所得420万円以上は保険料乗率増へ、2割負担の範囲見直しは2026年度までに結論――第110回介護保険部会(2023年12月22日)
厚生労働省は12月22日、第110回社会保障審議会介護保険部会を開催。
給付と負担に関する内容や今後の介護保険法施行規則改正等について、報告が行われた。
保険料設定の多段階化、乗率0.285~2.4の13段階に
給付と負担に関しては、「1号保険料負担のあり方」と「一定以上所得の判断基準」について報告が行われた。
「1号保険料負担のあり方」は、介護保険制度の持続可能性を確保する観点から、1号被保険者間での所得再配分機能を強化するもの。
国の定める標準段階を9段階から13段階へと多段階化し、高所得者の標準乗率の引き上げ・低所得者の標準乗率の引き下げ等を実施し、これにより低所得者の負担軽減に活用されていた公費の一部を、介護従事者の処遇改善等の介護報酬改定財源にあてる。
11月6日の第108回部会では、この見直しについて部会長に一任する流れとなっていた。
今回の部会では、見直し後の最終乗率や第10段階以降の基準所得金額などが示された。
世帯全員が市町村民税非課税となる第1段階から第3段階までの標準乗率は、それぞれ0.455・0.685・0.69。
これに公費による低所得者負担軽減が行われることで、最終の乗率は0.285・0.485・0.685まで引き下げられる。
一方、新たに設定される第10段階から第13段階までの基準所得金額については、第9段階の所得金額(320万円以上)から各100万円ずつ繰り上がり、420万円以上(第10段階)・520万円以上(第11段階)・620万円以上(第12段階)・720万円以上(第13段階)。
その標準乗率は、それぞれ1.9・2.1・2.3・2.4と設定された。
資料によると、多段階化により第10段階以上となる対象者は、およそ145万人と見込まれている。
なお、別に示された事務連絡によると、改正に必要な政省令は令和6年1月中旬の公布を予定しており、これにより令和6年4月以降は、各市町村において必ず13段階以上の保険料段階を設定することが必要となる。
自己負担割合の検討は先送りに、資産の反映やきめ細かな割合も検討へ
「一定以上所得の判断基準」は、自己負担が2割となる対象者の範囲を検討するもの。
12月7日に行われた第109回部会では「介護報酬改定での対応と合わせて、予算編成過程で検討」するとし、結論は大臣折衝の場へと移されていた。
これについて大臣折衝では、「引き続き早急に」「改めて総合的かつ多角的に検討を行い、第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度~)の前まで、結論を得る」こととなった。
2割負担の範囲の見直しは、先送りとなった形だ。
検討にあたっては、介護サービスは医療サービスと利用実態が異なることなどに配慮し、以下の案を軸に行う。
直近の被保険者の所得等に応じた分布を踏まえ、一定の負担上限額を設けずとも、負担増に対応できる所得を有する利用者に限って、2割負担の対象とする
当分の間、一定の負担上限額を設けた上で、1.よりも広い範囲の利用者を2割負担の対象とする。その上でサービス利用等への影響を分析の上、負担上限額の在り方について、2028年度までに必要な見直しの検討を行う
なお、検討にあたっては、金融資産の保有状況等の反映の在り方や、きめ細かい負担割合のあり方(1割から2割の間の自己負担割合設定など)とあわせて行うこととしている。
包括支援センターの3職種配置を柔軟化、継続利用はサービスAへ対象拡大
このほか、介護保険制度の見直しに関しては、「地域包括支援センターにおける柔軟な職員配置」と「継続利用要介護者の利用可能サービスの弾力化」について、改正案が示された。
「地域包括支援センターにおける柔軟な職員配置」では、①保健師、②社会福祉士、③主任介護支援専門員の3職種(①~③に準ずる者を含む)について、複数圏域の高齢者数を合算した上で、地域の実情に応じた配置を可能とする。
情報共有や相互支援を行いつつ複数圏域で必要な人員を満たしていれば、一部の圏域でおいて3職種の確保が困難であっても柔軟な配置が可能となる。
また、「主任介護支援専門員に準ずる者」については通知を見直し、将来的に主任介護支援専門員を目指す、従事期間5年以上の介護支援専門員を対象とする。
このほか、介護給付を受ける前から継続的に総合事業を利用している要介護者(継続利用要介護者)が、利用可能なサービスの範囲を拡大する。
これまで、住民主体サービスである訪問型・通所型のサービスBおよび訪問型サービスDに限られていたが、訪問型・通所型サービスA(緩和された基準によるサービス)の利用も可能となる見込みとなっている。