多床室月8,000円相当一部老健・介護医療院に室料導入へ、居住費は日60円引き上げに――第237回介護給付費分科会(2023年12月27日)
厚生労働省は12月27日、第237回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
令和6年度介護報酬改定の改定率のほか、介護報酬改定審議報告において「予算編成過程において検討する」としていた、「多床室の室料負担」および「基準費用額(居住費)」の見直しについて報告した。
改定率は+1.59%に、3年目の処遇改善は8年度予算時検討
12月20日の予算大臣折衝を経て決定した、令和6年度の介護報酬改定率は、+1.59%。
その内訳は、介護職員の処遇改善分が+0.98%(令和6年6月施行)、その他の改定率が+0.61%となっている。
その他の改定率については、賃上げ税制を活用しつつ、介護職員以外の処遇改善を実現できる水準。
また、こうした改定率の外枠として、+0.45%の改定を見込む。
これは、処遇改善加算の一本化による賃上げ効果や、光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収効果によるものであり、合計すると+2.04%相当の改定となるとしている。
なお、武見敬三厚生労働大臣による財務大臣折衝後の会見は「介護や障害福祉の現場で働く方々にとって令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップに確実に繋がるよう、配分方法を工夫する」旨が説明されていた。
また、今回の改定においては、処遇改善分について2年分を措置するとし、3年目の対応については令和8年度の予算編成過程で検討する考えが示されている。
こうしたプラス改定が介護職員の処遇改善に繋がることに、期待を寄せる意見が複数の委員より挙げられた。
一方、日本薬剤師会の荻野構一委員は、この処遇改善が令和6年6月施行と示されていることに注目。
介護報酬改定の施行時期に関しては現在、医療と密接する4サービスは6月施行、その他のサービスは4月施行と、前回の分科会にて口頭で説明されたのみとなっている。
最終的な決定内容がいまだ示されていないことから現場に不安が生じているとし、具体的な施行時期を速やかに明示するよう求めた。
令和7年8月より一部老健・Ⅱ型介護医療院に多床室室料負担を導入
「多床室の室料負担」については、一部の介護老人保健施設・介護医療院において、月額8,000円相当の負担を導入する見直しが実施される。
対象となるのは、次のうち8㎡/人以上の施設の多床室入所者。
「その他型」(超強化型・在宅強化型・加算型・基本型以外)の介護老人保健施設
平成18年7月から平成30年3月31日までに療養病床等より移行した「療養型」の介護老人保健施設
Ⅱ型介護医療院
ただし、利用者負担第1~3段階の人については、補足給付により利用者負担を増加させないものとしている。
また、十分な周知期間を確保する観点から、施行時期は令和7年8月となった。
これに対し、日本慢性期医療協会の田中志子委員は、「室料としてご負担してもらうにはふさわしくない生活環境」であり「生活の場であるとともに紛れもない医療の場」であるとし、改めて遺憾の念を述べた。
また、日本医師会の江澤和彦委員は、導入前に課題の対策を講じるとともに、見直しにより退所に至った事例の有無等の実態把握を求めた。
光熱費・水道費の上昇にあわせ、基準費用額を日60円引き上げ(令和6年8月より)
「基準費用額(居住費)」については、60円/日の引き上げを行う方針が示された。
令和4年の家計調査により高齢者世帯の光熱費・水道費の上昇が見られたことから、在宅での生活する人との負担の均衡を図る観点による見直しとなっている。
この見直しは、令和6年8月より実施され、例えばユニット型個室の場合、現在日額2,006円であることから、2,066円となることが見込まれる。
ただし、従来から補足給付により負担限度額が0円となる利用者負担第1段階の多床室利用者については、利用者負担が発生しないよう対応するとしている。
なお、上記利用者負担第1段階の利用者とは、生活保護受給者および世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者(預貯金額1,000万円以下(夫婦の場合2,000万円以下)に限る)となっている。