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「介護離職ゼロ」を目指す在宅支援サービスについて議論(7月8日)part2

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は7月8日、令和3年度の介護報酬改定に向けて6サービスについて議論を深めた。そのうち5サービスは「介護離職ゼロ」を目指すうえで重点的に整備を目指す方針が示されている。

part2では、小規模多機能型居宅介護(小多機)と看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に関する主な課題や論点について紹介する。

Part1はこちら » 同一建物減算は「移動時間」に着目した検討を

小多機については、地方からの提案で過疎地域等での定員登録を超過した場合の減算を一定期間は行わないことなどが検討された。看多機については、訪問入浴の併用を可能とすることなどを求める意見が出された。

小多機の地域づくりの取り組みで加算が提案される

「小規模多機能型居宅介護(小多機)」は、利用者の「通い」を中心とし、希望に応じて随時の「訪問」や「泊り」を組み合わせて提供するサービス。18年度の創設以来、一貫して請求事業所数は増加し、平成31年4月審査分で5453事業所になっている。費用は30年度で2520億円。

30年度改定では、▽生活機能向上連携加算▽若年性認知症利用者受入加算▽栄養スクリーニング加算─が創設された。

令和元年度の調査研究事業で、各加算の算定状況をみると、生活機能向上連携加算はⅠ及びⅡの合計で7.4%、若年性認知症利用者受入加算は3.8%、栄養スクリーニング加算は6.5%となっている。

小多機については地方からの提案を踏まえ、昨年12月23日に閣議決定された対応方針で「過疎地域等において一定の条件を満たす場合に、登録定員を超過した場合の報酬減算を一定の期間に限り行わない措置を講ずること」の検討が求められている。

また地域包括ケア研究会報告書では、「土地の確保に制約がある地域においても効果的に事業を展開できるよう、設備基準の緩和や多機能化による経営の安定策を積極的に検討していくべき」とされている。

こうした点を踏まえて厚労省は意見を求めた。

全国町村会の椎木巧委員は、過疎地域等での小多機の登録定員が超過した場合の措置について積極的な検討を要請した。

一方、健保連の河本委員はこうした基準の緩和等について「介護サービスの整備が不足している根本的な解決にはつながらないのではないか。超過人数や報酬減算を行わない期間は最小にすべき」と主張した。

民間介護事業推進委員会の今井準幸委員は、小多機について「病院から退院した人の受け皿になっている面がある。配置されている介護支援専門員について、入院時情報連携加算と同等の加算と仕組みをつくれば地域での役割や小多機の役割を増すことができる。地域の介護支援専門員と同様の評価を行う仕組みにすべき」と主張した。

神奈川県知事の黒岩祐治委員の代わりに参加した神奈川県福祉部長の水町友治参考人は、小多機の中には地域住民が訪れやすい食堂やカフェを誘致したり、地域住民が参加する季節の行事を行ったりして、その中で利用者が役割を得て状態の改善につながる事例があることを紹介。「地域づくりの視点でサービス提供を行い利用者の状態の改善につながった事業者についてたとえば『地域づくり加算』」など報酬で評価してはどうか」と提案した。

全老健の東委員は、小多機の生活機能向上連携加算などの算定率の低い加算についてその理由を把握するとともに、算定されない加算について整理するよう求めた。

看多機と訪問入浴の併用可能などを求める

「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」は、医療の必要な中重度の利用者への支援を念頭に、「通い」や「訪問(看護・介護)」、「泊り」を組み合わせて提供するサービス。退院から在宅へのスムーズな移行や、末期がんなどの看取りを支援することも想定している。訪問看護の指定を受け、登録利用者以外の支援も行う。

平成24年度から導入されており、請求事業所数は年々増加し、平成31年4月審査分で531事業所になっている。利用者は要介護3以上が6割を超え、認知症の高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上がおよそ9割と、中重度者が多い。 t

30年度の調査研究事業によると、事業者の運営上の課題としては、「看護職員の確保が困難」が6割、「介護職員の確保が困難」が7割になるなど、人材確保が最も多い。

厚労省は、こうした状況を踏まえ、医療ニーズを有する中重度の要介護者の生活を支えるサービスとして、質が高く、安定的なサービスを効率的に提供していくための方策や、人材確保が課題と答える事業所が多い中で、ICTの活用を含む業務負担軽減に向けた方策などについて意見を求めた。

日本看護協会の岡島さおり委員は、7月1日付で厚労省に提出していた要望書の抜粋を改めて提示。看多機と訪問入浴の併用を可能とすることや看多機の空床利用の緊急ショートステイの単価を引き上げることなどを要望した。

Part3 » ICTを活用した場合の夜勤の配置基準の緩和で賛否


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