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新しい年金時代

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#社会保障

#31|社会的治癒を主張した障害年金請求

 現在罹患している傷病が回復しても、将来再発してしまうことがあります。この場合、前発の傷病が「治癒」していた場合は、後発の傷病により初めて医療機関を受診した日が障害年金における初診日となりますが、治癒していない再発の場合は、前発の傷病により初めて医療機関を受診した日が初診日となります。  この「治癒」というのは、病気や怪我が治り治療行為が必要ではなくなった状態のことを言います。例えば、風邪で高熱を出していたものが、薬を飲まなくても平熱でいられるようになったら、これ以上の治

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#4|マクロ経済スライドの調整期間の一致の論点

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、前厚生労働省年金局長 1.基礎年金のマクロ経済スライド調整期間の長期化とその問題点⑴報酬比例部分より基礎年金の調整期間が長期化している  マクロ経済スライド調整は、平均余命の伸びと少子化が進む中で、将来の保険料の高騰を防ぐために、保険料の上限を固定して財源の範囲内で給付を行うよう、給付水準を少しずつ調整していく仕組みです。マクロ経済スライドが導入された時の2004年財政再計算では、基礎年金と報酬比例部分の調整期間

謎の新興国アゼルバイジャンから|#44 全世代型社会保障とは――政策に取り組む後輩たちに贈る言葉(上)

*この記事は2019年3月7日に「Web年金時代」に掲載されました。 みなさんこんにちは。 ここアゼルバイジャンはあまり郵便事情がよくないので、日本からの郵便が届くのに結構時間がかかります。 聞けば、この国の文化では、手紙というのは個人に託して届けるものだったんだそうで、例えばバクーに住んでいる地方出身の人たちは、同郷の人が帰省する際にその人に手紙や荷物を託す、自分が帰るときにも同郷の仲間の手紙や荷物を預かって届ける、そんな風になっていたんだそうです。 旧ソヴィエト連邦

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#30|長期間差止めになっている障害年金受給者

 障害年金の受給者は、数年に一度、その障害状態を診査するために「障害状態確認届(診断書)」を提出する必要があります(ただし、手や足の切断など、症状が永久固定を認定された場合はこの限りではありません。)。  この「障害状態確認届(診断書)」は、提出指定日とされた日から3カ月程度前に日本年金機構から受給者宛に送付されます。受給者は、送付された診断書に提出指定日前3カ月以内の現症を医師に記載してもらい、日本年金機構に提出しなければなりません。提出指定日までに提出がなかった場合は

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謎の新興国アゼルバイジャンから|#43 解題『ちょっと気になる政策思想』(下)社会保障を支える経済学

(承前) 社会保障に関わる経済学の系譜政策思想としての経済学の系譜を解説した上で、著者は、それが様々に論じられる社会保障をめぐる政策論とどう関わっているのかを理解することが重要だ、と指摘しています。 社会保障は、市場経済という社会のメインシステムを補完するサブシステムとして生まれたものです。故に、「経済学」あるいは「経済学者」の立場から論じられる社会保障政策論を眺め、理解するためには、そこで論じられている「政策論」が、一体いかなる経済理論に依拠して展開されているのかを知ら

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#3|基礎年金の拠出期間の延長の論点

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、前厚生労働省年金局長 1.少子高齢化と年金⑴平均余命は60年間で10年も伸びた。今後50年でさらに3年伸びる  65歳の人の平均余命は、女性が24.88年(89.88歳まで生きる)で、男性が19.97年(84.97歳まで生きる)です。65歳の女性の62%、男性の37%が、90歳まで生きると見込まれているわけですから、かなりの長寿社会です。国民皆年金が発足した1961年には、65歳の人の平均余命は、女性は14.10

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#29|障害年金受給者の額改定請求(その2)

 傷病を患ったことにより障害状態になった直後、その傷病が原因で合併症等を引き起こし、それによって新たな障害がもうひとつ増えるというように、短い時間の中で複数の障害状態になることもあります。  通常ですと、障害年金は障害認定日(原則、初診日から1年6カ月経過した日)に障害状態を診査することとなりますので、複数の障害が短時間差で発生した場合でも、障害認定日請求をすれば、それらをまとめて診査することとなりますので、特に問題はありません。  しかし、仮に、そのひとつひとつの障害が

