見出し画像

オン資、負担割合違いによる過払い金への対応示す――医療保険部会(2023年9月29日)

社会保障審議会・医療保険部会は9月29日、オンライン資格確認等について、訪問看護・訪問診療・オンライン診療等への範囲拡大に係るスケジュール・財政支援案等のほか、本来の負担割合等と医療機関でのレセコン表示が異なる事案への対応策を示した。


厚生労働省は、一部負担金の負担割合及び限度額適用区分(以下、負担割合等)の相違が判明し、中間サーバー等の負担割合等を修正した事象が全保険者による調査で、合計5,695件あったと発表した。
そのうち、①正しい事務処理手順が踏まれておらず、システムで防止する仕組みがなかった事象が4,017件、②事務処理手順に関わらず、システムの仕様の問題により発生する事象が1,678件あった。

一部負担金割合等の相違のパターン

なお、負担割合等の相違が判明した事案については、既に正しい割合等に訂正されており、レセプト審査では保険者が保有しているマスタデータで審査を行っているため、最終的に被保険者は正しい負担割合等で負担していると説明している。

保険者システム改修のほか、負担割合等表示内容をチェックできる仕組みを導入

今後は、上記①へ対応については、同様の事象が発生しないよう事務処理マニュアルを改訂するなど、正しい事務処理手順を各保険者に徹底、上記①および②の対応としては、事務処理誤りやシステムの仕様による負担割合等の表示誤りを防ぐため、10月以降順次、「保険者システム」を改修する(原則として今年度中に実施)。なお、調査で判明した事例のパターンについては、各保険者で11月末を目途に点検することとしている。

また、来夏までを目途に、保険者が保有する情報とオンライン資格確認で表示される情報を突合し、正しく表示されているか保険者がチェックできる仕組みを導入する予定。

オン資システムからデータを同期して表示しているベンダーを公表

オンライン資格確認結果とレセコン表示の相違に係る対応については、厚労省からレセコンベンダーに、①オンライン資格確認等システムのデータと異なる負担割合等が表示される仕様の場合、その仕様となっている旨を医療機関等に伝達し、資格確認端末等で負担割合等を確認する必要があることを周知、②当該仕様の改修を行うよう、要請している。

また、医療機関等での仕様確認の参考のため、「医療機関等向けポータルサイト」にて、オンライン資格確認等システムへの照会結果を正しく表示する仕様となっているベンダーの一覧を公表している

また、レセコンで独自に算定した負担割合等を表示している場合があるが、時期を明示した上で改修を予定しているベンダー名についても今後公表予定としている。

負担割合等が違う場合の相談対応を構築、過払い金対応も示す

オンライン資格確認結果と保険証等での負担割合等が違う事案が生じており、患者(被保険者)が支払った一部負担金の割合等が誤っていたのではないかとの懸念に対応するため、保険者がこうした被保険者からの相談を受け、本来の負担割合等を確認し、被保険者や医療機関等に伝えるよう対応できる仕組みを構築する。

具体的には、被保険者は、予め設定した保険者の担当窓口に相談する。保険者は、本人確認情報(①氏名②生年月日③被保険者番号等)や受診日・医療機関等名称等を聴取し、受診日における被保険者の負担割合等について、中間サーバーに登録した情報と保険者システムの情報を確認した上で、以下の対応をとる。

相談対応と過払い金の返金方法

  • ①中間サーバーに登録した情報の誤りがある場合

    • 中間サーバーに登録したデータを訂正し、医療機関等に本来の負担割合等を連絡するとともに、レセプト審査の際に保険者から被保険者へ返金。この場合、医療機関等の協力が得られた場合は、一部負担金の過払い分について、患者(被保険者)への返金を依頼

    • 医療機関等への連絡結果を踏まえ、被保険者に過払い金の返金の取扱いについて連絡

  • ②中間サーバーに登録した情報の誤りはないが、レセコン表示の問題等で誤りがある場合

    • 医療機関等に本来の負担割合等を連絡するとともに、一部負担金の過払い分について患者(被保険者)への返金が必要であることを伝達

    • 医療機関等への連絡結果を踏まえ、被保険者に過払い金の返金の取扱いについて連絡

  • ③誤りがない場合(古い保険証での受診等)

    • 被保険者に誤りがなかったことを伝達

保険者は電話相談窓口をホームページ等に掲載

なお、9月29日付けで、「負担割合等の相違の可能性がある場合の被保険者等からの相談対応について(事務連絡)」が発出されており、保険者は電話相談窓口をあらかじめ保険者のホームページ等に掲載することとされた。さらに、厚生労働省のホームページ上にも、相談対応について周知を図るページを設けることとしている。

12月から健保組合でも、資格取得時の住所情報把握が必須に

健康保険組合では、省令(健康保険法施行規則)上、保険者判断で住所情報の届出を求めないことが許容されている。そのため、加入者の住所情報を保有していない、または資格取得時の住所情報は把握しているものの、転居後の住所情報を保有していない健保組合も一定数確認されている。

オンライン資格確認においては、保険者が加入者情報を中間サーバーに登録することが必要であるが、住所情報がないとJ-LIS照会を行う際に事前に事業主や本人に対し住所情報の確認が必要となるなど、データ登録までに時間を要する。

これに対応するため、省令を改正し、全ての健保組合が加入者の住民票上の住所情報を把握することを原則とする。この「住民票上の住所情報」については、通知等により明示することとしている。
具体的には、12月1日以降、資格取得時において、住民票上の住所情報の把握を必須化し、住所変更時には、加入者からの届出またはJ-LIS照会によって住所情報を取得することとなる。

なお、現在の加入者については、今回の点検作業によりマイナンバーの紐付けの正確性が確認され、住民基本台帳における直近住所をJ-LIS照会で把握できるため、住所情報を保険者が自ら収集する必要はない。
上記の改正に関する「健康保険法施行規則の一部を改正する省令案」については、9月29日からパブリックコメントに付されており、11月中旬に公布される予定。

関連書籍


社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。