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緊急時訪問看護加算の電話対応は看護師以外も可能に、訪問リハでの認知症リハは加算で評価――第230回介護給付費分科会(2023年11月6日)<その3>

厚生労働省は11月6日、第230回社会保障審議会介護給付費分科会を開催。

横断的事項である「介護人材の処遇改善等」「複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)」のほか、「訪問介護・訪問入浴介護」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」「居宅介護支援」の各サービスについて議論した。

本記事では、「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」について紹介する。


【訪問看護】退院時評価の情報共有にメール等を活用、他サービスの連携体制要件には加算での評価を求める声も

訪問看護では、「訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保」「円滑な在宅移行に向けた医療と介護の連携」「訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化」など、6つの論点を議論した。

「訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保」は、緊急時訪問看護加算の算定要件である電話対応体制に関するもの。

原則として事業所の看護師等が直接電話を受ける必要があるが、看護師等の負担が大きいことが指摘されていることなどから、これを看護師以外の職員が対応できるものとする対応案が示された。

ただし、緊急訪問の必要性の判断を看護師等が速やかに行えるよう、看護師への連絡体制など適切なサービス提供体制が確保されている必要がある。

また、24時間対応を確実に機能させる観点から、持続可能な体制に資する取組が行われている場合に評価をすることも提案された。

「円滑な在宅移行に向けた医療と介護の連携」では、退院当日の訪問看護や退院時共同指導が論点となった。

主治の医師が必要と認める場合は、退院当日の訪問看護(看護職員等)が算定可能なものの、医療的な対応が多く実施されている。

こうした状況を踏まえ、退院当日の訪問の評価を充実するとともに、退院時共同指導を効率的に実施する観点から、入院中の患者に対する指導内容を文書以外の方法で提供することを可能とすることが提案された。

この「文書以外の方法」については、全国健康保険協会の鳥潟美夏子委員が具体的なイメージを事務局に質問。運用はメールなどによるものを想定している旨を確認した。

利用者の病状や生活状況・家族に関する情報の共有等を論点とした「訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化」では、こうした連携に係る取り組みを訪問看護の提供体制要件とすることが対応案として示された。

これに対し日本看護協会の田母神裕美委員は、この要件が既存のサービス提供の要件に追加されることに懸念を表明。小規模な事業所が多い現状を考え、業務負担を考慮したものだ。

現在の看護・介護職員連携強化加算を例に挙げ、加算の拡充により評価することを求めた。

専門的ケアニーズに看取りの補助、専門性の高い看護師等を評価

訪問看護においては、このほか「専門的なケアのニーズが高い利用者への対応」「看取り体制の強化」「理学療法士等による訪問看護の評価」が論点として示された。

「専門的なケアのニーズが高い利用者への対応」は、介護保険においても、褥瘡の処置・人工肛門等の管理や終末期の緩和ケア等が実施されていることなどから、適切かつ質の高い看護の観点から示されたもの。

こうした点を踏まえ、専門性の高い看護師が計画的な管理を行うことに対する評価が提案された。

なお、専門性の高い看護師とは、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師または特定行為研修を修了した看護師としている。

「看取り体制の強化」では、診療報酬での評価を踏まえターミナルケア加算の単位数を見直すことが提案された。

また、離島等に居住する利用者に対して医師が行う死亡診断等を、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合を評価する対応案が示された。

なお、この遠隔死亡診断の補助や前述した「専門的なケアのニーズが高い利用者への対応」については、看護小規模多機能型居宅介護においても評価することが提案されている。

このほか、訪問看護の役割を踏まえたサービスを適切に評価する観点から、サービス提供体制や実績等を踏まえ「理学療法士等による訪問看護の評価」の差別化を行う案が示されている。

【訪問リハ】認知症リハの加算は随時提供に、みなしは介護医療院も拡大を――委員が指摘

訪問リハビリテーションで示された論点は7つ。

このうち、まず「認知症リハビリテーションの推進」「訪問リハビリテーション事業所のみなし指定」「地方分権」についてみていく。

「認知症リハビリテーションの推進」では、新たな加算の設定が提案された。認知症の利用者に対する生活機能改善のためのリハビリテーションを評価する。

介護老人保健施設や通所リハビリテーションでは認知症短期集中リハビリテーション実施加算が設けられているが、訪問による認知症リハビリテーションの効果に関する報告があることから示されたものだ。

これに対し、日本医師会の江澤和彦委員は訪問による認知症リハビリテーションは「必要時の随時サービスの位置づけが望ましい」と指摘。認知症の悪化は予測できない面があることなどから、通所リハビリテーションにおける短期集中の位置づけとは異なる設定を提案した。

「訪問リハビリテーション事業所のみなし指定」では、介護老人保健施設の開設許可があった場合に訪問リハビリテーションの事業所の指定もあったものとみなす、特例を設定する。

現在、介護保険法においては短期入所療養介護が、介護保険法施行規則においては通所リハビリテーションがみなし指定の特例として規定されており、これを拡大する案となっている。

これに関しては、「地方分権」の論点も関連している。

令和4年地方分権改革に関する提案募集において、指定基準における医師の必置や開設場所等の指定基準の制限を撤廃する基準緩和が提案されたことに対し、介護老人保健施設等において実施される訪問リハビリテーションについて、医師の人員基準を本体施設と同様の基準に見直した上で、みなし指定を可能とすることで訪問リハビリテーション事業所の拡大を図る案となっている。

