インパクト投資を行うための取り組みについて検討へ――第23回資金運用部会
厚生労働省の社会保障審議会資金運用部会(部会長=神作裕之・学習院大学法学部教授)は11月25日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の次期運用目標や次期中期目標について議論を進めるため、①スチュワードシップ責任を果たすための活動及びESGやインパクトを考慮した投資②オルタナティブ投資――の方向性について検討した。
GPIFでは、「責任ある機関投資家」として「スチュワードシップ責任」を果たすための諸原則である「日本版スチュワードシップコード」を受け入れた2014年以降、スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデルの「エンゲージメント強化型パッシブ」を採用。また、投資家から企業への資金の流れが、長期的な企業価値向上につながり、さらにその利益が最終的に家計まで還元される「インベストメントチェーン」を強化するため、海外の公的年金や経済団体などとの意見交換を行う等、取組を進めてきた。さらに、ESG「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」を考慮した投資を推進した。
こうした取組の開始から期間が経過し、データも蓄積されていることを踏まえてGPIFはスチュワードシップ活動やESGを考慮した投資の効果測定を2023年度と2024年度に実施。GPIFの運用委託先のエンゲージメントによって、対話先企業の企業価値評価指標や脱炭素目標の設定・独立社外取締役人数といった非財務の指標が改善していることを確認した。また、GPIFの運用委託先と投資先企業との対話は、投資先の企業価値向上に加え、脱炭素への取組やダイバーシティ向上など持続可能性向上にも貢献している可能性が高いことが示された。
これらを踏まえ、厚生労働省はスチュワードシップ活動とESGを考慮した投資について引き続き取り組んでいくことを提案した。また、今年GPIFがアセットオーナー・プリンシプルの受け入れに伴って策定した取組方針に従い、インベストメントチェーンを構成するさまざまな主体との継続的な対話の実施等、スチュワードシップ活動を深化させるための取組を推進していくことも示した。ESGを考慮した投資については、引き続き定量的な効果検証を進め、その結果を取組の改善等につなげていくことを提示した。
脱炭素や少子高齢化等の課題に取り組む企業に投資することで社会的・環境的なインパクトを生み出す「インパクト投資」については、年金積立金が「もっぱら被保険者の利益のため」に運用しなければならないという原則を守りつつ、対象資産や投資手法等について具体的な検討を進めることやインパクト投資のための取組に関する継続的な検証を行うことが提案された。
これらの提案に委員からは、効果検証や国民に対する説明責任の重要性について指摘する意見が出されたが、おおむね賛同する意見が多かった。
オルタナティブ投資に関しては、投資機会へのアクセスを広げるため、匿名組合(TK)を通じた投資を新たに認めることなどが提案された。委員からは、リスク管理体制の強化や投資家保護の観点から、一定の要件を設けることの重要性を指摘する意見があった。