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#2|被用者保険の適用拡大(勤労者皆保険)の論点

 連載の第2回の今回は、被用者保険の適用拡大(勤労者皆保険)の論点です。昨年5月30日の第4回年金部会で議論された「被用者保険の適用拡大について」と、9月21日の第7回年金部会で議論された「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」の議論を振り返りながら、解説します。 1.週20時間以上の短時間被保険者の企業規模要件の撤廃  被用者保険(厚生年金と健康保険)は、「所定労働時間及び所定労働日数が、通常の就労者のおおむね4分の3以上」という基準で適

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令和6年度の年金額

大山 均(おおやま ひとし)/株式会社 社会保険研究所 顧問 1.年金額改定の前提となる基本数値 令和6年1月19日に総務省から「令和5年平均の消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)が公表されるとともに、この消費者物価指数の公表を受けて、厚生労働省のホームページでは令和6年度の年金額に関する”Press Release”が掲載された。それによると、「令和6年度の年金額は、法律の規定に基づき、令和5年度から2.7%の引上げ」となるとのことである。  ここでは、令和6年度の

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#28|障害年金受給者の額改定請求(その1)

 障害年金受給者の障害の程度が増進した場合は、障害等級が上位になり年金額が改定されることもあります。その契機となるのは、次の2つです。  以上のような契機で障害等級を改定しますが、頻繁に障害等級の改定を望まれても事務が煩雑になるだけで好ましくはありません。従って、障害等級の改定にはある一定のルールを設けています。  そのルールを解説しながら、今回は、既に障害年金を受給している人が、障害の程度が増進したと思われるので上位等級に改定して欲しいという事例を検証していきます。

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#1|次期年金制度改正に向けた議論

1.次期制度改正に向けた検討スケジュール 公的年金制度の財政検証は、少なくとも5年ごとに行うことが、法律で定められており、前回が2019年夏でしたから、次回は2024年夏に行われます。財政検証を踏まえて、その翌年の2025年の通常国会に、次期年金制度改正の法案が提出されることが見込まれています。

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#1 マイナンバーでここまで簡単になった年金手続き

「マイナンバーってどんな時に使うんだろう?」と思っている人もいらっしゃることでしょう。 令和元年7月1日から年金給付関係の各種届出・申請について、マイナンバーを利用した運用(情報連携)が本格化しました。 年金給付関係でマイナンバーを利用できるメリットは、年金の請求や各種届出手続きの際、添付書類が省略できるという点です。 今回は、マイナンバーを利用することで簡単になった年金手続きについて、老齢年金の請求手続きを中心にご説明しましょう。 マイナンバーを利用すると省略できる添付書

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#27|障害者特例の請求

年金時代編集部  障害になった場合の社会保障は障害年金がメインとなりますが、前回の事例でも取り上げた「障害者特例」も、重要な役割を担います。  おさらいがてら、障害者特例について、確認しておきますと、  以上の条件を満たせば、本来なら報酬比例部分しか支給されない特老厚に、定額部分(生計維持関係にある配偶者や子がいれば、加給年金も同時に)が支給される制度です。  障害等級が3級で認定された場合は、定額部分や加給年金が加算される障害者特例のほうが有利になることも多いので、

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#8 65歳以降も働いた場合の年金と雇用保険は?知っておきたい年金・雇用保険のポイント

現在、企業には、65歳までの雇用が義務付けられています。令和3年4月からは、70歳までの人についても雇用や就業機会の確保が努力義務化されました。このため、65歳以降も働き続ける人が増えています。65歳を境にして年金や雇用保険の給付が一部変わります。今回は65歳以降の年金と雇用保険についてご説明しましょう。 65歳時の繰下げ受給の選択 特別支給の老齢厚生年金を受給している人が65歳になったときは、特別支給の老齢厚生年金に代わり、新たに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受給

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