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年金制度改正の方向性が示される――第24回年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)は昨年12月24日、次期年金制度改正に向けた取り組みの方向性について議論の取りまとめを行った。

短時間労働者の被用者保険の適用拡大については、現行の月額賃金8.8万円(年収計算で約106万円)の賃金要件と、従業員数51人以上の企業規模要件を撤廃することとしている。また、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち、農業や林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業などの非適用業種についても適用対象としていく。

在職老齢年金については、現行では年金と給与・賞与を合わせた支給停止基準額が50万円(金額は年度によって変動)となっているが、この基準額を見直す方向性が示されている。ただし、基準額を引き上げるか、基準額自体を廃止するかといった具体的な内容については、今後も引き続き検討する必要があるとしている。

厚生年金の標準報酬月額については、上限等級(65万円)の改定のルールを見直し、新たな等級を追加する方向性が示された。追加する等級や引き上げ方などの具体的な内容については、政府が引き続き議論を行うとしている。

遺族厚生年金については、子のいない妻には無期給付であるのに対し、55歳未満の夫には給付がないという男女差を解消するため、妻・夫ともに原則5年間の有期給付とする見通しが示された。受給要件や対象年齢などについては、配慮措置を実施する。
年金受給者に扶養対象となる子がいる場合、老齢厚生年金に加給年金等の加算が行われるが、第1子、第2子までは同額である一方、第3子は少ない額となっているため、第3子についても第1子・第2子と同額とする方向性が示されている。

106万円の年収の壁や第3号被保険者制度の見直し、基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了については、意見がまとまらない点もあり、引き続き検討を行っていくこととしている。

年金制度改正の主な方向性


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