「年収の壁」の当面の対応策とされる「社会保険適用促進手当」とは―厚生労働省Q&A公表
厚生労働省は10月20日、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」のQ&Aを公表した。
厚生労働省10月20日公表、社会保険適用促進手当に関するQ&A
社会保険適用促進手当は、短時間労働者が社会保険に適用され、新たに保険料負担が発生することに伴う手取り収入の減少を敬遠し、就業調整を行うといったいわゆる「年収の壁」を打破するため、政府が実施した当面の対応策の1つで、本人の保険料負担分を上限に保険料算定から除外される手当として事業主が支給できる。最大2年間の時限措置だ。
なお、社会保険に適用させた労働者の手取り収入を増加させるため、社会保険適用促進手当を支給する事業主は、一定の要件を満たしていればキャリアアップ助成金の助成対象になる。
支給は事業主の判断
Q&Aによると、社会保険適用促進手当の支給対象者となるのは、次の①の要件のみ。同じような労働条件で働きながら、社会保険の適用時期によって手当を受けられる人と受けられない人がいるのでは公平性に欠けることから、令和5年10月以前に社会保険に適用された労働者も対象者になりうる。
ただ、実際に手当を支給するかどうかは、あくまで事業主の判断だ。
決まっているのは算定除外の上限額と期間のみ
社会保険適用促進手当として、標準報酬月額等の算定除外とされる上限額は前述のとおり、本人の社会保険料負担相当額まで。期間も2年間だ。
だが逆に言うと、それ以外は何も決められていない。実際の支給額や支給のタイミングなどは労使の話し合いなどに基づき事業主が決定できる。
手当の名称は「社会保険適用促進手当」の使用を
手当の名称についても、基本的には事業主が任意に決定することができる。ただ、同省は標準報酬月額等の算定除外の事後的な確認が可能となるよう、「社会保険適用促進手当」の名称を使用するようお願いしている。
手当の支給額が算定除外の上限額を超える場合は以下のとおり。
就業規則等への対応も必要
社会保険適用促進手当を支給する場合は、就業規則等への規定が必要だ。
就業規則等を変更し、労働者の過半数で組織する労働組合(もしくは労働者の過半数代表者)の意見書を添付して、労働基準監督署に提出する。