介護保険法、公的DBでの仮名化情報活用に向け改正へ――第115回介護保険部会(2024年12月9日)
厚生労働省は12月9日、「第115回社会保障審議会介護保険部会」を開催した。
議題は「①医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について」と「②要介護認定の認定審査期間について」。
このほか、その他として「介護DXの先行実証について」および「「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間整理について」が報告された。
介護DBとは異なる新たな公的DBを設定―仮名化情報の利活用へ
「①医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について」では、二次利用を進めていくに当たっての今後の対応方針案が示された。
医療・介護関係のデータベース(公的DB)において匿名化した情報の利活用が進められてきた一方で、民間部門においては仮名加工医療情報の利活用を一定の枠組みで可能とすることが整備されている。
こうした背景を受け、公的DBでも仮名化情報の利活用を可能とし、臨床情報等のデータとの連携解析を可能とする対応方針が示された。
仮名化情報とは、氏名等の削除によりそれ単体では個人の識別ができないよう加工した情報を指す。
匿名化した情報とは異なり、特異な検査値や病名であっても情報の削除や改変を不要とする。
この仮名化情報の利用・提供を行うメリットとしては、同一対象群に関する追加データの取得・解析が可能となるほか、他の仮名化情報との連結解析が可能となるなどがある。
仮名化情報の利用・提供にあたっては、適切な審査を行うとともに遵守すべき保護措置等を規定。また、現行の介護DBとは別に、仮名化情報の利用・提供のための新たなDBを整備する。
他の公的DBの仮名化情報や認定作成事業者のDBの仮名加工医療情報、新たに構築する電子カルテ情報DB(仮称)の仮名化情報とも連結可能とする。
こうした見直しには介護保険法の改正が行われる見込みだ。
また、データベースの管理では個人情報保護法と同等の安全管理や不適正利用の禁止、職員の義務等の措置を講ずる。
利用に当たっては、「相当の公益性がある場合」であり「仮名化情報が必要と認められる場合」に限定して認めることとなっている。
なお、安全性を高めるため、クラウド環境において必要なデータのみを解析することを基本とし、記録媒体を介した提供については引き続きの検討となっている。
このほか、公的DB当の情報連携基盤の構築や、利用申請の受付・利用目的等の審査を一元的に行う体制の整備を進めていくことが示された。
仮名化情報を活用により、医療・介護・障害福祉政策に対するアウトリーチへ
仮名化情報の利用に関しては委員からは賛同する声が相次ぐ一方、個人情報保護の観点から安全性の担保を求める意見も多数挙げられた。
高齢社会をよくする女性の会の石田路子委員はデータ化される側の意見として、誕生日までの情報がなぜ必要になるのか質問。
特徴的な症状があり、生年月日まで特定しては仮名とはならないのではないか、との疑問からだ。
これに対し厚生労働省からは、すべての場合に生年月日まで示されるものではなく、あくまで研究内容に応じて必要な情報を提供するものであると回答。
たとえば子どもを対象とし、1日と30日とで生まれてからの日数の違いが重要となった場合、日にちまでの提供が必要になる場合があるとした。
日本医師会の江澤和彦委員は、データ利用の目的となる「相当の公益性」について言及。
情報提供によりどういった論文が投稿されたのかなどを確認するなど、研究の入り口ではなく出口までを含めたフォローアップの場が必要であるとの考えを示した。
早稲田大学の野口晴子部会長代理は、今後高齢者の単身世帯が増加していく中、NDBや介護DBといったデータは非常に限られており、家族情報や所得・資産の情報など、人的あるいは金銭的資源があるかという情報が欠けていると指摘。
仮名情報を活用することにより、医療・介護・障害福祉政策に対するアウトリーチに繋がるとして、その必要性について理解を求めた。
認定審査機関の短縮に向けて、目安期間の設定等へ
「②要介護認定の認定審査期間について」では、要介護認定に係る事務に要する日数の平均値が示された。
要介護認定は、介護保険法第27条11項において「当該申請のあった日から30日以内にしなければならない」と規定されている(特別な理由がある場合は延期が可能)。
しかし、令和4年度下半期においては要介護認定に要する日数の平均値は40.2日と大幅に延長している実態にある。
こうした実態を踏まえ、6月21日に閣議決定した規制改革実施計画では、「a」から「h」までとして要介護認定に関する規制改革と実施時期が示されていた。
今回はこのうち「a」と「b」に関して議論が行われた。
すなわち、全国・都道府県別・保険者別の平均認定審査期間の公表(令和6年度から令和9年度)と、要介護認定の調査及び審査の各段階についての各保険者が目指すべき目安となる期間の検討・設定(令和6年度措置)である。
全国・都道府県別・保険者別の平均認定審査期間の公表では、認定申請日から二次判定日までの期間等の一覧表を、厚生労働省ホームページに公表することとする。
認定審査期間と、そのうちの認定調査所要期間、主治医意見書所要期間の平均値を集計するイメージだ。
一方、認定審査機関の各段階における目安となる期間の検討では、認定審査期間の集計や参考資料を提示。
認定審査機関が30日以内となるような目安期間について検討するとともに、迅速化・効率化の取り組み例が示された。
また、認定期間の短縮に資する取り組みとして、過去の分科会で示された介護情報基盤整備や認定事務の電子化なども紹介された。
「30日を超えないことがミッション」長期化へ懸念
委員からは、法で定められた認定審査期間が長期化してしまっている現状に対し、懸念する声が多数寄せられた。
日本医師会の江澤和彦委員は、重要な指標は「利用者のうち30日を超えている方の割合」であると指摘。
30日を超えないことがミッションであるとして、30日を超えている利用者の%数値の公表を求めた。
また、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、平均認定審査期間の公表について言及。
認定調査所要期間・主治医意見書所要期間のほか、2つの情報が揃った後の行政の事務手続き期間についても目安を定めるべきだと訴えた。
日本慢性期医療協会の橋本康子委員は、主治医意見書の内容について意見を述べた。
主治医意見書の記載はADLや認知症の状態、食事の状態など項目が多数あることから時間を要するとし、20年間ほとんど変わっていない記載内容を見直すことも、今後の検討とすることを求めた。