適用拡大の企業規模要件は撤廃で意見一致――第20回年金部会
厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)は11月15日、被用者保険の適用拡大や、第3号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」について審議を行った。
被用者保険の適用拡大については、対象となる短時間労働者の範囲を広げる方向で議論が進められており、①現行で週20時間以上とされている労働時間要件②現行で月額8.8万円以上とされている賃金要件③学生を適用対象外とする要件④現行で従業員数50人超の企業が対象とされている企業規模要件⑤5人以上の従業員を使用している非適用事業所――についてどのような方向性とするか、意見交換を行った。
菊池部会長は、④の企業規模要件と⑤の非適用事業所については配慮措置や支援策を求める意見があったものの、基本的に撤廃と解消に向けて進めていく方向でほぼ意見が一致したとしたほか、①の労働時間要件と③の学生除外要件については、今回は見直さないことでおおむね合意したと述べた。
一方、②の賃金要件については撤廃するべきという意見のほかに、最低賃金の減額特例に留意するべきといった意見などがあったため、引き続き事務局で検討するとしている。
いわゆる「年収の壁」については、保険料負担による手取り収入の減少をどうするかという点を審議。健康保険では事業主と被保険者が合意した場合に保険料負担割合を変更できる特例があり、これを厚生年金にも導入する案が厚労省から示されたが、引き続き検討を行うこととされた。
また、第3号被保険者制度については、経過措置を設けたうえで廃止すべきなどの意見が出されたが、今回の改正で直ちに見直すべきだという方向性にはならなかったため、引き続き検討していく。
厚労省は、引き続き検討することになった項目について今回出された委員からの意見をまとめ、今後の年金部会に示す予定だ。