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介護報酬改定議論に決着、4つの施行時期で実施へ(令和6年4月・6月・8月/令和7年8月)

厚生労働省は、1月15日に第238回社会保障審議会介護給付費分科会を、1月22日に第239回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。

第238回分科会では運営基準等に関する事項に係る諮問・答申が、第239回分科会では介護報酬改定案に係る諮問・答申が行われた。

指定基準等については、1月25日に省令が公布され、介護報酬改定係る内容についても現在パブリックコメントにかけられている(意見募集は2月21日まで)。

『令和6年度介護報酬改定に伴う関係告示の一部改正等に関する御意見の募集について』

これにより、令和6年度介護報酬改定の議論については決着が示され、3月中旬には告示される見込みとなっている。

この記事では、こうした動向を踏まえ、施行時期別に整理した介護報酬改定の全体像を紹介する。


令和6年報酬改定は令和6年4月・6月をメインに4段階で

今回の介護報酬改定は、大きく令和6年4月施行と令和6年6月施行に分けられる(以下の個別サービスについては予防サービスも含む)。

福祉系の居宅サービスや地域密着型サービス、居宅介護支援・施設サービスについては、令和6年4月施行とする。一方、医療系の居宅サービスである4サービス(訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション)については令和6年6月施行となる。

また、介護報酬改定の前の令和6年2月から5月の賃金引き上げ分については補正予算が充てられているが、一本化される「介護職員等処遇改善加算」の見直しについても令和6年6月の施行となっている。

このほか、令和6年8月には基準費用額(居住費)の見直しが、令和7年8月には一部の介護老人保健施設(その他型・療養型)・介護医療院(Ⅱ型)の多床室室料負担導入に伴う見直し(室料相当額減算の導入等)が実施される。

  • 令和6年4月1日:居宅サービス(福祉系)、施設サービス、地域密着型サービスの見直し

  • 令和6年6月1日:居宅サービス(医療系4サービス:訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション)の見直し、「介護職員等処遇改善加算」への一本化等

  • 令和6年8月1日:補足給付に係る基準費用額(居住費)の見直し

  • 令和7年8月1日:介護老人保健施設(その他型・療養型)、介護医療院(Ⅱ型)の多床室の室料負担の導入(基準費用額の見直し・室料相当額減算の導入)

なお、処遇改善加算関係の見直しは、令和6年4月施行の見直しとなるサービスにおいても令和6年6月1日施行とするが、現行の処遇改善関係加算について事業所内での柔軟な職種間配分を認める見直しは令和6年4月1日に実施される。

【令和6年4月】訪問介護は処遇改善を最優先に、認知症チームケア加算は研修要件を見直しか

令和6年4月から実施される見直しについては、第239回分科会において諮問書とあわせて次の算定構造が示されている。

【参考資料2-1】介護報酬の算定構造(R6.4.1)

こうした資料に示されているとおり、サービスごとに基本報酬の見直しが図られるほか、分科会での議論を踏まえた加算・減算の設定等が実施される。

特に、運営基準の未遵守に関する減算である業務継続計画未策定減算(施設・居住系サービス▲3/100、その他サービス▲1/100)や高齢者虐待防止措置未実施減算(▲1/100)は、居宅療養管理指導(6月実施)等を除く全サービスが対象となる。

なお、業務継続計画未策定減算については、訪問系サービスや福祉用具貸与・居宅介護支援については令和7年3月31日まで減算を適用せず、またその他のサービスについても感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備・非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合は同日までの減算を適用しない経過措置が設けられている。

第239回分科会の議論では、特に訪問介護等の基本報酬の見直しに注目が集まった。

「訪問介護」では身体介護・生活援助・通院等乗降介助のすべてにおいて、およそ2%程度の減単位数となっている。また、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や「夜間対応型訪問介護」でも基本報酬が減額された。

日本介護福祉士会の及川ゆりこ委員はこの引き下げについて「極めて遺憾」とし、人材不足が深刻である訪問介護の持続可能性と在宅ケアの担保について、説明を求めた。

厚生労働省は、訪問介護のサービス類型においては人件費の割合が高いことから、後述する6月からの処遇改善加算の取得促進など処遇改善を最優先に実施することで、人手不足の対策とする考えなどを説明した。

一方、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、介護保険施設や認知症対応型共同生活介護において導入される、認知症チームケア推進加算の要件に着目。

認知症の実践研修やリーダー研修指導者研修が、定員・回数が少なく受ける機会が得られないことを問題視し、研修要件を緩和しつつ、eラーニング・ICT活用などの研修の近代化と回数頻度の増加を求めた。

これを受け、厚生労働省は研修に関する見直しも考慮しつつ、実施者や回数の増加、研修体系の見直しを働きかけていく考えを示した。

【令和6年6月】介護職員等処遇改善加算の実施、14段階の経過措置区分も設定

令和6年6月からは、特に医療機関と密接な関係にある「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」「通所リハビリテーション」に関する見直しが実施される。

これは、令和6年度診療報酬改定が令和6年6月1日施行とされたことなどを踏まえ、施行時期をあわせて設定されたものとなっている。

これに加え、処遇改善関係加算の一本化や加算率の引き上げなども、令和6年6月から実施される。

【参考資料2-2】介護報酬の算定構造(R6.6.1)

処遇改善関係加算については、従来の介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算を統合し、4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化が図られる。

基本報酬が減額された「訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、「夜間対応型訪問介護」での加算率は、14.5%から最大24.5%。

現行の3加算の取得状況に基づく加算率と比べ、改定後の加算率は2.1ポイント引き上げられる計算となる。

一方で、令和6年度末(令和7年3月31日)までは経過措置期間が設けられており、この期間中は現行の3加算の所得状況に基づく加算率を維持した上で、引き上げを受けることができるような激変緩和措置を講じている。

具体的には、介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)として、サービスごとに14段階の加算率が設定されている(訪問介護の場合7.6%から22.1%)。

【令和6年8月/令和7年8月】基準費用額の見直し、多床室負担導入は「室料相当額減算」で対応

令和6年8月より実施されるのは、基準費用額(居住費)の引き上げだ。

これは、令和4年の家計調査をもとに、在宅での生活する人との負担の均衡を図る観点から見直されるものであり、60円/日が引き上げられる。

ただし、従来から補足給付のしくみにより負担限度額を0円としている利用者負担第1段階の多床室利用者については、利用者負担が増えないようにする。

一方、令和7年8月からは一部介護老人保健施設・介護医療院での「多床室の室料負担」が導入される。

「その他型」および「療養型」の介護老人保健施設と「Ⅱ型」の介護医療院のうち、8㎡/人の多床室入所者に関して、新たに月額8,000円相当に室料負担が発生する。

これに伴い、該当する多床室については、令和7年8月より「室料相当額減算」として▲26単位/日の減算が導入されることとなる。

一方、該当する多床室の基準費用額(居住費)についても260円/日が増額される。

ただし、利用者負担第1~第3段階の補足給付の対象者はの利用者負担は増加させない取り扱いとなっている。


上述した通り、令和6年度介護報酬改定に関しては一通りの議論を終え、パブリックコメントを終えた後に3月中旬に告示される予定が示されている。

改定の動向について、引き続き注目していきたい。

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