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電子処方箋管理サービスで院内処方情報が登録可能に 令和7年1月以降予定――利活用検討会(2024年9月12日)

厚労省は9月12日、「健康・医療・介護情報利活用検討会」(利活用検討会)を開催し、4つのワーキンググループ(WG)から報告を受けた。電子処方箋の導入状況については、薬局を中心に利用率が伸びている。厚労省所管の公的病院においては、7割が令和6年度中に電子処方箋を導入する。また、都道府県による導入助成については、実施する都道府県が増加中だ。さらに利便性の向上に関しては、院内処方分の薬剤情報を登録できるよう作業中であり、令和7年1月以降の運用検証後に利用可能になる見込みだ。

利活用検討会のWGは「医療等情報利活用WG」「医療等情報の二次利用に関するWG」「電子処方箋等検討WG」「介護情報利活用WG」の4つ。

電子処方箋等検討WGからは、9月1日時点の電子処方箋運用開始施設数が全体で30,609施設数(オンライン資格確認システム導入施設数との割合で14.58%)となったことが報告された。内訳は、病院153(同1.92%)、医科診療所3,645(同4.47%)、歯科診療所150(同0.25%)、薬局26,661(同44.55%)となっている。

年度内にほぼすべての薬局に導入見込み

前日の9月11日に開催された電子処方箋推進会議では、店舗数が多い薬局ほど電子処方箋の導入率が高く、店舗数が少ない薬局でも3分の1以上が運用を開始しており、仮にこのままの導入実績が継続すると、年度内にはほとんどの薬局への電子処方箋導入が見込まれるとしている。

また、電子処方箋システムを導入した薬局では、紙の処方箋分を含め調剤結果情報の電子処方箋管理サービスへの登録が進んでおり、仮にこの加速ペースが継続すると、年度末には、患者の服薬情報のほとんどが電子処方箋管理サービスに登録される状況となることが期待されるとしている。
なお、調剤基本料の医療DX推進体制整備加算の要件として、「調剤後速やかに調剤結果を電子処方箋管理サービスに登録すること」が求められている。

JCHOなど厚労省所管病院の7割が今年度中に導入予定

そのほか、利活用検討会での電子処方箋等検討WGからの報告によると、❶公的病院への導入要請、❷電子処方箋導入補助の拡充、❸診療報酬上の対応――を軸とした様々な導入促進策を講じることで、引き続き、電子処方箋の早期の普及を目指していくとしている。

❶の「公的病院への導入要請」については、9月11日の電子処方箋推進会議で、公的病院等の今後の対応状況が示された。JCHO(地域医療機能推進機構)・NHO(国立病院機構)・日本赤十字社などの厚生労働省所管病院で7割が、国立大学病院など他省庁所管病院で4割が、令和6年度中に導入予定となっている。

導入予定の公的病院等は741施設に上っている(一覧PDF

都道府県助成は和歌山県が追加され19都府県に  今後さらに拡大予定

❷の「電子処方箋導入補助の拡充」については、令和5年12月以降、①「リフィル処方箋」、「口頭同意による重複投薬等チェック結果閲覧」、「マイナンバーカードによる電子署名対応」、「処方箋ID検索」の追加機能への補助(補助上限の引上げ)や、②都道府県による追加導入費用の助成(補助率の引上げ)が実施されている。

②の都道府県助成(医療提供体制推進事業費補助金)の実施自治体については、8月9日にデジタル庁と共同開催した「マイナ保険証利用促進セミナー」のときから、和歌山県が追加され、計19都府県が実施を決定。さらに今後、宮城県、栃木県、石川県、滋賀県、奈良県、岡山県等が実施を積極的に検討していることが、9月11日の電子処方箋推進会議で報告された。

医療DX推進体制整備加算、10月からはマイナ保険証の利用率に応じてさらに増点

❸の「診療報酬上の対応」としては、令和6年度診療報酬改定において、マイナ保険証や電子処方箋などの「医療DX推進体制」を評価する医療DX推進体制整備加算を新設した(医科8点、歯科6点、調剤4点)。10月からはマイナ保険証の利用率に応じてさらに増点される。なお、同加算の要件として、電子処方箋を令和7年3月31日までに運用開始することが求められている。

医療DX推進体制整備加算
加算の要件の一つ、マイナ保険証利用率

令和7年1月以降、院内処方情報の登録も可能に

9月12日の利活用検討会における電子処方箋等検討WGの報告によれば、院内処方対応に関しては、令和6年6月末に技術解説書を公開し、現在も検討を進めている。さらに、重複投薬のチェック機能の向上、オンライン資格確認の対象範囲拡大(医療扶助等)、服薬情報提供書(トレーシングレポート)など、「薬局起点の情報の共有・標準化」に向けた検討が進行中だ。

院内処方情報の登録に関しては、令和7年1月の運用検証を経て、運用が開始される予定。その時点から、他の医療機関や薬局において、院内処方の薬剤情報閲覧や重複投薬等チェックを活用できるようになる。

なお、電子処方箋管理サービスに登録する情報は、入院・外来・退院患者に対する院内処方で、院内処方における処方を行った情報、調剤を行った情報、投薬を行った情報を含むとしている(院内処方等情報)。

また、他医療機関での入院患者に対する院内処方については、入院期間中に服用までが完了していることから、重複投薬等チェックの対象データとしては含まれない。ただし、過去の薬剤情報等を閲覧する際には、入院中に登録されたデータについても閲覧対象に含まれ、外来患者に対する院内処方、退院患者に対する院内処方については、重複投薬等チェックの対象データに含まれる。

トレーシングレポート等の薬局起点情報についても検討を進める

薬局では、処方箋に基づき薬剤師が調剤した薬剤に係る情報のほか、患者への服薬指導に係る情報が、郵送やFAX等で文書として共有されている。このような薬局から他医療機関・薬局・介護施設等へ共有される情報は、服薬情報提供書(トレーシングレポート)等と呼ばれ、医療保険上においても薬局から医療機関への情報が要件に組み入れられている。
電子処方箋管理サービスにおいては、調剤結果登録時に、電子処方箋のコメント欄に医師へのコメントを記載し、伝達できる機能がある。ただし、あくまでコメントを記載する機能であり、情報伝達のタイミングが電子処方箋の発行時や調剤結果登録時に限られている。そこで、今後も薬局から医療機関等への電子的な情報共有について、電子処方箋WGにおいて検討を行うこととしている。
情報共有される文書の例としては、病院・診療所に対するものとして、①外来がん化学療法患者に関する情報提供文書、②喘息やCOPD患者の吸入薬指導に関する情報提供文書、③在宅患者の居宅療養管理指導報告書が挙げられている。他の薬局に対するものとしては、かかりつけ患者に関する情報提供文書を挙げている。

また、①レセプトの薬剤情報や電子処方箋の情報について、情報共有に係る検討が必要となってきているが、レセコンと電子薬歴について異なるシステム事業者のものを採用している場合には、両システム間で十分な情報共有が行われていないこと、②レセコンと電子薬歴の連携を図られるよう、厚生労働省とJAHIS(一般社団法人保険医療福祉情報システム工業会)で調整が行われ、JAHISにて令和5年9月に「電子薬歴→レセコン」の情報連携の方法が策定されたこと、③さらに「レセコン→電子薬歴」の情報連携方法についても令和6年10月に公開が予定されていることが報告された(9月11日電子処方箋推進会議)。

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