし、9割以上の夜間対応型訪問介護事業者が定期巡回・随時対応型訪問介護事業所も運営している状況となっている。
こうした状況を踏まえ、夜間対応型訪問介護の利用の実態等に配慮しつつ、将来的なサービスの統合を見据えてどのように考えるかが論点①とされた。
これに対し、夜間対応型訪問介護の多くの利用者が日中の支援も必要としている一方、定期訪問や随時対応がまったくない利用者も多いことを踏まえ、次のような対応案が示された。
将来的なサービスの統合を見据え、利用者・事業者への激変緩和を図る格好となった。
②については総合マネジメント体制強化加算の算定率が90%を超えること、③については複数の事業所間での連携を図った随時対応サービスについて都道府県を超えた連携を行っている場合の運用が明確になっていないことから、次のような対応案が示された。
なお、総合マネジメント体制強化加算については、後述する【2】小規模多機能型居宅介護、【3】看護小規模多機能型居宅介護でも算定率が9割を超えていることから、同様の基本サービス費への包括評価が対応案として挙げられている。
総合マネジメント体制強化加算の基本報酬への組み入れについては、民間介護事業推進委員会の稲葉雅之委員がこの加算が区分支給限度額の対象外であることに言及。区分支給限度額の在り方について、「上乗せの必要性も含め別途きちんと議論する場が必要」と指摘した。
【2】小多機では拠点づくりの取組も評価、認知症ケアの新たな評価には研修環境の整備の指摘
小規模多機能型居宅介護では、①認知症対応力の強化と②地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組という、2つの論点に対し、対応案が示された。
①については、認知症高齢者等への対応に対する評価である認知症加算の算定率は、事業所ベースでは(Ⅰ)92.3%(利用者ベースで39.5%)、(Ⅱ)70.5%(利用者ベースで9.3%)と高いものの、認知症の重度化等によりサービス利用を終了する利用者も一定数いる。
こうした状況を踏まえ、認知症対応力をさらに強化していく対応案が示された。
また、総合マネジメント体制強化加算の算定率が9割であることから、多くの事業所が、地域の多様な主体と適切に連携するための体制構築に取り組んでいる状況となっている。
こうした状況を踏まえ、小規模多機能型居宅介護事業所が、地域包括ケアシステムの担い手として開かれた拠点となり、多様なサービスを包括的に提供し、認知症対応を含む様々な機能の発揮を促進する観点などから、どのような対応が考えられるかを論点とした。
認知症ケアの取り組みを評価する対応案①については、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之委員が専門性をもって取り組む重要性に言及し後押しした。
一方、介護老人福祉施設における認知症専門ケア加算においても、希望しても専門的研修がなかなか受けられない現状であることを指摘。「配置基準の少ない小規模多機能型居宅介護ではさらに受講が困難である」と懸念を示し、研修を受講しやすい環境整備の必要性を訴えた。
【3】看多機では利用状況に合わせた報酬調整の導入か、経営に配慮し慎重を求める意見も
看護小規模多機能型居宅介護については、①柔軟なサービス提供のための報酬体系と、②地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組の2つの論点から対応案が示された。
看護小規模多機能型居宅介護は、サービスによって介護度別の利用頻度が異なる(「泊り」「通い」は介護度が高くなるほど多いが「訪問」は要介護度3がもっとも多い)。
また、登録定員には一定数の空きがあるものの、「利用料が高い」「通い、泊まり、訪問看護、訪問の全ては必要ない」等の理由から、新規利用に至っていないケースもある。
さらに多くの事業所は職員確保の困難により、計画にない泊まりや看取り期の利用ニーズ等への対応に課題を抱えている。
このような状況を踏まえ、利用者が状況に合わせてサービスを利用しやすくなるとともに、計画にないサービス提供にも安定して対応する体制を構築するには、どのような方策が考えられるかが①の論点となった。
②については、小規模多機能型居宅介護同様の総合マネジメント体制強化加算の算定率(91%)のほか、相談窓口の設置や人材育成のための研修等の実施を行っている事業所も一定するあることなどから、多様なサービスを包括的に提供し認知症対応を含む様々な機能の発揮を促進する観点から対応案が示された。
定額サービスである看護小規模多機能型居宅介護に調整の入る対応案①について、日本看護協会の田母神裕美委員は「慎重に考える必要がある」と指摘。最大29人という定員のなか、利用者の重度化・軽快により利用回数の増減があることが、経営努力で補うことが困難な状況もあるとして、理解を求めた。
一方、日本慢性期医療協会の田中志子委員は、通いが主体となっているような看護小規模多機能型居宅介護については、「療養通所介護との整合性や棲み分けをどうするのか」と指摘。将来的に統合する方向なども含め、検討することを求めた。
【4】認知症GHは医療連携体制加算の要件見直し、医療的ケア要件には見直しを求める声
認知症対応型共同生活介護(認知症対応型グループホーム)においては、①医療ニーズへの対応強化(医療連携体制加算)と②介護人材の有効活用(3ユニット2人夜勤)が論点として挙げられ、対応案が示された。
医療連携体制加算は(Ⅰ)を多くの事業所が算定している一方、(Ⅱ)(Ⅲ)の算定は低調であり、その理由として「看護職員を常勤換算で1名以上確保できない」「算定要件に該当する入居者がいない」などが挙げられている。
また、関係団体からは、常時要件該当者を確保することは困難であり、積極的に医療提供体制の整備を図る事業所に対してはその体制整備自体の評価を求める要望があった。
こうした状況を踏まえ、医療ニーズへの対応を強化していく観点から対応案が示された。
また、令和3年度改定においては一定条件下において3ユニットにおける夜勤2人以上配置に緩和できる(減算)ことになったが、効果検証・調査研究に係る調査では対象事業所が少なく、実態の検証を行うまでには至らなかった。
②では、こうした夜勤職員の例外的な配置について、どのように考えるかが論点となった。
医療連携体制加算に関する対応案①について、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は看護体制要件と医療的ケアが必要な者の受入要件を分けることについて賛成を表明。
その上で(Ⅱ)(Ⅲ)の医療的ケアの要件について、グループホームでは「想定できないような要件が数多く含まれている」と指摘した。
具体的には、人工呼吸器を使用している状態や中心静脈注射を実施している状態、人工腎臓を実施している状態など上げ、こうしたものは要件から除外し、例えば尿道カテーテルを使われている方への対応や糖尿病の方への血糖値管理、看取りへの対応などを医療的ケアの要件として、適切な報酬単価を決めるべきとの考えを示した。
日本医師会の江澤和彦委員も、対象者の見直しの必要性について言及。さらに、法改正を要することを前提に、認知症グループホームへの介護保険での訪問看護・訪問リハビリテーションの提供なども、今後は検討していく必要があるとの認識を示した。
次回第229回介護給付費分科会は、10月26日(木)午前中の開催を予定している。