こうしたみなし指定について、日本慢性期医療協会の田中志子委員は「大変歓迎されること」と賛意を示し、同時に介護医療院への同様のみなし指定適用を求めた。

通所リハ同様の医療介護連携推進・予防でのLIFE活用などを提案

訪問リハビリテーションでは、このほか「リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進」「介護予防訪問リハビリテーションの質の向上に向けた評価」「リハビテーション計画の作成に係る診療未実施減算」「訪問リハビテーションと介護予防訪問リハビテーションの評価適正化」が論点となった。

「リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進」と「介護予防訪問リハビリテーションの質の向上に向けた評価」については、第229回介護給付費分科会(10月26日)に示された通所リハビリテーションの論点と同趣旨のものとなっている(それぞれ通所リハビリテーションの論点①③)。

「リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進」では、ケアプラン作成に際し意見を求める「主治の医師等」に入院先の医療機関の医師を含むことを明確化するとともに、退院時情報連携の促進等を目的として、(1)医療機関のリハビリテーション計画の入手を基本報酬の算定要件に加える、(2)事業所の理学療法士等が退院前カンファレンスに参加し退院時共同指導を行った場合の加算を新設することなどが挙げられた。

「介護予防訪問リハビリテーションの質の向上に向けた評価」では、長期利用者への評価や事業所評価加算に関して、LIFEへのデータ提出を推進する提案となっている。

「リハビテーション計画の作成に係る診療未実施減算」は、事業所の医師がやむを得ず診療を行わない場合に必要となる、事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」の猶予期間に関するもの。

これについて、事業所において研修の受講の有無が確認できていないこと、医師の研修の受講が進んでいないことなどから、研修修了の確認を事業所に求めるとともに、現在令和6年3月31日までとされる猶予期間を3年間延長する(令和9年3月31日まで)対応案が示された。

「訪問リハビテーションと介護予防訪問リハビテーションの評価適正化」は、現在要介護者・要支援者おちらに対する訪問リハビリテーションも基本報酬は同額に設定されていることから、より適切な評価を行う観点から、基本報酬に一定の差をつけることが提案された。

【居宅療養管理指導】オンライン服薬指導等を医療と同様に評価を、管理栄養士の上限回数は拡大へ

居宅療養管理指導については、服薬指導等に関する「薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価」「在宅患者への薬学的管理及び指導の評価」、管理栄養士が行う場合に関する「薬局に勤務する管理栄養士による居宅療養管理指導の評価」「居宅療養管理指導 (管理栄養士)の見直し」、管理栄養士・歯科衛生士等が行う場合に関する「管理栄養士及び歯科衛生士等の居宅療養管理指導の算定対象の見直し」の5つの論点が示された。

「薬剤師による情報通信機器を用いた服薬指導の評価」は、オンライン服薬指導に係る薬機法施行規則改正やそれに伴う診療報酬改定などを踏まえたもの。

薬剤師による情報通信機器を用いた居宅療養管理指導について、(1)初回も含めて算定可能にすること、(2)薬局以外の場所で行う場合も算定可能とすること、(3)居宅療養管理指導の上限である月4回まで算定可能とすることなどの見直しが提案された。

「在宅患者への薬学的管理及び指導の評価」も令和4年度の診療報酬改定を踏まえたものであり、在宅での医療用麻薬持続注射療法や在宅中心静脈栄養法を行っている患者に対する薬学的管理・指導に対し、診療報酬と同様の評価を行う対応案が示された。

これに対し、日本薬剤師会の荻野構一委員は介護報酬においても医療と同様の評価を設けることに賛成する一方、末期の悪性腫瘍以外で医療用麻薬を使用する利用者に関しても「何かしらの対応をするべき」と指摘した。

「薬局に勤務する管理栄養士による居宅療養管理指導の評価」は、居宅療養管理指導費(Ⅱ)として連携により確保する管理栄養士に、薬局勤務の管理栄養士を加えることを論点としたもの。

これについては、実態調査の結果等を踏まえて現行の基準の維持(加えない)ことが対応案として示された。

「居宅療養管理指導 (管理栄養士)の見直し」は、現在月2回までとされている管理栄養士による居宅療養管理指導について、医師が一時的に頻回な介入が必要と判断した場合は、期間を設定した上で上限回数を緩和する案が示された。

終末期においてはきめ細やかな食支援が求められることなどから、見直しが提案されたものだ。

日本歯科医師会の野村圭介委員は「こちらは歯科についても同様」と言及。終末期等の支援などでは週1回では対応できないとし、歯科衛生士による居宅療養管理指導(現行月4回限度)についても見直しを訴えた。

「管理栄養士及び歯科衛生士等の居宅療養管理指導の算定対象の見直し」では、算定対象となる利用者の範囲が論点となった。

医師・歯科医師・薬剤師が行う場合は「通院が困難な利用者」を対象としているのに対し、管理栄養士・歯科衛生士等が行う場合は「通院又は通所が困難な利用者」が対象となっている。

これについて、管理栄養士・歯科衛生士等についても、通所が可能な利用者も対象となるよう見直す案が示された。


同日議論された横断的事項やその他の各サービスに関する内容は、別の記事で紹介している。

次回第231回介護給付費分科会は、11月16日(木)09:30-12:00に開催する。

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