#03 2020年の見直しプラン(小竹雅子)
ご存知の方も多いでしょうが、介護保険制度の見直しは法律(介護保険法)と財源(介護報酬)を組み合わせた見直しを繰り返しています。
2000年度にサービスがはじまってから20年の間に、主要な法改正が4回(2005年、2011年、2014年、2017年)、介護報酬の改定は会計期間が3年1期のため7回ありました。
制度の見直しにあたっては、厚生労働省が事務局を担当する社会保障審議会(遠藤久夫・会長)で議論が行われます。
介護保険法改正と介護報酬改定の関係
今年2月以降、来年の通常国会への提出をめざして、社会保障審議会の介護保険部会(遠藤久夫・部会長)が議論を続けています。
また、2021年度からの第8期介護報酬改定に向けて、社会保障審議会の介護給付費分科会(田中滋・分科会長)の議論が10月以降、再開される予定です。
制度の見直しについて、2020年に法律が改正されたとしても、実施(施行)は翌年以降になるため、また、法律が改正されても具体的な内容は介護報酬の見直しに委ねられるケースも多々あるため、“2021年改正”と呼ぶ人もいます。
制度改定のプレイヤー
法律と財源の見直しにタイムラグがあることも面倒ですが、制度改定の検討には社会保障審議会だけでなく、さまざまな参加者が加わります(図1参照)。
時系列で追うと、まず6月19日、財政制度等審議会(榊原定征・会長)が『令和時代の財政の在り方に関する建議』を公表しました。介護保険については、「要介護1・2の者の生活援助サービス等」の地域支援事業への移行、「利用者負担を原則2割とすることや利用者負担2割に向けその対象範囲を拡大する」、「ケアマネジメントについても、利用者負担を設ける」ことを提案しました。
続く6月21日、経済財政諮問会議(安倍晋三・議長)の『経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針2019)』が閣議決定されました。ここでは、「新経済・財政再生計画に基づき、基盤強化期間内から改革を順次実行に移し」、「介護については、必要な法改正も視野に、2019 年末までに結論を得る」と書かれています。
「新経済・財政再生計画」とは、経済財政諮問会議に設置された経済・財政一体改革推進委員会(新浪剛史・会長)がまとめた『【PDF】新経済・財政再生計画 改革工程表2018』です。このなかでは、「医療・福祉サービス改革」として膨大な「政策目標」が並んでいますが、介護保険には「補足給付」、「ケアプラン作成」、「多床室室料」、「軽度者への生活援助サービス等」について「給付の在り方」を検討することを求めています。
財政制度等審議会と経済財政諮問会議は年々、介護保険制度の見直しに発言力を強めていますが、今回は未来投資会議(安倍晋三・議長)の「【PDF】成長戦略実行計画」などのほか、9月20日に設置された全世代型社会保障検討会議(安倍晋三・議長)が今後、介護保険制度についてどのような「検討」をするのかにも注目する必要があると思います。
制度改定の「検討事項」に、「給付と負担」が登場
さまざまな参加者に囲まれているため、厚生労働省は7月の参議院議員選挙が終わり、8月29日の第80回介護保険部会にようやくすべての「今後の検討事項」を出しました(図2参照)。
2月の段階でも5項目でしたが、今回は5項目がふたつに枝分かれして、「給付と負担」が新たに登場しました。そして、「給付と負担」にはさらに8項目の細目があります。
8項目のうち、「1.被保険者・受給者範囲」と「8.現金給付」は、2004年の最初の見直し以降、介護保険部会が繰り延べしてきたテーマです。残る6項目は「骨太の方針2019」の提案が盛り込まれています。「在り方」というのはあいまいな表現ですが、これまで「給付の増加」や「負担の削減」が検討されたことはないので、「給付の削減」あるいは「負担の増加」が検討されることになります。
介護保険部会は10月現在、各論に入っていますが、「社会保障改革総仕上げ 医療・介護の負担増不可避」(9月20日、産経新聞)との報道もある全世代型社会保障検討会議の動向はまだ不明です。
消費税が10%になってもなお、負担増の見直しが積み重なるかどうかは、介護保険料を払っている40歳以上の被保険者7640万人が制度のゆくえに関心を持ち、発言をしていくかどうかにかかっていると思います。