「106万円の壁」の当面の対応策となるキャリアアップ助成金の新コース―省令改正を労政審が答申
厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会は10月12日、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」を新設する雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について、おおむね妥当と認めた。
いわゆる「年収の壁」の支援強化パッケージの「106万円の壁」への当面の対応策とされるもので、その概要は9月27日に公表されていた。省令改正を行う予定とされ、労政審が追認したかたち。
省令は公布日から施行され、令和5年10月1日に遡って適用する。令和7年度末までの時限措置となる。
省令改正では、現行の「短時間労働者労働時間延長コース」の助成内容を拡充した上で、「社会保険適用時処遇改善コース」と改称。労働者を令和7年度末までに被用者保険に適用させ、賃上げ(手当等支給メニュー)か労働時間の延長等(労働時間延長メニュー)によって労働者の手取り収入を増加させた事業主に対して助成する。助成額は労働者1人あたり最大50万円(中小企業の場合)で、希望する者すべてを支援するという政府方針を受けて、申請人数に上限は設けない。
賃上げによって労働者の手取り収入を増加させる場合(手当等支給メニュー)は、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」を最大2年間、活用することができる。ただ、最終的(適用後3年目)には恒常的な18%以上の賃上げが要件だ。なお、社会保険適用促進手当の詳細は、厚生労働省の通知などで明らかになる見通し。
労働時間延長メニューは、被用者保険の適用にあたって週所定労働時間を4時間以上延長させるか、一定割合以上の賃金の増額を組み合わせながら週所定労働時間を1時間以上4時間未満の間で延長させることが要件。助成額は労働者1人あたり30万円(中小企業の場合)。賃金の増額は基本給及び恒常的な手当によることが要件で、社会保険適用促進手当の活用は認められない。
なお、現行の「短時間労働者労働時間延長コース」も令和5年度末までは継続するので、こちらの要件を満たす場合は助成を受けることができる。
当面の対応策はキャリアアップ助成金として位置づけられるので、事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置・周知するほか、事業所の労働組合等の意見を聴取した上で作成したキャリアアップ計画を都道府県労働局に提出し、認定を受けることも必要だ。同省は、支給申請にあたっての企業の事務負担を軽減するため、添付書類の省略など手続の簡素化を図るほか、相談支援等を充実させる方針。電子申請の環境も整備する。