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新しい年金時代

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#社会保障

#37|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その3(慢性疲労症候群)

 心身が疲労をすると、身体の免疫力が下がり疾病に罹患することはありますが、疲労そのものが疾病であるというのが慢性疲労症候群です。外傷があるわけでもなく、異常値が検出されているわけでもないこの疾病は、周囲からは詐病ではないかと思われ、理解されにくいものでしたが、1988年にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)により概念化された比較的新しい疾病です。  疾病名の通り、主要な症状は「疲労」です。ただし、明らかに原因が分かっている疲労(例えば激しい運動をした等)は、当該疾病の「

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#36|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その2(脳脊髄液減少症)

 脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄のまわりを流れる液が、何らかの理由で漏れ出してしまう疾患です。この液が減少すると脳の機能が低下し、身体に様々な支障が出現します。  脳脊髄液が漏れ出す主な原因としては、外部から身体への強い衝撃が加わることです。それゆえ、交通事故やスポーツ外傷が原因になることが多いようです(まれに突発性など、身体に強い衝撃が加わらなくても引き起こされることもあります。)。  症状としては、起立性頭痛が出現するのが特徴ですが、その他にも吐き気、視力聴力の低下、

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#9|国民年金保険料の納付猶予制度の方向性

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長

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年金委員への活動支援の強化など「分かりやすい情報提供及びサービス改善の促進」は「B」評価――日本年金機構の令和5年度及び第3期中期目標期間の業務実績評価

 厚生年金保険や国民年金の事業について、会社や地域で啓発、相談、助言などの活動を行う年金委員のみなさんに関係する情報を提供する「FOCUS! 年金委員」。今回は、日本年金機構が取り組む令和5年度の事業実績評価についてお伝えします。  機構では、令和5年度計画において「年金委員に対する活動支援の強化」を掲げ、取り組んできました。機構は年金委員に対してどう取り組み、その取組実績を厚生労働省はどう評価したのか、見ておきましょう。

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令和6年財政検証で初めて明らかに!モデル年金ではわからない、各世代の65歳時点における老齢年金の平均月額を公表!!

 令和6年財政検証では、「年金額の分布推計」(各世代の65歳時点における老齢年金の平均額や分布の将来見通し)が財政検証史上初めて実施され、モデル年金の将来見通しではわからない、年金制度の実態が明らかにされた。財政検証では、夫が平均的な給料で40年間働き、妻はその間、専業主婦という片働き世帯が受ける年金を「モデル年金」(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)として、その所得代替率(現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率)と将来見通しを示してきた。だが、モデル年金は年金財政

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#35|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その1(線維筋痛症)

 障害年金における障害等級や傷病間の相当因果関係は、障害年金の認定医や診査担当が認定することであり、請求時点で断定できるものではありません。しかし、初診日の特定や必要書類の整備等を実施する際には、ある程度、相当因果関係の有無を予測して進める必要があります。  従って、前に罹患している疾病(または負傷)があれば、現在の障害と相当因果関係があるかの確認が重要であることは以前からも述べているところですが、中にはその予測が非常に困難である時もあります。予測が困難ですと、当然のこと

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#8|遺族年金制度等の見直しの方向性

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長 1.遺族厚生年金の見直しの方向性⑴20代から50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金の男女差を段階的に解消  遺族年金の仕組みや課題については、この連載の第5回で説明したとおり、支給要件に大きな男女差があり、その解消が必要です。7月30日の年金部会では、年金局から遺族年金の見直しの方向性が示され、委員から賛同する意見が多く出されました。  現行の遺族年金制度は、男性が主たる家計の担い手

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#34|てんかん発作による外傷での障害年金請求

 脳疾患による肢体障害は、救急搬送された日が初診日となることが多いので、他の障害に比べて、初診日の特定がしやすい障害年金の請求と言えるでしょう。  しかし、脳疾患の原因が、他の疾病が原因であることが明らかな場合は、この限りではありません。例えば、心原性脳梗塞は、心臓にあった血栓が脳に飛ぶことによって引き起こされますので、心疾患と脳梗塞に相当因果関係が認められる場合もあります。また、低酸素脳症は、循環不全や呼吸不全などが原因となり引き起こされますから、相当因果関係が認められ

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#7|2024年の年金財政検証の結果

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長 1.2024年財政検証による所得代替率と実質年金額の将来見通し⑴財政検証は、5年に1度の年金制度の定期健康診断であり、幅広いケースを試算  「財政検証」は、2004(平成16)年の年金制度改正で、法律に規定された仕組みで、いわば「年金制度の定期健康診断」です。5年ごとに実施され、①おおむね100年という長期の財政収支の見通し、②マクロ経済スライドの終了年度の見通し、③給付水準の見通しを作成し

#33|がんによる精神障害

 障害年金請求における初診日の考え方は、異なる傷病名であっても、その傷病間に相当因果関係があれば一括りの傷病として取り扱い、その括りの中で初めて医療機関を受診した日を初診日とします。これは、以前からも述べているところです。  傷病間の相当因果関係は、医学的な知識も必要なことから、なかなか判定が難しいところですが、主に、障害となっている部位に大きなダメージを与えた傷病は、その障害と相当因果関係があると言えるでしょう。  では、精神の障害の場合はどうでしょうか。感情を司る脳

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#6|障害年金制度の仕組みと論点

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、前厚生労働省年金局長 1.障害年金の仕組み⑴障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金には1級と2級のほか3級がある  障害年金は、制度加入中の病気や事故によって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、生活を支えるために支給される年金です。すべての被保険者に共通の制度として、障害基礎年金1級・2級があり、厚生年金被保険者には、障害厚生年金1級・2級が上乗せされるほか、2級より軽い障害でも対象となる障害厚生年金3

#32|特別障害給付金

 現在、日本に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、かつ、厚生年金に加入していなければ、原則、国民年金に加入しなければなりません。加入するかしないかを任意で選ぶことができる人は、日本国籍を有しながら海外に居住している人、または、60歳以上65歳未満で厚生年金に加入していない人に限られます。  しかし、一昔前は、国民年金の加入を任意で選ぶことができる人がもっと多くいました。  例えば、昭和61年3月以前は、配偶者が厚生年金等の被用者年金に加入していれば、国民年金の加入は

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謎の新興国アゼルバイジャンから|#47 伝える力(上)社会保障を理解するということ

みなさんこんにちは。令和元年最初の連載です。 はじめに近況報告を少し。 今回は「大使夫人の活動」の紹介です。 最近は外交官の配偶者も仕事を持っている方が多くなったので、各国とも単身で赴任される館員が多くなっています。 当地の各国大使館や国際機関代表部の話を聞いても、職員の家族が常に帯同している、という人はもはや多数派とは言えないようです。 公館長である各国大使や国際機関代表の場合も同様で、単身で赴任している方、配偶者が仕事を持っていてその関係で本国や勤務地と任国の間を定

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#5|遺族年金制度の仕組みと論点

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、前厚生労働省年金局長 1.遺族基礎年金の仕組み⑴遺族基礎年金は子を育てている配偶者又は子に支給される  老齢年金と比べて、遺族年金の仕組みはご存じない方が大多数だと思いますので、まず、その仕組みについて、簡単に説明します。  遺族年金は、死亡した被保険者等によって生計を維持されていた人の生活を保障するための給付です。遺族年金には、定額の遺族基礎年金と報酬比例の遺族厚生年金がありますが、「遺族基礎年金」は、子ども