通所リハ・大規模型の基本報酬はマネジメント体制等を考慮、予防の運動器機能向上加算は廃止へ――第229回介護給付費分科会(2023年10月26日)<その2>
厚生労働省は10月26日、第229回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
今回対象となったサービスは通所サービスと短期入所サービス。令和6年度介護報酬改定に向けた検討として具体的な「論点」と「対応案」が示された。
本記事では【3】の通所リハビリテーションについて掲載する。
【3-1】退院後のリハビリでは医療リハ計画の入手を、退院前カンファレンスの参加も評価
通所リハビリテーションに関して挙げられた論点・対応案は以下の6つ。
①リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進
②リハビリテーションの充実に向けた基本報酬の見直し
③介護予防通所リハビリテーションの質の向上に向けた評価
④リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組の推進
⑤運動器機能向上加算の見直し(介護予防)
⑥機能訓練事業所(障害サービス)の拡充
なお、厚生労働省は、通所介護などで挙げられた入浴介助加算(Ⅰ)への研修要件の追加などについては、職員配置などが異なっていることから通所リハビリテーションでは検討していない旨を説明した。
【参考】第229回介護給付費分科会記事<その1>
≪論点①≫リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進
退院後の通所リハビリテーションに関しては、利用開始までの期間が短いほど機能回復は大きい傾向があるが、実際には2週間以上かかっている利用者が一定数存在している。
また、連続的で質の高いリハビリテーションが重要であるが、医療保険における疾患別リハビリテーションの実施計画書を入手しているのは44%の利用者にとどまっている。
さらに、退院時共同指導を行った際の加算等の評価については、現状通所リハビリテーションには設定されていない。
こうした退院後のリハビリテーション移行の流れと課題のイメージは、次のとおり。
この状況を踏まえ、医療保険から介護保険へと移行する際に、早期に・連続的で・質の高いリハビリテーションを提供するための方策が論点となった。
≪論点②≫リハビリテーションの充実に向けた基本報酬の見直し
通所リハビリテーションの報酬体系は、通常規模型・大規模型(Ⅰ)・大規模型(Ⅱ)の「規模別」により分類され、そこから時間区分別の単位数が設定されることを基本としている。
これは、規模が大きくなるほど有利になる、いわゆるスケールメリットに着目した評価である。
しかし、大規模事業所であっても、体制を整え、個々の利用者ニーズに応じたリハビリテーションを行う施設においては、必ずしもスケールメリットが働かないとの指摘があった。
こうした背景から、リハビリテーションを充実させる観点から、基本報酬体系についてどのような方策が考えられるかが論点となった。
日本医師会の江澤和彦委員は、退院後の医療介護連携に関する対応案①について賛成を表明。リハビリテーション計画の共有については、診療報酬ですでにリハビリテーション計画提供料が設定されていることとあわせ、医療機関側にも周知するよう求めた。
また、退院後に介護保険のリハビリテーションを新規に利用する場合は、入院中にケアマネジャーと連携し計画策定を進めることが前提になることを指摘した。
全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は対応案②の大規模型報酬の見直しについて、大規模事業所ほど専門職を配置しており必ずしも経営効率がいいとは言えず、スケールメリットはリハビリテーションマネジメントが不十分・職員配置が薄い・軽度の利用者が多い事業所に働いているとして、「メリハリのついた見直し」を求めた。
【3-2】予防における質の向上はLIFE活用等で評価、障害サービスとの「共生型」も拡大か
≪論点③≫介護予防通所リハビリテーションの質の向上に向けた評価
介護予防通所リハビリテーションでは、令和3年改定により12月を超えた利用者に関し、要支援1では20単位、要支援2では40単位を減算する規定が新設された。
しかし、この減算の適用者は64%に達しており、長期利用により機能が維持できていることを評価するべきとの意見も挙げられている。
また、アウトカム評価である事業所評価加算については、「介護度の認定期間が長く、改善の結果が得られにくい」点が指摘され、算定率は9.8%と低い。
要支援認定の最長有効期間は、事業所評価加算新設当初(平成18年度)の12月から、現在は48月まで延長しており、現状に合致した評価となっていない可能性もある。
こうした背景から、適切なマネジメントのもと、機能維持・改善のための取り組みを行っている事業所を評価し、リハビリテーションの質を確保する方策が論点となった。
≪論点④≫リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組の推進
リハビリテーション・口腔・栄養の取り組みは一体となって運用されることで、より効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待されており、より質の高いサービスの提供が可能になったという報告もある。
この一体的な取り組みを更に推進していく観点から、どのような対応が考えられるかが論点となった。
≪論点⑤≫運動器機能向上加算の見直し(介護予防)
予防通所リハビリテーションにおける運動器機能向上加算は、理学療法士等を配置し月1回の身体機能評価を行うことを評価する加算であり、その算定率は89.7%となっている。
身体機能評価をさらに推進し、また報酬体系の簡素化を行う観点から、どのような方策が考えられるかが論点となった。
なお、選択的サービス複数実施加算については現在、運動器機能向上サービスのほか、栄養改善サービス・口腔機能向上サービスのうち2種類以上のサービス実施などが算定要件となっている。
≪論点⑥≫機能訓練事業所(障害サービス)の拡充
障害福祉サービスにおける「自立訓練(機能訓練)」の利用者・事業所は低位のまま推移しており、認知度の低さや医療専門職等の確保が困難である点などが、その理由として挙げられている。
また、介護保険の通所介護・小規模多機能型居宅介護事業所であれば、共生型自立訓練(機能訓練)・基準該当自立訓練(機能訓練)の提供が可能であるが、障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する支援ニーズに十分応えられていないとの指摘もある。
さらに現在、障害福祉サービス等報酬改定検討チームでは通所リハビリテーション事業所における共生型自立訓練(機能訓練)・基準該当自立訓練(機能訓練)の提供が検討されている。
こうした背景から、障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する自立訓練(機能訓練)のニーズに対応するため、どのような方策が考えられるかが論点となった。
介護予防通所リハビリテーションに関する長期利用の減算や事業所評価加算について挙がった対応案③について、日本経済団体連合会の酒向里枝委員が科学的介護推進体制加算との整理について質問した。
対応案③がLIFEへのデータ提出を推進する内容であることから、LIFEへの情報提供などを要件とした科学的介護推進体制加算との違いについて確認したものだ。厚生労働省は、そうした既存の加算との関係も含め、検討・協議することを求めた。
全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、通所リハビリテーション事業所で自立訓練の利用者を受け入れる対応案⑥に賛意を示した。
その上で、障害者の受け入れに当たり必要となる指定については、みなしで許可をするなど申請事務の負担軽減・簡略化を要望した。
10月26日の議論のうち、【1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護と【2】療養通所介護については、前出のとおり下記の記事を参照。
【4】短期入所生活介護、【5】短期入所療養介護における議論については、別の記事で紹介する。