電子カルテ情報共有サービスで共有される「電子カルテ情報」の二次利用を可能に 仮名化情報の利活用も(2024年9月12日)
厚労省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」は9月12日、4つのワーキンググループ(WG)から報告を受けた。医療情報の二次利用推進に関しては、電子カルテ情報データベースの構築が提案され、リモートアクセスやデータ利用申請の一元化が目指されている。また、介護情報基盤は令和8年度以降に稼働予定で、多職種連携を強化するためのデータ共有が図られる。今後の課題として、医療と介護間の情報連携や情報セキュリティの確保が挙げられている。
「医療等情報等の二次利用の推進」に関しては、8月30日に開催された厚労省の社保審・医療保険部会において、「電子カルテ情報データベース(仮称)」の構築等が掲げられた(下図「2.」)。
また、同日に公表された厚労省の令和7年度の概算要求では、データベース構築に向けた調査設計が盛り込まれている(下図)。
9月12日の利活用検討会では、「医療等情報の二次利用に関するWG」から、「医療等情報の二次利用の推進に向けた対応方針について(案)」が示され、❶現在構築中である「電子カルテ情報共有サービス」で共有される電子カルテ情報について、二次利用を可能とし、その際、匿名化・仮名化情報の利活用を可能とする、❷公的DBについても、仮名化情報の利活用を可能とし、臨床情報等のデータとの連結解析を可能とする、❸公的DB等に研究者・企業等がリモートアクセスし、一元的かつ安全に利用・解析を行うことができるVisiting環境(クラウド)の情報連携基盤を構築する、❹公的DB等の利用申請の受付、利用目的等の審査を一元的に行う体制を整備する――ことが示された。
また、EUのEuropean Health Data Space(EHDS)法案等の仕組みも参考に、医療・介護関係のデータベース(DB)について、①仮名化情報の提供を可能とするとともに、②利用申請の一元的な受付、③二次利用可能な各種DBを可視化した上で、研究者や企業等がリモートアクセスして、各種DBのデータを安全かつ効率的に利用・解析できるクラウドの情報連携基盤を整備する方向で検討中としている。
なお、令和6年5月15日には、「医療等情報の二次利用に関するWG」において「これまでの議論の整理」 がとりまとめられている。「概要版」 も公表されており、「今後の検討」として、「個人情報保護法の見直しの議論や改正次世代医療基盤法の施行状況、諸外国の動向等を踏まえ、医療等情報の二次利用の推進に向けたさらなる法整備の必要性やそのあり方についても検討を継続していくことが重要である」としている。
介護情報基盤の稼働は令和8年度以降 介護情報利活用WG
医療DXの推進に関する工程表では、公費負担医療、地方単独医療費助成、予防接種、母子保健情報、自治体検診、感染症届出とともに、「介護」についても事業の手続きに必要な情報連携を、令和8年度以降全国的に運用する予定となっている。
介護情報の連携として、概念上の全国医療情報プラットフォームに、「介護情報基盤等」を構築し、介護事業所におけるデータ共有による多職種の連携強化や、利用者状態の適切な理解と利用者状態に適したサービス利用の実現を図る。
介護情報基盤による情報共有の範囲(介護分野)としては、以下のものが想定されている。
なお、令和6年3月29日には、「介護情報利活用WG」において「中間とりまとめ」 が行われた。「概要版」 も公表されており、「今後の検討課題」として、①医療・介護間で連携する情報の内容について、医療機関、介護事業所および市町村等のニーズの観点や、情報連携に必要な技術的な課題について整理を行うべき、②介護情報基盤で用いるネットワークの方式について、介護事業所における導入負担を考慮し、またクラウド技術に適用できるようなネットワークの方式について、医療情報の共有に係るネットワークの検討を踏まえるべき、③介護事業所において情報セキュリティを担保する方策について、介護情報基盤を活用する介護事業所において、情報セキュリティの担保ができるような手引きの作成等を検討するべき――などを挙げている。