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電子カルテ共有情報サービスや標準型電カルの進捗を議論―医療部会(2024年7月12日)

社会保障審議会医療部会は7月12日、政府が推進する医療DXにおける電子カルテ情報共有サービスの進捗などをめぐり議論を行った。同サービスで医療機関や患者が閲覧できる3文書6情報の保存期間などで疑義が出され、2次利用での取扱いを含め引き続きの検討事項となった。標準型電子カルテは無床診療所向けのα版の開発が始まったが、中小病院・無床診療所向けはまだ検討事項にとどまっている。

政府の医療DXの推進については、「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、全国医療情報プラットフォームを構築するほか、「電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHRの整備・普及を強力に進める」との方針が示されている。また、「医療情報の二次利用」「支払基金の抜本改組」についても、今後、具体的な方向性や全体像を検討する予定だ。

電子カルテ情報共有サービスでは、FHIR対応により標準化された電子カルテ情報が、本人はマイナポータルを通じて、医療機関などはオンライン資格確認を通じて閲覧できるようになる。文書情報(健康診断結果報告書・診療情報提供書・退院時サマリー)による6情報(傷病名、薬剤アレルギー等、 その他アレルギー等、感染症、検査、処方)が対象で、本格稼働は2025年度中となっている。

標準型電子カルテα版の開発がスタート

標準型電子カルテについては、現在、電子カルテを導入していない医科の無床診療所を想定したα版の開発が2024年4月に始まった。デジタル庁をプロダクトオーナーとするプロダクトチームが、医療機関システムの変革に意欲的な民間ベンダーを巻き込み、合意形成を作りながら進めるとしており、電子カルテ設計・開発をFIXER社(東京都港区)が請け負った。

標準型電子カルテはクラウド上に配置され、全国医療情報プラットフォームのシステム群や民間事業者が提供するシステム群と接続する。一方、民間事業者が提供するサービスは数多く存在するため、接続(API連携機能)の実装にあたっては複数の論点があり、「検討中」となっている。例えば、全国医療情報プラットフォームと公的システムの接続では、オンライン資格確認システム、電子処方箋管理サービス、標準型レセプトコンピュータ(共通算定モジュール)、電子カルテ情報共有サービスのシステム群がある。そのオプションとして、民間事業者が提供する部門システムや院外システム(外注検査センターなど)のシステム群が考えられる。

中小病院・有床診療所の標準型電子カルテ導入は「2026年度以降の検討」

α版は2025年3月からモデル事業を開始。モデル事業の知見を踏まえ、2026年度以降に本格版の開発に着手する。ただ、α版の対象はあくまで無床診療所であり、中小病院・有床診療所の標準型電子カルテ導入は「2026年度以降の検討」との文言にとどまっている。すでに電子カルテを導入している医療機関は、既存の電子カルテとこれらのシステム群を接続する更改を行う必要がある。厚労省は今年度中にベンダーへの技術解説書や医療機関への医療情報化支援基金(150億円)申込に関する情報を発信する予定と説明した。医療機関のシステム更改(5~7年周期)が、大型連休(1月、5月)に集中するケースが多いことを踏まえ、2025年1月頃の電子カルテ情報共有サービスのモデル事業に向けた取組みを皮切りに、対応医療機関の増加を目指す。

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