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来秋の保険証廃止は現時点で見直さず 岸田首相「総点検を踏まえて判断」(2023年8月4日)

岸田首相(写真/撮影:首相官邸)は8月4日の記者会見で、マイナンバーの紐付け誤りをめぐって国民に不安を招いていることを陳謝した上で、「健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提」であり、「秋にも完了する紐付けの総点検とその後の修正作業等の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、必要な対応を行う」と説明した。

今年6月2日に成立した健康保険法等の改正法による、健康保険証の廃止時期(2024年秋頃)については、現時点では見直さないこととした。

岸田首相は、「❶個別データの総点検」、「❷再発防止の徹底」、「❸デジタル化への理解促進とマイナ保険証への不安払拭」の「信頼回復のための3つのポイント」を説明し、国民の信頼を取り戻した上で、我が国にとって必要不可欠であるデジタル改革を本格的に進めていくことを表明。

❶個別データの総点検

  • 自治体や保険者とともに、原則として秋までに必要な個別データの総点検を実施

  • その際、点検マニュアルの共有や点検費用など、点検実施機関の負担に十分に配慮

❷再発防止の徹底

  • マイナンバー照会の手法や登録の手続等について、国レベルで詳細な横断的なルールを定め、プロセスを可能な限り機械化

  • 総点検の中間報告と再発防止については、8月8日に総点検本部を開催・公表

❸デジタル化への理解促進とマイナ保険証への不安払拭

  • 国民の不安払拭と国民一人一人に、デジタル化することによる利便性をしっかりと理解してもらうことが必要

  • このため、現行の健康保険証を廃止する際にも、全ての国民が円滑に医療を受けられるよう、マイナ保険証を保有していない人全員に資格確認書を発行

  • その有効期間やカードの形状も現行の健康保険証を踏まえたものとするなど、きめ細かい対応を徹底

マイナ保険証への移行に際しては、マイナ保険証のスマホ搭載、電子処方箋の普及、新たなマイナンバーカードへの移行等を着実に進め、マイナ保険証のデジタル環境を整備するとともに、受診履歴に基づくより質の高い医療、多剤・重複投薬の防止、転職等の際のシームレスな移行など、マイナ保険証によるメリットを実感できる実効的な仕組みをつくると述べた。

また、こうしたデジタル化の取組みにより、「国民に選ばれるマイナ保険証」に全力を尽くすことも表明している。

資格確認書の有効期間は5年以内で保険者が判断

岸田首相は、冒頭発言後の質疑応答で、資格確認書の有効期間について、「現在、国民健康保険であれば、1年であったり2年であったりで更新時期を迎える。雇用者保険なら、期限は特段設けていない運用になっている。この運用を念頭に、更新時期については5年を超えない期間において、それぞれの保険者が更新の時期を決めていく」と答えた。

当初は、資格確認書の有効期間については、「1年を限度として各保険者が設定する」予定とされていた。資格確認書の有効期間延長は、法律改正の必要がなく、省令で対応する予定。

保険資格変更時にデータ登録状況を加入者に通知するよう保険者に依頼

オンライン資格確認において被保険者情報を中間サーバーに登録する健保組合・協会けんぽ等の保険者宛に「被用者保険の加入者に対しオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況をお知らせする仕組みの整備について(保保発0710第8号)」が発出されている。

本通知では、対応可能な保険者から順次、転職等の保険資格変更時に、資格取得手続きと併せてオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況を加入者にお知らせすることとしている。

その場合、資格取得等届に「マイナンバー記載あり(中間サーバーへ登録済み)」と「マイナンバー記載なし(中間サーバーへ未登録)」の場合とで、お知らせ内容を変えることを促している(下図)。

健康保険証の交付時のお知らせの流れ(イメージ)

なお、上記の対応が難しい保険者においても、加入者に対して、マイナンバーカードによる医療機関等受診のメリットと併せて、受診前にマイナポータルで資格情報を確認の上、積極的にマイナンバーカードによるオンライン資格確認を利用してもらうよう周知することとされている。

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