見出し画像

保険料負担軽減の公費を処遇改善に、自己負担割合の判断基準には資産勘案の意見も――第108回介護保険部会(2023年11月6日)

11月6日、厚生労働省は第108回社会保障審議会介護保険部会を開催。

「経済財政運営と改革の基本方針2023」にて、年末までに結論を得ることとしていた「一定以上所得の判断基準」と「1号保険料負担の在り方」について議論した。

「一定以上所得の判断基準」については議論を継続し、「1号保険料負担の在り方」については、厚生労働省が提示した案および各委員の意見を踏まえ、菊池馨実部会長に一任されることとなった。


介護費自己負担額は年額16.2万円、割合増を危惧する一方で貯蓄勘案の意見も

利用者負担が2割となる「一定以上所得者」の判断基準については、被保険者のおよそ上位20%が該当している。一方、医療保険での2割負担は2022年10月より被保険者の上位30%に設定されているなどの差異がある。

しかし、医療・介護のサービス利用状況を見ていくと、介護の場合は特定の利用者が継続して利用しており、その自己負担額も利用者年額16.2万円と、医療に比べて高額となっている。

こうした背景などをもとに、判断基準に関しての議論が行われた。

委員からは、介護が継続的な支出となることなどから、一定以上所得の基準を広げ2割負担となった場合の経済的影響を危惧する意見などが挙げられた。

一方で、現在は所得により分けられている自己負担割合に関し、貯蓄も勘案するべきとの意見も多数挙げられた。

高齢者の収入は低いものの、現役世代と比べると貯蓄は多い傾向があるなどの考えからだ。

なお厚生労働省は、資産に関する資料への質問に回答するなかで、事務局としては現在資産を考慮した検討を議論の焦点とはしていないとの考えを示す一幕もあった。

保険料軽減の公費を処遇改善に、第1号保険料の見直しについて方向性案が示される

続けて、「1号保険料負担の在り方」に関する議論が行われた。

第1号被保険者の保険料は保険者ごとに設定されるが、低所得者等に配慮し標準である9段階が、市町村民税の課税状況等に応じて設定されている。

これについては介護保険部会の意見等を踏まえ、7月31日の全国介護保険担当課長会議では現段階で考えられる見直しのイメージなどが示されていた。

※なお、一部メディアでは上記資料に示された合計所得の設定等が厚生労働省案であるとして報道されたものの、あくまでイメージであり事実誤認であるとの説明が行われた。

標準段階の多段階化による高所得者の標準乗率引き上げ・低所得者の標準乗率引き下げに加え、低所得者軽減に充当される公費と保険料の役割分担などを踏まえ、見直しの方向性案が示された。

第10段階以上の標準段階・乗率設定を行うとともに、その増収分を充当することで、低所得者に係る乗率設定については最終乗率をさらに引き下げる。

加えて、低所得者軽減に活用されている公費の一部を、介護職員の処遇改善など「社会保障の充実」に充てる考えだ。

この案に関しては賛同の意見が挙がり、部会長に一任。事務局と調整をしていく流れとなった。

なお介護保険制度の財源については、今後保険料が増大した場合などに公費の投入割合を増やす必要性についても、複数の委員から指摘された。

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。